研究課題/領域番号 |
20K07665
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
窪田 大介 順天堂大学, 医学部, 助教 (70638197)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肺腺癌 / 分子標的薬 / 薬剤耐性 / プロテオーム / オシメルチニブ / EGFR / 分子標的治療薬 / プロテオミクス |
研究開始時の研究の概要 |
EGFRの遺伝子変異は進行非小細胞肺癌の3-4割にみられ、EGFR阻害薬が有効とされる。しかし多くの症例で薬剤耐性による病勢増悪を認め問題となっていた。オシメルチニブはこれらの薬剤耐性を生じた症例に対しても有効で臨床使用されるようになった。しかし近年このオシメルチニブに対しても更なる耐性が出現し、全てのEGFR阻害剤に対して抵抗性を示すことが報告された。本研究では、オシメルチニブの薬剤耐性に関わる分子機構をタンパク質発現解析により網羅的に解析し、オシメルチニブ耐性機序の解明および新規治療標的の探索を目指す。
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研究実績の概要 |
肺がんは我が国において、がんによる死因の1位であり、今後さらなる増加が予測されている。EGFR(上皮成長因子受容体)の遺伝子変異は、進行非小細胞肺癌の3-4割にみられており、それらの症例に対してはエルロチニブをはじめとするEGFR阻害薬が有効とされる。しかし、多くの症例では治療開始から1年程度で薬剤耐性を生じ、病勢増悪を認める。その耐性機序のおよそ半数がEGFRのT790M変異であることが判明し、その耐性変異に対しても有効なオシメルチニブが臨床的に使用されるようになった。しかしオシメルチニブに対し更なる耐性が出現し、全てのEGFR阻害薬の効果がなくなることが報告され、このオシメルチニブに対する耐性機序の解明および新規治療方針の確立が急務である。本研究では、オシメルチニブの薬剤耐性に関わる分子機構をプロテオーム解析により網羅的に解析し、オシメルチニブ耐性機序の解明および新規治療標的の探索を目指すものである。初年度は肺腺癌の臨床検体を用いて、タンパク質の発現解析を行った。臨床的に オシメルチニブが奏功した10症例と、治療抵抗性であった10症例を対象に腫瘍凍結検体よりタンパク質を抽出し、質量分析器によりタンパク質の発現解析を行った。タンパク質発現については、特に薬剤耐性に関わるタンパク質を中心に統計処理解析を行い、オシメルチニブ耐性にかかわる複数のタンパク質候補を同定した。昨年度は、同定した遺伝子・タンパク質に対して、プラスミドを作成し、肺がん細胞株を用いて、恒常的に高発現または発現抑制させた細胞株モデルを作成した。本年度は樹立した細胞株でウェスタンブロット法にてタンパク質レベルでの発現変動を確認し、さらにオシメルチニブに対して薬剤抵抗性を示すことを確認した。今後はこの薬剤耐性細胞株に対して有効な薬剤を探索すると共に薬剤奏効性バイオマーカーとしての有用性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、プロテオーム解析を用いてオシメルチニブ耐性に関わるタンパク質を同定し、in vitroの機能解析による検証を行った上、オシメルチニブ奏効性予 測バイオマーカーおよび新規治療標的としての有用性を検討する。令和2年度は、当初の計画どおり、オシメルチニブによる治療を施行した症例の臨床検体を用 いてプロテオーム解析を行った。オシメルチニブに奏効性であった 症例(10症例)・抵抗性であった症例(10症例)の臨床検体を用いてレーザーマイクロダイセク ションにより、腫瘍部分を切り出し、タンパク質を抽出した。抽 出したタンパク質は、質量分析計を用いて、タンパク質発現プロファイルを作成した。2群間の 発現プロファイルを比較し、統計処理により、オシメルチニブ耐性に関わるタンパク質を同定した。令和3年度は、同定した遺伝子・タンパク質に対して、プ ラスミドを作成し、肺がん細胞株を用いて、恒常的に高発現・または発現抑制させた細胞株モデルを作成した。細胞モデルの作成にあたっては、遺伝子特異的な プライマーを用いて、クローニングにより作成した樹立した細胞株を用いて、細胞株がオシメルチニブに対する抵抗性を有することを検証した。現在までの進捗状況としては、オシメルチニブ耐性にかかわるタンパク質候補の複数の同定し、その細胞株モデルでオシメルチニブへの抵抗性を確認した。オシメルチニブの抵抗性の獲得機序に関する検討および、オシメルチニブ抵抗性の細胞株に有用な治療薬の探索についての検討にやや遅れが生じており、今後はこのオシメルチニブ耐性株に対してのドラッグスクリーニングや分子機構の解明についての解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、オシメルチニブの薬剤耐性に関わる分子機構をプロテオーム解析により網羅的に解析し、オシメルチニブ耐性機序の解明および新規治療標的の探索を目指すものである。プロテーオーム解析を用いて、臨床検体のタンパク質発現解析を行い、オシメルチニブ耐性に関わるタンパク質を複数同定した。そして候補となったタンパク質について、in vitroの機能解析を中心に行っている。具体的には、同定したタンパク質のプラスミドをGateWayシステムを用いてレンチウィルスベクターへの組み込みを行い、EGFR変異を有するNSCLS細胞株(PC9・HCC827・H1975)を用いて、恒常発現プラスミド強制発現モデルを作成した。発現が 低下しているタンパク質に対してはShRNAを利用した遺伝子ノックダウンモデルを作成した。今後はこれらの細胞株を用いてオシメルチニブ耐性を始め、細胞増殖、アポトーシスなどの機能を解析を進めている。さらにオシメルチニブ耐性の細胞株に対して、どのような薬剤が有用であるかのチロシンキナー ゼを中心に、新規治療標的としての可能性を検討していく。また追加の臨床検体が集積・使用可能であれば、発現解析を追加して行い、薬剤奏効性バイオマーカーとしての有用性を検討する予定である。
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