研究課題/領域番号 |
20K07793
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
新家 俊郎 昭和大学, 医学部, 教授 (60379419)
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研究分担者 |
森 敬善 昭和大学, 医学部, 講師 (10439474)
若林 公平 昭和大学, 医学部, 准教授 (50384524)
山本 明和 昭和大学, 医学部, 講師 (60515592)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 動脈硬化 / Artificial intelligence / 光干渉断層映像法 / 脂質異常 / 糖代謝異常 / 炎症 / 急性冠症候群 / 再発 / 出血イベント / artificial intelligence |
研究開始時の研究の概要 |
日本人の急性冠症候群 は、発症率は欧米に比し低いものの、その再発率は同等である。二次予防目的で、脂質管理、糖尿病管理、抗血栓療法が行われるが、抗血栓療法に伴って出血イベントを発症すれば予後の悪化につながる。PCIを受けた日本人冠動脈疾患患者の年齢は70歳に達し、High bleeding risk (HBR)患者の識別が重要視される。冠動脈血栓イベントの予測能が向上すれば、抗血栓薬の減量は可能と考えられ、高齢化社会における至適治療戦略の確立が可能となる。AIアシストによる血栓イベントリスクに応じて抗血栓療法の強度を決定し、出血性イベントリスクを最小化した、高齢者冠動脈疾患治療法を模索する。
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研究実績の概要 |
日本人においても、急性冠症候群 (Acute coronary syndrome: ACS)発症後慢性期の再発率は高く、二次予防目的で、脂質管理、糖尿病管理、抗血栓療法が行われるが、抗血栓療法に伴って出血イベントを発症すれば予後の悪化につながる。Artificial intelligence (AI) を活用し、冠動脈血栓イベントの予測能が向上すれば、出血高リスク (High bleeding risk:HBR) 患者に対する抗血栓薬の減量は可能と考えられ、高齢化社会における至適治療戦略の確立のため本研究を実施した。これまでに、冠動脈プラークおよび冠動脈ステント留置部の光干渉断層映像 (Optical coherence tomography: OCT)画像を収集しAI解析を進め、血栓イベント予測指標の構築を行っている。また、同時に、脂質プロファイル、糖代謝プロファイル、炎症/酸化ストレスバイオマーカーを測定し、イベント予測指標を補完する枠組みを構築してきた。 令和5年度には多施設から、700例のACS患者を登録し、急性期のOCT画像を収集するとともに、1年予後を解析して論文発表を行った。本データを用いることでAIによるリスク層別化が可能となれば、適切に血栓イベントリスクをコントロールしながら、出血イベント抑制を維持するための重要な指針が得られるものと考える。昨年度は、AI解析を進めてきたが、石灰化結節によりACSを発症した症例の予後がプラーク破綻よりもイベントリスクが高いこと予測されたものの、石灰化結節の症例数が少ないことはAI解析による予後予測を不十分なものとさせており、令和5年度にその症例数確保が出来た結果、令和6年度に1年間研究期間を延長し、AI解析を進捗させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年3月までに、先行する約200例のACS責任病変の解析を終了し、イベントの予測因子となり得る、プラーク破綻、プラークびらん、石灰化結節、脂質プラークの程度(Lipid index)、石灰化プラークの程度(Calcium index)、コレステロール結晶(Cholesterol crystal)、マクロファージ集積、マイクロチャンネルの同定を、経験豊富な判定者によって診断を行った。新型コロナ感染症の影響により、石灰化結節によってACSを発症した症例数が未だ十分ではなかったが、令和5年度に十分な症例数が蓄積されることととなった。また、同対象患者において、血清LDL-Cをはじめとする通常診療において血栓イベントリスクを推定するバイオマーカーを計測するとともに、small dense LDL 、HDL特異的コレステロール取込み能 (cholesterol uptake capacity: CUC)、CGMの解析を進めている。これまでのところ、血中small dense LDL, EPA値とプラーク性状との関連性につき論文公表を行ってきたが、冠攣縮によるACSやステント血栓症によるACSについてもまとまった形で予後との関連を示すことができた。AI解析の制度を改善する作業も並行して進めており、主要心血管イベント(MACE)、出血性イベントの予測能の向上を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度にまとまった700例のACS患者全体の1年時イベントでは、主要心血管イベント(MACE)は11%、出血性イベント(BARC分類タイプ2, 3, 5)は4%であり、初期100例の解析と一致していた。前年度に引き続き、AI解析による血栓イベント予測能を向上させるために、十分な登録症例数を得ることを推進するため、多施設登録研究を継続する予定。引き続き、症例数が不十分であった石灰化結節によるACS症例を組み入れて解析する予定である。主研究施設ならびに共同研究施設において撮像された約600例のOCT画像を収集しAI解析を追加で行う予定である。石灰化結節の症例では、1年時のMACEは32%、出血性イベントは11%あり、特に高頻度であることが判明したため、当初の研究計画に従い、登録症例を、臨床的判断に基づく高強度血栓療法群と低強度血栓療法群に群分けし、それぞれの対象患者におけるプラーク診断を含んだAI判断による血栓イベントリスクの高低ごとに、実際に発症した血栓イベント、出血イベントとの関連を検討し、精緻な予後予測指標を策定する方針である。 脂質プロファイル、糖代謝プロファイルなどバイオマーカーについても同様にできる限り収集するとともに、各種出血リスクスコアなど臨床指標のデータベースを構築し、出血イベント/血栓イベントとの関連因子を統計学的に抽出する。また同時に、脂質代謝、血糖変動と冠動脈プラークの進展、退縮機序の関係を検証するとともに、出血因子、血栓形成因子に関する複合因子の検討を進めることとする。
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