研究課題/領域番号 |
20K07918
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
宇田川 潤 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (10284027)
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研究分担者 |
林 雅弘 宮崎大学, 農学部, 教授 (00289646)
岩崎 雄吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50273214)
内村 康寛 滋賀医科大学, 医学部, 特任准教授 (90803990)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | リン脂質 / 行動変化 / 化学構造 / 合成 / 行動 / プラズマローゲン / 情動 / 脳内輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
脳内のエタノールアミンプラズマローゲン(PlsEtn)は哺乳動物の行動に関係すると考えられている。本研究では、発達障がいや精神疾患の予防や治療に応用可能な高機能PlsEtnの創出を目指し、以下の実験を行う。 ①ビニールエーテル結合や多価不飽和脂肪酸の有無など、分子構造の異なるリン脂質を合成し、ラットに投与して行動変化を観察する。これにより分子構造と機能との関連を明らかにできる。 ②安定同位体標識PlsEtnを合成し、脳内移行経路や脳内動態を調べる。これにより高機能PlsEtnの標的となる細胞や反応系が明らかとなる。 ③これらの知見をもとに、より高機能なPlsEtnをデザインする。
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研究実績の概要 |
本年度は以下の研究を行った。 1.脳内取り込み効率の良いリポソーム構成成分の再検討 Egg PCと蛍光標識ホスファチジルエタノールアミン(ATTO 740 DOPE)で構成されたリポソームをマウスに静脈内投与し、in vivoイメージングにより蛍光を検出したところ、大脳皮質背側に蛍光が観察された。したがって、静脈内に投与されたリン脂質は脳内に取り込まれることが示唆された。一方、脳内取り込み効率の良いリポソームを選別するため、蛍光物質のDilC18を組み込んだ4種類のリポソーム(Egg PC + 1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylethanolamine (DSPE)、Egg PC + DSPE + cholesterol、Egg PC + PEG2000-DSPE、およびEgg PC + PEG2000-DSPE + cholesterol)に関しin vivoでの脳内取り込み率、ならびに血液脳関門in vitro再構成モデルの透過性を比較したところ、Egg PC + DSPE + cholesterolの構成がリン脂質の脳内移行に最も適していると考えられた。 2.行動変化に寄与する化学構造の考察 18:0-22:6リン脂質において、親水性部分のエタノールアミンは自発活動性を低下に関連していた。一方、本リン脂質のsn-1位のエステル結合をビニールエーテル結合へと置換すると、自発活動性の回復と記憶の増強が認められた。また、ホスファチジルコリンではsn-1位のビニルエーテル結合とsn-2位のアラキドン酸の組合せが抗不安様行動に寄与した。さらに、sn-1のエーテル結合と飽和脂肪酸長、ならびに親水基の種類は、社会認識能力に関連していた。親水基、sn-1位の結合、ならびに疎水基の脂肪酸の種類の組合せにより、特徴的な情動の変化を誘発可能と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リポソームの血液脳関門の透過性について再検討し、低コストでリン脂質の透過性が比較的良好なリポソーム構成を選別できた。また、当リポソームを用いた実験により、自発活動性や記憶、不安、社会認識能力に影響を与える親水基、sn-1位の結合、ならびにsn-1およびsn-2位の脂肪酸の種類とそれらの組合せについて検討できた。これらの結果は、情動をコントロールする高機能リン脂質の開発に応用可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光標識リポソームあるいは13C標識脂肪酸を用いて、リン脂質が取り込まれる脳部位を観察し、行動変化と対応させて、リン脂質により行動変化が生じる神経回路を考察する。また、本年度までの研究結果を応用し、自発活動性などに影響を与えないが記憶・社会認識能力の向上、あるいは不安のコントロールにさらに効果があると考えられるリン脂質をデザインして、それらの合成リン脂質の効果を動物実験で確認する。
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