研究課題/領域番号 |
20K07444
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
千葉 朋希 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00645830)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 長鎖非コードRNA / 炎症性サイトカイン / 長鎖費コードRNA / RNAヘリカーゼ / lncRNA / RNA helicase / Inflammation |
研究開始時の研究の概要 |
炎症応答の新たな制御階層としてタンパク質をコードしない長鎖非コードRNA(Long non-coding RNA, lncRNA)による制御が注目されている。これまでに炎症性サイトカインの発現誘導に重要なlncRNAとしてLASCを同定した。LASCは転写因子NF-κBやRNAポリメラーゼの炎症性サイトカインの発現制御領域への動員を制御することで炎症性サイトカインの発現に重要であることを明らかにしてきたがその詳細なメカニズムとして、RNAヘリカーゼの寄与が重要であることが明らかになってきた。そこでLASC複合体による転写調節機構を分子生物学的な手法を駆使して明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
新たに同定した長鎖非コードRNAが炎症性サイトカインてであるIL-6やTNFα、GM-CSFなどの産生に極めて重要であることを示してきた。また、このメカニズムとして転写因子NF-kBのプロモーター領域への動員およびそれに続くRNAポリメラーゼIIの動員の低下による転写レベルにおける制御であることを明らかにしてきた。 また、ゲノム編集技術を用いて遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)を作製し、個体レベルにおける炎症応答への寄与を検討し、LPS投与によるエンドトキシンショックに対して抵抗性を示す一方で、硫酸デキストランナトリウム(DSS)誘導性大腸炎においては、ノックアウトマウスは感受性を示し、体重減少とともに早期に死亡することを明らかにしてきた。腸管固有層の CD11b陽性マクロファージを単離し、炎症性サイトカインの発現を検討したところ、ノックアウトマウスでIL-6やIL12p40、GM-CSFの発現が顕著に低下していた。 その分子機構を明らかにするために結合タンパク質の探索を行ったところRNAヘリカーゼ有力な候補である可能性が示唆された。DHX9抗体を用いた Crosslinking and immunoprecipitation(CLIP)法を用いてDHX9と長鎖非コードRNAの結合を解析を行った。以上のことから、長鎖非コードRNAはRNAヘリカーゼなどのRNA結合タンパク質と複合体を形成することで炎症性サイトカインの産生を制御するとともに個体レベルにおいてエンドトキシンショックに対する抵抗性と腸炎における感受性に寄与することが示唆された。さらに、ノックアウトマウスにおいて炎症により誘導される単球やマクロファージの亜分画に変化が生じることを示唆するデータを得ており、長鎖非コードRNAによるマクロファージの成熟や炎症部位への動員への寄与が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究成果としてChromatin isolation by RNA purification (ChIRP)法を用いた非コードRNAと相互作用するタンパク質の同定とRNA免疫沈降法(RIP)やCrosslinking and immunoprecipitation法 (CLIP)を用いて、RNAヘリカーゼであるDHX9およびDDX5と多彩な機能が知られているRNA結合タンパク質でるHNRLPLが重要なパートナー分子である可能性が示唆され、HNRLPLについてはRIPアッセイにより長鎖費コードRNAとの結合が強く示唆された。DHX9をsiRNAによりノックダウンするとIL-6やLCN2の発現低下が見られた。マクロファージは生体内において機能の異なるサブセットが存在することが近年の研究で明らかになってきているが、非コードRNAが肺や腸管に存在するCD11bおよびCD11c陽性のマクロファージに強く発現することが明らかになった。また、ノックアウトマウスにおいて炎症により誘導される単球やマクロファージの亜分画に変化が生じることを示唆するデータを得た。しかし、コロナ禍におけるマウス飼育の制限により十分な数のマウスの解析が進んでいないため、当初の計画よりやや遅れを生じている。現在はマウスの匹数についても回復してきており、来年度の実験に支障はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ChIRP法に同定したRNAヘリカーゼであるDHX9が新規に同定した長鎖非コードRNAの機能に重要な役割を果たすことが示唆されたた。来年度は他の候補であるDDX5やHNRLPLと長鎖費コードRNAの結合についてもCLIP法により検証する。興味深いことにこれら3つのRNA結合タンパク質はすべて核へ局在することが知られていることから、長鎖費コードRNAが核内において炎症性サイトカインの転写を調節している可能性が示唆された。これらのRNA結合タンパク質はRNA結合ドメインを有するためRNA結合タンパク質であるのと同時に転写のコファクターとしての報告も複数あるため、これらRNA結合タンパク質が長鎖費コードRNAと複合体を形成し、炎症性サイトカインの転 写調節に関わるという仮説のもと、野生型および長鎖費コードRNA欠損マクロファージにおいてDHX9、DDX5、HNRLPLに対する抗体を用いてChIPアッセイを行う。 ノックアウトマウスにおいて炎症により誘導される単球やマクロファージの亜分画が変化することが明らかになった。野生型およびノックアウトマウスにおいて該当する単球・マクロファージ分画をソーティングし、長鎖非コードRNAの発現および炎症性サイトカインの発現を解析する。さらに炎症モデルにおけるこれらの細胞集団の動態や組織における局在を明らかにしていく。
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