研究課題/領域番号 |
20K07517
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
門出 和精 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70516137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | HERV-K / SOX2 / iPS cells / retrotransposon |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト内在性レトロウイルスは胚発生過程で重要な役割を担う一方で、近傍の宿主遺伝子の転写を制御することにより様々な疾患の発症や進行にも関与する可能性が注目されている。本研究では、HERV-Kレトロトランスポゾンスクリーニングシステム構築とHERV-K関連疾患の治療薬探索とHERV-Kゲノム転移の簡易的検出システムの構築を実施する。本研究成果から、HERV-Kのゲノム転移が癌や神経疾患に影響する可能性について明らかにできる。さらに、iPS細胞の安定性維持やHERV-K関連疾患の治療薬開発に繋がることが期待される。
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研究実績の概要 |
ヒト内在性レトロウイルス(HERVs)は宿主との長い共存関係の中で本来の機能を消失し、化石化したと考えられてきた。申請者の準備研究では、Sox2で活性化したHERV-KはiPS細胞のゲノムを転移することを見出した。そこで、本研究では、HERV-Kレトロトランスポゾンスクリーニングシステム構築とHERV-K関連疾患の治療薬探索(計画1)とHERV-Kゲノム転移の簡易的検出システムの構築(計画2)を実施する。本研究成果から、HERV-Kのゲノム転移が癌や神経疾患に影響する可能性について明らかにできる。さらに、iPS細胞の安定性維持やHERV-K関連疾患の治療薬開発に繋がることが期待される。 計画1:初年度、HERV-Kレトロトランスポゾン活性を定量するためのレポーターとして発光遺伝子にイントロンを挿入することで、レトロトランスポゾン活性を間接的に定量する方法を構築することに成功した。しかし、その活性は非常に低く、HERV-K遺伝子に改良を加えても改善することはできなかった。その後、shRNAライブラリーを使うことによって、HERV-Kレトロトランスポゾン活性を感度良く定量できる細胞株を樹立することに成功した。前年度には、コンストラクトに改良を重ねることで、HeLa細胞株でも検出することが可能となった。また、候補阻害剤として、HIV-1で承認されている治療薬がHERV-Kゲノム転移にも阻害効果を示すことがわかった。HERV-K特異的な阻害剤探索は今後の課題である。 計画2:新規HERV-Kインテグレーションサイトを次世代シークエンスで同定することができるようになったので、簡易的スクリーニングシステムを構築することを試みたが、細胞内に大量に組み込まれているHERV-Kの存在により、新規HERV-Kインテグレーションサイトの検出に関しては解決することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画1:HERV-Kレトロトランスポゾン活性を検出するための細胞株、またレポーターコンストラクトをそれぞれ確立することに成功した。サンプル間の誤差が大きいために薬剤スクリーニングとして応用することができなかったが、現行のHIV-1薬剤がHERV-Kのゲノム転移の阻害剤として利用できることがわかった。また、レトロトランスポゾン活性がSOX2発現細胞で起きていることが論文として認められた(J.Virol 2022)。さらに、shRNAライブラリーを使った制御因子探索の実験から、ある因子Aが、HERV-Kレトロトランスポゾン活性を抑えている可能性がわかり(論文投稿準備中)、この因子の発現を抑えることでスクリーニングのための細胞株が樹立できる可能性がわかってきた。また、ゲノム転移機構の詳しい解明により、HERV-K Gagに存在する核内移行シグナルが重要な役割を担っていることがわかってきた(論文投稿準備中)。 計画2:iPS細胞でのHERV-Kレトロトランスポゾンの解析については、他の実験系でも証明することができ、前年度に論文に投稿することができた(J.Virol 2022)。また、量子生命科学研究所の先生と共同研究することとなり、多検体のiPS細胞を分与いただいたため、他のiPS細胞でのHERV-Kレトロトランスポゾン活性を検討している段階であるが、解析は難航している。
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今後の研究の推進方策 |
計画1:HERV-Kゲノム転移を制御する因子のKnockout細胞の樹立を行い、同時に論文として報告する。その細胞株を用いて、新規薬剤のスクリーニングに挑戦する。また、HIV-1治療薬がHERV-Kゲノム転移に対しても阻害効果を示すことから、合成展開を行い、HERV-K特異的な薬剤開発を試みる。合成展開については、薬学部の立石助教と連携で遂行す る。 また、HERV-Kのゲノム転移機構についても今年度に論文として報告することを目標とする。 計画2:前年度に集めたiPS細胞に存在するHERV-Kインテグレーションサイトを次世代シークエンスで解析する。iPS細胞に新たなHERV-Kインテグレーションサイトが見つかった場合は、そのインテグレーションサイト近傍の遺伝子に及ぼす影響を検討する。また、他の共同研究者にも相談し、さらにiPS検体の収集を行う。
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