研究課題/領域番号 |
20K07439
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
呂 軍 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (40507498)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / RNA結合タンパク質 / グアニン四重鎖 / ALS / TDP-43 / RNA立体構造 |
研究開始時の研究の概要 |
RNA結合タンパク質TDP-43 (TAR DNA-binding 43kDa protein)は筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者全体の9割以上で異常が見つかっている責任タンパク質である。近年、TDP-43がグアニン四重鎖と呼ばれる非標準型RNA立体構造を持つmRNAと特異的に結合し、局所翻訳のための輸送を担う事が報告された。しかし、家族性及び孤発生ALS変異の多くは若年では発症に至らず、加齢によりリスクが高まるか。本研究は、TDP-43が持つRNA立体構造認識の分子機構とその破綻の分子メカニズム解明を目的とし、加齢により増加する“酸化型RNA”が輸送と局所翻訳に及ぼす影響を解析する。
|
研究実績の概要 |
RNA結合タンパク質TDP-43 (TAR DNA-binding 43kDa protein)は筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者全体の9割以上で異常が見つかっている責任タンパク質である。近年、TDP-43がグアニン四重鎖と呼ばれる非標準型RNA立体構造を持つmRNAと特異的に結合し、局所翻訳のための輸送を担う事が報告された。しかし、先行研究では家族性及び孤発生ALS変異の多くはグアニン四重鎖RNAとの相互作用が低下していると推定される一方で、何故若年では発症に至らず、加齢によりリスクが高まるかは解っていない。本研究は、TDP-43が持つRNA立体構造認識の分子機構とその破綻の分子メカニズム解明を目的とし、加齢により増加する“酸化型RNA”が輸送と局所翻訳に及ぼす影響を解析する。これまでALSとグアニン四重鎖RNAの酸化に関する研究例はほとんど無く、ALS発症に関する新たな見知が得られる可能性が高い。加えて本研究の成果は新規作用機序を有する医薬候補化合物の創成にも直結すると期待できる。また、TDP-43同様、ALS関連RNA結合タンパク質FUS(fused in sarcoma)もグアニン四重鎖RNAの特異的認識活性を持つ代表的なタンパク質で、その機能解析も行う。精製された全長FUSタンパク質を用いて、複数の機能性モジュールで構成されるマルチドメイン構造の分子メカニズムを分析した。そこで、FUS凝縮液形成の液液相分離(LLPS)と、それに続くFUS凝集体の形成につながる液相固相転移(LST)の観察に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンにおけるタンパク質凝集体の蓄積を特徴とする神経変性疾患である。ALS患者における遺伝子変異に関する最近の発見は、ALSの根底にある複雑な分子メカニズムの研究を促進してきました。TDP-43同様、ALS関連RNA結合タンパク質(RBP)の一つ、FUS(fused in sarcoma)は、グアニン四重鎖(G4)-DNA / RNAの特異的認識活性を持つ代表的なタンパク質である。精製された全長FUSタンパク質を用いて、複数の機能性モジュールで構成されるマルチドメイン構造の分子メカニズムを分析した。そこで、FUS凝縮液形成の液液相分離(LLPS)と、それに続くFUS凝集体の形成につながる液相固相転移(LST)の観察に成功した。このプロセスは、FUSとグアニン四重鎖RNAの相互作用によって著しく促進された。グアニン四重鎖RNA依存性LLPSおよびLST経路 の調節は、G4-RNA認識に欠陥のある8つのALS関連FUS変異体すべてで失われ、このプロセスにおけるG4-RNAの重要な役割をサポートしている。注目すべき点は、若年性ALSを引き起こす変異P525Lは、グアニン四重鎖RNA結合とFUS凝集の両方に最大の影響を示した。このことは、ALS病因の複雑な経路におけるタンパク質凝集とRBPの機能不全との間の、これまで定義されていない関係の解決への手がかりを提供する可能性がある。上記の内容を2021年11月に発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
初代培養神経細胞を用いた酸化ストレスの解析 家族性及び孤発生ALS変異の多くはグアニン四重鎖RNAとの相互作用が低下していると推定される一方で、何故若年では発症に至らず、加齢によりリスクが高まるかは解っていない。そこで、この素朴な疑問に対して、加齢シミュレーションの一つ、酸化ストレスは一体初代培養神経細胞にどんな影響を与えるかをまず知りたい。そこで、酸化ストレスを与えた初代培養神経細胞の次世代シークエンシング(NGS)を解析する。酸化ストレスはH2O2を一定時間、培地に添加する事によって付与する。この加齢因子(酸化ストレス)とこれまでにALS発症に関与する様々な因子(TDP-43、FUS、PSD、CaMKIIα、PSD-95など)との関連を解析する。
|