研究課題/領域番号 |
20K07609
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保田 裕二 東京大学, 医科学研究所, 講師 (70614973)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | O-GlcNAc / MAPK / がん / O-GlcNAc修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
O-GlcNAc化は細胞膜/分泌蛋白質で見られる糖鎖修飾とは異なり、糖転移酵素OGTによって細胞内蛋白質のSer/Thr残基に1分子のN-アセチルグルコサミンが付加される翻訳後修飾反応である。癌細胞では糖代謝の異常亢進(Warburg効果)が細胞内O-GlcNAc化反応を亢進するが、発癌・悪性化との機能的関連は未だ不明である。近年、申請者はO-GlcNAc化されることでMAPK経路の異常活性化を引き起こす、新たな基質分子を見出した。そこで本研究では、O-GlcNAc化とMAPK経路の制御破綻がもたらす影響を解析し、癌細胞の増殖を駆動する作用機序について分子・個体レベルでの解明を目指す。
|
研究成果の概要 |
蛋白質のO-GlcNAc化修飾は、グルコースの代謝産物GlcNAcを特定のSer/Thr残基に1分子付加する反応である。本研究により、解析対象の新規O-GlcNAc化分子の修飾部位が判明し、また本修飾が細胞増殖を司るMAPK経路の活性亢進に寄与することが分かった。さらに、細胞内グルコース濃度の上昇に応じて本分子のO-GlcNAc修飾が増加すると、MAPK経路の制御分子との相互作用性が変化し、増殖シグナルが惹起されることを見出した。さらに、癌細胞ではグルコースの取り込み・代謝亢進と一致して本分子のO-GlcNAc化も増加しており、MAPKシグナルの異常活性化と増殖能を促進していることが示された。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
癌細胞ではグルコース取り込みと代謝促進により(Warburg効果)、様々な癌悪性形質が惹起されている。グルコース代謝産物であるUDP-GlcNAcも同様に癌で増進しており、蛋白質O-GlcNAc化のドナーとして本修飾反応を促進するが、発癌への寄与は不明な点が多い。本研究の結果、Warburg効果によるグルコース代謝増進を癌増殖シグナルへと変換する、新たな仕組みを発見した。こうした「O-GlcNAc異常」と「細胞増殖制御」を分子レベルでリンクした知見は、様々な生理プロセスのみならず、癌をはじめとする重篤な疾患発症(糖尿病、神経変性疾患)の機序解明や治療法開発に重要な考察を与えると期待される。
|