研究課題
基盤研究(C)
高齢者を対象とした周術期を含む入院診療中の医原性有害事象並びにエラーを網羅的に評価した臨床疫学研究は、世界的にも類を見ない。高齢者は多種類の薬剤投与に加えて、全身臓器の機能低下の併存が認められ、医原性有害事象を発症しやすいという背景がある。高齢者の医療需要が高まる中、医療の質の向上のためには、周術期を含めた医原性有害事象並びにエラーの分析、検討が不可欠である。本研究では、本邦の高齢者の医原性有害事象並びにエラーの現状、これらが転帰に及ぼす影響を明らかにする。これにより、本邦の高齢者診療における治療成績向上や、健康寿命の延長並びに安全対策の推進に貢献する。
65歳以上の高齢者を対象に多施設前向きコホート研究を実施した。対象患者は704人で、医原性有害事象は831件発生した。医原性有害事象の原因としては薬剤344件(41%)、手術以外の検査・手技149件(18%)、手術132件(16%)、看護126件(15%)、その他80件(10%)であった。自宅退院となった患者数443人のうち医原性有害事象を発生した患者は168人(38%)であったのに対し、自宅外退院となった患者261人のうち医原性有害事象を発生した患者は150人(57%)であり有意に高かった(P<.0001)。医原性有害事象が発生した高齢者は自宅退院できる割合が減少することを示した。
高齢者に発生する医原性有害事象は、死亡や重篤な健康被害を引き起こすことが少なくない。さらに、中等度あるいは軽微な健康被害であっても、フレイル状態から要介護状態への移行を促す可能性がある。本研究では、高齢者を対象に質の高い臨床疫学研究を実施し、医原性有害事象の詳細を明らかにした。加えて、これらの事象を経験した高齢者では、自宅への退院率が有意に低下することを示した。医原性有害事象の効果的な予防策を講じるため、その特徴を詳細に分析し、原因別および重症度別の発生割合を提示した。今後は、高齢者における医原性有害事象の発生を低減するため、具体的な介入方法の開発に向けたさらなる研究が求められる。
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