研究課題/領域番号 |
20K07650
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
横尾 英樹 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70399947)
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研究分担者 |
松野 直徒 旭川医科大学, 医学部, 特任教授 (00231598)
高橋 裕之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (10516503)
近藤 格 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
萩原 正弘 旭川医科大学, 医学部, 客員講師 (40749694)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肝細胞癌 / FABP5 / 阻害剤 / 患者由来がんモデル / 新規治療薬 / 遺伝子プロテオーム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
肝細胞癌は分子標的治療薬の登場で治療成績が向上したが未だ予後不良であり、新たな治療ターゲットの研究・開発は重要な意義を有する。申請者はFatty Acid Binding Protein 5 (FABP5)が肝細胞癌に高発現しており生物学的悪性度、上皮間葉転換と関係していることを報告してきたが、FABP5を標的にした治療が成り立つかという問題がある。 このことより、肝細胞癌におけるFABP5標的治療が実臨床に近い患者由来がんモデルを用いて腫瘍増殖、浸潤、転移を抑制するのかどうか、その際の分子機構の変化を網羅的に明らかにすることを目的とし、次世代の有望な治療薬の開発につなげたい。
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研究実績の概要 |
我々は、これまでの研究で肝細胞癌における腫瘍組織中および血漿中のFABP5の高発現は、独立した予後不良因子の一つであることを報告してきた。FABP5が癌細胞の増殖能や転移能を増大させることを、肝細胞癌の細胞株とそれらの癌細胞を生着させたマウスを用いて、in vitroおよびin vivoのレベルで証明した。また、FABP5はZO-1やE-cadherinの減少、N-cadherinやSnailの発現上昇をきたし、上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition: EMT)を誘導することで、予後不良を生じさせるという分子生物学的なメカニズムを明らかにした。これらの結果を踏まえた、次なる研究課題としては、FABP5の阻害作用により、腫瘍の悪性化を特徴づける増殖能や転移能を抑制することが可能であるのか否か、つまりFABP5が治療効果を有する標的蛋白質となり得るのかを検討することが挙げられる。さらに、実際に肝細胞癌に対する治療効果が立証された場合には、背景にどのような分子機構の変化があるのかについて、質量分析を始めとしたプロテオーム解析や次世代シークエンサーで網羅的に評価し、FABP5に関連するメカニズム解明と新規薬剤の創薬につなげたい。 本年度は肝癌細胞株レベルで実際にFABP5阻害薬(SBFI-26)の投与により細胞増殖の抑制効果が得られるか否かについて、FABP5の発現量に差がある4種の市販肝癌細胞株(Li-7、HLE、Hep3B、HepG2)を対象として、Cell Counting Kit -8 (CCK-8:同仁堂、日本)を用いた評価ならびにMTTアッセイを行い、増殖能の変化を調べた。また薬液濃度を行い、効果が最大となるよう調整した。結果としては100μMのFABP5阻害薬を投与した細胞株は明らかに細胞数が減少していた。 昨年後半から今年度にかけてマウスモデルを使ったFABP阻害薬効果の検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度に引き続き、コロナウイルス感染症の影響により、全体として実験の進行に遅滞が見られたが、ここまでの研究結果は予想通りである。FABP5阻害薬の抑制効果は期待された結果であり、これまでの先行研究に準ずるものである。今回対象とした4種全ての肝癌細胞株で、増殖能の抑制効果が認められたが、FABP5高発現肝細胞癌株に比べ、FABP5低発現株でより著明な増殖抑制効果が得られたことは、少々意外な結果であった。当初はFABP5高発現株の方がその阻害による影響を受けやすいことを想定していたが、FABP5は細胞増殖において重要な蛋白質であるがゆえに、低発現株をさらに抑え込むと増殖能を維持するのか困難になるのではないかという新たな解釈や着想を得ることができた。また、FABP5の発現量が高いほど抑制に、高濃度の阻害薬を必要としており、今後のマウスモデルを使用した実験を見据えたときに、非常に意義のある研究データであったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
同市販肝細胞癌細胞株を用いたマウス皮下注モデルを作成し、in vitroで得られた抑制作用がin vivoレベルでも認められるのか検証する。具体的には、FABP5阻害薬(SBFI-26)を隔日投与し、1週間ごとに腫瘍量をIVIS imaging systemを用いて評価する。効果が実証された場合は、より実臨床の生体環境に近い、患者由来癌モデル(PDX)を使った実験系に移行する。旭川医科大学肝胆膵・移植外科で切除された肝細胞癌切除検体組織を国立がん研究センター研究所に輸送し、PDXの作成を行う。PDXに対しても、同様の手法でFABP5阻害薬の効果を評価し、その投与前後で生じているプロテオームの変化を質量分析や次世代シークエンサーによって評価する。その中から効果予測に有用なバイオマーカーや新規治療標的となるような蛋白および分子の同定を目指す。
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