研究課題/領域番号 |
20K07836
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
岡崎 充宏 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (40734869)
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研究分担者 |
花尾 麻美 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (40756920)
和田 裕雄 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (50407053)
筒井 裕文 東京電機大学, 理工学部, 助教 (70620649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 医療関連感染 / 薬剤耐性大腸菌群 / ESBL産生大腸菌 / プラスチック汚染 / バイオフィルム / 海域 / ベクター / ESBL関連遺伝子 / ポリエチレンテレフタレート / PCR法 / 薬剤耐性菌 / 薬剤耐性遺伝子 / ポリエチレンテレフレタート / ESBL / プラスチック / 海洋汚染 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、病院内感染及び市井感染における薬剤耐性病原菌(AMR)による感染症治療の難渋化が問題となっており、このまま対策を講じなければ2050年には、AMRによる推定死亡者数は1000万人に達する可能性が報告された。これまでの研究で、AMRの汚染はヒトや動物等から河川に排出され、沿岸まで拡散していることを明らかにした。一方、プラスチック(PL)による地球環境汚染が深刻であり、人を含む生態系の維持に影響を与える要因の分析と対策が求められている。本研究は、このAMRとPLとの共通の汚染場所が自然環境の水域領域であることに注目し、AMRがPLを介してヒトへの暴露の可能性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
環境汚染したプラスチック(PL)は、その表面上に微生物が付着し微生物を異なる環境(土壌、河川、海など)に運ぶベクターの役割として報告されている。また、我々はこれまでの研究において医療関連感染の原因菌として問題となっている薬剤耐性菌のひとつであるESBL産生大腸菌が水再生センター(多摩川水系)を介して河川に流出し、海水(東京湾)に拡散していることを明らかにした。これらのことは海水域は、流出したPLと薬剤耐性菌が同時に存在し得るホットスポットであり、PL表面上のバイオフィルム内での薬剤耐性遺伝子の伝搬が行われ、薬剤耐性遺伝子の拡散の源である可能性がある。 本研究調査では、海水に漂流したPLに付着したESBL産生大腸菌の検出を目的とした。PLの採集は、市民が利用する海水浴場やマリンスポーツなどのコミュニティーとして利用されるエリアで行った。採集したPLは14種類の加工品であった。各PLサンプルをセフォタキシム含有の選択増菌培地にてESBL産生大腸菌のスクリーニング培養を行った後に、クロモアガーESBL培地にて培養した。その分離培地からESBL産生ESBL産生大腸菌が疑われる集落を対象にPCR法を用いてESBL関連遺伝子の検出と遺伝子型別を行った。収集したPLサンプルの1つからESBL産生大腸菌が検出され、分離菌株の遺伝子型はST131/CTX-M-9群であった。この分離菌株は、医療関連感染の原因菌株と同様の型であった。 今回の実環境調査結果は、人のコミュニティーに流出したPLは薬剤耐性菌を付着させていることを明らかにした。これによるヒトへの感染リスクの可能性を示し、感染経路の解明にはさらなる研究が必要であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス流行の影響を受け、実験の進行に障害が発生したため、1年間延長する予定である。これまでに海水域を漂流するプラスチック(PL)破片から医療関連感染で問題となっているESBL産生大腸菌を検出した。本分離菌株のMLST型およびESBL関連遺伝子型を分析した結果は、医療関連感染において問題となっている型と同一であることを確認した。薬剤耐性菌を検出したPLは、海水浴場の砂浜であったことから公衆衛生学的に極めて重大な問題である可能性があった。今回の調査は、コロナの影響もあり、1回のみの調査であり、本来は少なくとも3回の実環境調査を予定していることから、2023年度の研究では、その再調査を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実環境調査において、当初の仮説どおりに海水域に流出したプラスチック(PL)の表面からESBL産生大腸菌を検出した。この検出事例が、一過性であるか、あるいは継続的な検出であるかを確認するために、再調査を2回実施する。その調査で検出された分離菌株の分析と合わせて、PL表面上に生息するESBL産生大腸菌以外のビブリオ属などを対象にESBL関連遺伝子の保持状況の実験を行う。仮に、ビブリオ属がESBL関連遺伝子を保持していることが確認された場合は、PL表面上の「plastisphere」において薬剤耐性遺伝子の伝達が行われたことの重要な根拠のひとつとなり得る。また、薬剤耐性遺伝子を保持していなかった場合は、本ESBL産生大腸菌株とビブリオ属との実験的接合伝達を行い、その伝達能力の有無について検討する予定である。
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