研究課題/領域番号 |
20K07896
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 隆文 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70361079)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | パ-キンソン病 / αシヌクレイン / sortilin / Lewy小体 / GCI / エンドサイトーシス / 受容体 / プリオン様伝播 / エンドソーム / 凝集タンパク / 疾患修飾療法 / パーキンソン病 / 線維 / プリオン伝播 / 膜タンパク / 網羅的解析 / シヌクレイノパチー / αシヌクレイン受容体 / 進行抑制治療 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らを含めた複数の先行研究により、線維化αSYN取り込みが受容体介在性エンドサイトーシスに依存している可能性が指摘されている。申請者は (i)全脳由来膜タンパクを人工リポソーム膜上へライブラリー化し、(ii) 単量体・線維化αSYNに結合する膜タンパクをカラム精製後、(iii)バイオチップ上に転写し質量分析法により検出するという斬新な研究手法(MPL-BLOTCHIP-MS法)を発案した(2019年5月特許出願)。同手法は当該研究分野において未だ試みられたことのない独自性に富んだ解析手法であり、既存の方法では検出し得なかった線維化αSYN受容体タンパクが検出可能になるものと期待される。
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研究実績の概要 |
前年度までにHEK293細胞で確認した、 (1) 神経・オリゴデンドログリア細胞に高発現するsortilinが、線維化αSYNと特異的かつ強固に結合を示す事、(2) 線維化αSYNの細胞内への取り込みは細胞表面のsortilin発現量に依存し、(3) 線維化αSYNはsortilinのエンドサイトーシスと協調して細胞内へ取り込まれ、初期・後期エンドソームへ輸送される事、また(4) sortilin細胞外のten conserved cysteines (10CC)ドメインが線維化αSYNとの結合部位であること、そして(5) 10CCドメイン特異的抗体による前処理が線維化αSYN取り込みを有意に抑制することを踏まえ、これらの実験の再現性をラットPC12ドパミン神経細胞およびラット大脳初代培養細胞で検討し、同様の結果を得ることが出来た。さらに、sortilinがシヌクレイノパチー脳内の細胞内封入体(Lewy小体、GCI)にリン酸化αSYNと供に存在する事実を踏まえ、パ-キンソン病 (PD)、incidental Lewy body disease (ILBD) 患者の中脳黒質ドパミンニューロン公開トランスクリプトームデータを用い、PD Braak病理ステージ毎のsortilin発現量を比較した。Braakの病理学的病期分類によると、PDのLB病理は脳幹下部から吻部に向かって進行すると考えられているが、興味深いことに、中脳黒質ドパミンニューロンにおけるsortilinの発現量は、LB病態が中脳に達したBraakステージ3では、それ以前(ステージ1、2)およびそれ以降(ステージ4)よりも高い傾向にあった。以上の結果から、sortilinを介したエンドサイトーシス経路でのカーゴ輸送が、in vivoにおいてもシヌクレイノパチーの病態プロセスに関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定されていた実験は概ね終了し、現在関連国際誌に論文を投稿中(リバイス後に再投稿)である。なお、αSYNとの結合部位であるsortilinの10CCドメイン抗体については、これまでと異なる配列(EKDYTIWLAHSTDPEDYED)をエピトープとしたセルフメード抗体を新たに作成し、前年度に作成した抗体との効果の違いについて、今後検討する事を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
一方、クライオ電子顕微鏡を用いた最近の研究により、シヌクレイノパチー患者脳サンプルにおいて、αSYNの異なる分子コンフォマーが存在することが示されている。従って、各αSYN株は細胞表面受容体に対して異なる親和性を持っている可能性があり、今後の検証に値する。また、sortilinとαSYNのエンドサイトーシス後の運命は、まだ十分に解明されていない。ソルチリンは、トランスゴルジ網、エンドソーム、分泌小胞、多胞体、細胞表面で受容体として機能する等、複雑な細胞内輸送の役割を持つ。従って、αSYNの分解と分泌におけるsortilinの役割は、今後の研究において探求する価値がある。さらに、今回の結果の大部分はin vitroの細胞モデルと患者剖検脳を用いて得られたものである。従って、今回の知見を検証するためには、動物モデルを用いたin vivoの実験が必要であると考える。
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