研究課題
基盤研究(C)
近年、免疫システムを活性化させることでがんを治療する免疫チェックポイント療法が確立され、中でも免疫チェックポイント分子であるProgrammed death-1 (PD-1)を標的とした抗体治療が多くの難治性のがんに対して効果的であることが明らかになってきている。しかしながら、この治療に耐性を示す患者が多く存在することが問題になっており、その耐性を解除できる併用治療法の確立が求められている。その原因の1つとして、加齢に伴う免疫系の低下が考えられるが、その影響や改善方法は不明なままである。本研究は、加齢によるPD-1抗体治療耐性の制御機構を解明し、改善法の確立を目指す。
近年、加齢とPD-1抗体治療効果の低下との相関が示唆されてきているが、加齢に伴うPD-1抗体治療耐性の機構はほとんど明らかになっていない。申請者らは、高齢マウスにおいて見られるPD-1経路阻害治療効果の低下と新たなCD8陽性細胞群(P4)の誘導阻害が相関していることを見出していた。本研究により、P4細胞誘導阻害には抗原依存的なナイーブ細胞からの分化抑制が関与し、1炭素代謝経路の異常を引き起こすことで加齢に伴うPD-1抗体治療耐性に関与することが明らかになった。さらに、これらの現象には抑制性フォスファターゼがTCR経路を抑えることでPD-1阻害治療の効果を阻害していることが示唆された。
免疫系の老化は、がんの発症や進展のみならず、感染症や関節リウマチ、動脈硬化などの加齢関連疾患の発症や病態形成に重要な役割を果たすことが明らかになってきている。そのため、本研究成果から得られる免疫老化とその改善に関する知見は、新しいがん免疫治療法の開発につながるだけではなく、様々な加齢関連疾患に対する新たな診断マーカーや治療基盤の創出につながると考えられるものである。
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