研究課題/領域番号 |
20K07788
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
日野 雅之 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50244637)
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研究分担者 |
中前 博久 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30364003)
幕内 陽介 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (70881176)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 造血幹細胞移植 / WT1 / オートタキシン / 同種造血幹細胞移植 / 移植関連血栓性微小血管症 / 補体 / 移植後シクロホスファミド / NK細胞活性化受容体 / PTCYハプロ移植 / BNP / NT-proBNP / 辺縁系脳炎 / カルシニューリン阻害剤誘発性脳症 / 機械学習 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
同種造血幹細胞移植は治癒が望める治療法であるが、リスクの高い治療法であり、移植の選択が最良でない場合もある。一般的にはHCT-CIやDRIなどの層別化された予後因子が用いられるが、これらに含まれない多くの因子も報告されており、個々の患者の予後を適切に評価するツールはない。本研究では新たな予後因子の探索に加えて、患者情報、ドナー情報、移植情報、各種病態のバイオマーカーの解析で得られた予後に影響する因子を機械学習を用いて個々の患者に合わせた生存、合併症発症、再発を予測できるツールを開発し、患者の意思決定支援、最適なドナー選択、移植法選択を補助し、移植成績の向上を図ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
1.難治性造血器腫瘍患者に対し、移植後シクロホスファミド(PTCy)の用量を減量(3日目50 mg/kg、4日目25 mg/kg)したHLAハプロ造血幹細胞移植(HSCT)の安全性と有効性を評価した。移植後100日目のグレードII-III、II-IVの急性GVHDは30%、0%で、中等度から重度の慢性GVHDは7.0%であった。移植後1年での非再発死亡率は6.1%、全生存率は66%であった。CD34+、CD3+細胞数と全生存率は非線形関係を示した。 2.同種HSCTを受けた 252人で前処置開始前に血清オートタキシン(ATX)を測定した。12 人が類洞閉塞症候群 (SOS)を発症し、preATXレベルがURLを上回っているグループで高かった (高ATXグループ、p<0.001)。高ATX群と低ATX群の1年間の累積発生率は、それぞれ22.7%と3.5%であった。多変量解析では、preATX>URLがSOS発症の独立した危険因子として特定された(HR、9.2; p<0.001)。PreATX>URLは非再発死亡率の危険因子でもあった(HR、3.2; p=0.011)。 3.同種HSCTを施行したAML/MDS患者265名で末梢血WT1 mRNA(2539件)の動的再発予測モデルの予測精度を評価するため動的ランドマーク解析を行い、ランドマーク時点ごとにRandom Survival Forestモデルを適応し、再発に対する変数重要度の経時的推移を評価した。各ランドマーク時点から1年累積再発率に対するWT1 mRNAのハザード比は移植後経時的に増加し、ランドマーク時間と有意な交互作用を認めた(p<0.001)。1年累積再発再発率に対する最重要変数は移植後100日以後はWT1値であった。移植後任意の時点からの1年累積再発率を予測する動的予測モデルのAUCは0.80であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同種造血幹細胞移植(HSCT)の予後に影響する因子の解析結果を複数の論文に公開、投稿中である。 1.難治性造血器腫瘍患者に対し、移植後シクロホスファミドの用量を減量したHLAハプロ造血幹細胞移植の安全性と有効性を評価した論文をCell Transplantation誌に公開した。 2.移植前処置開始前の血清オートタキシン(ATX)高値群で類洞閉塞症候群の累積発生率が高いことを示した論文を投稿中である。 3. 末梢血WT1 mRNA値が移植後100日以後の累積再発再発率に対する最重要変数であることを示した論文は、米国血液学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
1.機械学習モデルが推奨するパーソナライズされた同種造血幹細胞移植の予後予測効果を日本造血・免疫細胞療法学会のレジストリーデータを用いて検証する。機械学習モデルとしてランダムサバイバルフォレストとDeepSurvを使用する。前処置強度、ドナーソース、移植後シクロホスファミドに基づいて10の同種造血幹細胞移植手順を分類し、全体をトレーニングコホートとテストコホートに時系列で分割する。年齢、疾患、疾患状態、パフォーマンスステータス、造血細胞移植特異的併存疾患指数(HCT-CI)、サイトメガロウイルス感染状況、10の同種HSCT手順を予後変数として、同種造血後の全生存期間(OS)の機械学習予測モデルをトレーニングし、各テスト患者における10の同種造血幹細胞移植手順の1年OSの予測確率を計算する。患者によっては一部のドナーが利用できないため、機械学習の推奨のためにドナーの選択に制限を課す際に、1年OSの予測確率が最も高い手順を機械が推奨する同種造血幹細胞移植手順と定義する。実際の同種造血幹細胞移植手順が機械学習で推奨されている手順と一致しているかどうかに応じて、テストコホートを推奨グループと非推奨グループに分け、OSを比較する。 3.高齢者や併存疾患を有するため強度減弱前処置によるHCTを1-2遺伝子座HLA不一致非血縁ドナー(MMUD)または臍帯血で行う場合の予後比較を行う。 3.経直腸門脈シンチグラフィーによるシャントインデックスが移植後類洞閉塞症候群の発症を予測できるかを検討する。
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