研究課題
基盤研究(C)
我々はB型肝炎ウイルス(HBV)感染動物モデルを用いて、HBVの持続感染により発現変動するmiRNAを4種類同定した。その内の一つ、miR-4453の機能解析を行った結果、HBV複製を促進する宿主因子であることが判明した。逆にmiR-4453の阻害剤をHBV感染細胞に加えたところ、ウイルス複製が抑制された。この抗HBV作用はin vitroだけでなくin vivoでも示された。従って、新しい機序によるHBVの治療薬になり得ると考えている。本研究においては、miRNA阻害剤による抗ウイルス作用のメカニズムを解析すると共に、HBV感染動物モデルであるヒト肝臓キメラマウスでの詳細な解析も進める。
B型肝炎ウイルス(HBV)は膜構造を持つDNAウイルスであり、肝細胞へ感染すると核内で持続感染し、慢性肝炎から肝硬変、肝細胞癌へ進行する。治療薬はインターフェロンと核酸アナログである。しかし、前者は重篤な副作用があり、後者はHBVの逆転写を阻害するもののHBV排除は出来ない上、HBV関連の発癌を誘発することがある為、新しい作用機序の薬物が望まれている。我々はB型肝炎ウイルス(HBV)感染動物モデルであるヒト肝臓キメラマウスを用いて、HBVの持続感染により発現変動するmiRNAを4種類同定した。その内の一つ、miR-4453の機能解析を行った結果、HBV複製を促進する宿主因子であることが判明した。逆にmiR-4453の阻害剤をHBV感染細胞に加えたところ、ウイルス複製が抑制された。この抗HBV作用はin vitroだけでなくin vivoでも示された。従って、新しい機序によるHBVの治療薬になり得ると考えている。本研究においては、miRNA阻害剤による抗ウイルス作用のメカニズムを解析すると共に、HBV感染動物モデルであるヒト肝臓キメラマウスでの詳細な解析も進める。
3: やや遅れている
我々は「マイクロRNA阻害剤でHBV感染を治癒できるか?」という疑問を解決する為に研究している。しかし、昨今の国際情勢や新型コロナ感染症により、研究計画を立てた当初と比較して実験要具や試薬が予定通りに購入できず、研究は遅れている。現状、最後の実験を行う段階までは進んでおり、2023年度で結果をまとめられる予定である。
「miR-4453阻害剤がHBV治療薬となり得るか?」を検討していく上で、次の四点の解析が重要な研究テーマとなる。1-1. miR-4453がHBV pgRNAを安定化するメカニズムの解析 1-2. miR-4453阻害剤がin vivoでHBV複製を抑制するメカニズムの解析 1-3. miR-4453阻害剤の安全性の解析 1-4. miR-4453のHBV以外の標的探索とその機能解析既に終了:1-1) HBVのpgRNAの安定性・分解に関わる因子を同定する。予備実験により既に複数の候補を同定済みである。pgRNAは細胞の核と細胞質の両方に存在する為、まずmiR-4453依存のRNA安定化がどこで行われるのか検討する。1-2) in vivo実験をした時の肝臓中のHBV DNA、RNA、蛋白質の挙動を解析する。特にHBs抗原の量的変化に着目する。1-3) マウスを用いてmiR-4453の安全性試験を開始する。最大許容量の検討と阻害剤の組織分布の解析から行う。1-4) バイオ・インフォマティクスを駆使してHBV以外のmiR-4453の標的を網羅的に探索する。解析中:1-1) 見出したpgRNAの安定性・分解に関与する因子の機能解析を行う。1-2) HBV感染ヒト肝臓キメラマウスにおいてHBV核内DNAがmiR-4453でどのように変動するか、サザン・ブロット法と定量PCR法で解析する。1-3) miR-4453阻害剤のファーマコ・キネティックスとファーマコ・ダイナミックスを解析する。1-4) miR-4453標的候補因子が真の標的かどうかをin vitroで解析する。それらの因子がHBV複製を制御出来るのかも検討する。更に、キメラマウス肝臓を解析してin vivoで標的候補が阻害剤依存に発現変動しているか検討する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
Sci Rep.
巻: 12(1) 号: 1
10.1038/s41598-022-08104-4
Front Microbiol.
巻: 13 ページ: 967019-967019
10.3389/fmicb.2022.967019
mSphere
巻: 12 号: 3
10.1128/msphere.01342-20
Nature Communications, in press
巻: -