研究課題/領域番号 |
20K07654
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
長屋 匡信 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (00718033)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | NIR-PIT / 食道癌 / Ano-1 / Glypican-1 / 分子標的 / 消化器癌 / 癌治療 / 光線免疫療法 |
研究開始時の研究の概要 |
消化管癌や消化管リンパ腫に対するNIR-PITの臨床応用を目指し、実際の臨床においてNIR-PIT治療対象となりうる症例がどの程度存在するのかにつき検討するとともに、消化管癌での特異抗原の発現状況、消化管粘膜での近赤外光照射時の光透過の状態につき検討する。また、臨床で使用可能な蛍光内視鏡の開発・改良も行い、標的腫瘍に効率よく近赤外光を照射する方法および治療効果判定指標の確立を目的とする。
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研究実績の概要 |
新規癌治療法である近赤外光線免疫療法(NIR-PIT:near-infrared photoimmunotherapy)の消化器癌、特に食道癌や大腸癌に対する臨床応用を目指し、治療に使用できる可能性のある癌特異的抗原の発現状況を検討している。まず、食道癌患者さんの切除病理標本を用い免疫組織学的な検討を目的に症例の集積を行った。NIR-PITは蛍光色素をつけた分子標的剤を静脈注射で投与したあとに標的腫瘍に近赤外光を当てるのみの治療法のため、充実臓器より管腔臓器の表面に生じる癌に特に有効であると思われ、消化器領域への特に内視鏡を用いたNIR-PITの臨床応用を目指している。当院で治療された食道癌の内訳として、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)にて切除した表在型食道癌(深達度粘膜下層までの癌)の症例74例、また外科的に切除された進行食道癌(深達度筋層以深の癌)の症例を30例抽出した。また、別の期間に切除され、臨床経過を追うことができる食道癌60症例も抽出した。 現在、頭頸部癌の治験に用いられている抗EGFR抗体につき実際の食道癌において早期癌・進行癌での発現の有無、発現程度など確認したが、食道癌への発現は50%程度であった。また、過去の報告で食道癌に発現が多いとされるGlypican-1の発現につき食道癌に特異的に発現をしているかにつき病理組織を免疫染色行ったが、食道癌以外の背景の正常粘膜への集積もかなりあり、NIR-PITの標的抗原としては適さないと判断した。 その後Glypican-1以外の食道癌特異抗原の検索を行っている。候補としてAno-1抗体が食道癌で発現している報告が少数例あり、対象症例につき同抗体での染色を行った。現在、染色性データを集積している段階であるが、Glypican-1と比較して、背景粘膜には染色されず、食道癌に比較的特異的に染色されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究者自身、研究以外の日常臨床の比重が多くなってきてしまい、研究にさける時間不足に加え、人手不足もあり、研究が遅れている。平日日中~遅い時間まで、日常臨床業務に加え、会議やカンファレンスを行っており、休日も学会や研究会、他病院での臨床業務もあり、研究に費やせる時間がほとんどなくなってしまった。 そのため、症例集積は終了したが、集積にかなりの時間を要してしまった。また、症例集積後の追加(未染色)の組織標本の作成に対して、人手と時間が足りていない。自動免疫染色機での染色が精度的には高く、時間的にも短時間で済むが、標本数や染色数が多いことからかかる費用が高くなるため、手動での染色により時間を要してしまっている。 また、臨床用の蛍光内視鏡の開発や米国のNIR-PITを開発した研究室での実験や打ち合わせも行う予定であったが、COVID19感染拡大により、具体的な打ち合わせもできていない。
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今後の研究の推進方策 |
食道癌において発現が予想されているEGFRは発現頻度が低く、Glypican-1については食道癌に発現頻度が多いものの、正常食道粘膜にも発現してしまっていることから、NIR-PITの標的とはなりにくいと判断している。他の食道癌特異抗原の検索を行っており、Ano-1という抗体について、対象症例に対しての免疫染色が終了している。染色性の解析検討を今後行っていく。また、その他の特異抗原の有無についても、可能な限り切除標本に対して免疫染色を行い、どの程度の頻度で抗原が発現しているかについても併せて検討する。一般的には進行癌で特異抗原の発現が多いことがわかっており、特異抗原の発現量は病勢と関連することがが多く、高抗原発現症例は予後不良であるといった報告もあり、Ano-1における早期癌と進行癌での特異抗原の発現頻度の差違や発現量での予後についても検討していく。 その上で、実際に近赤外光線免疫療法が可能かどうかを細胞実験や動物実験で検証していく。
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