研究課題
基盤研究(C)
ASD患者は、予期せぬ事態に直面したり、負荷が過剰になると「パニック」を起こしやすい。同症のパニックを神経生理学的かつ非侵襲的に捉える試みはこれまで行われていない。本研究提案では、「ASDのパニック状態は定型発達者の驚愕反応と質的に異なり、注意のorienting以降の障害が起こるが、瞳孔径モニタリングから病態機序を解析可能である」と仮説を立て、その立証を試みる。さらに、同パニック反応が、過剰な驚愕反応にそのものによるのか、それ以降の注意機能が関わる情報処理過程の障害によるのかを明らかにする。本研究により、ASDにおけるパニックの神経基盤の解明と、その治療法開発への貢献が期待される。
当初の研究計画はcovid-19禍の影響で、予定通り施行できなかった。そのため、成人定型発達者とADHD患者の課題施行中の瞳孔径変化の違いを解析し、ADHDで高いベースライン値と、一過性瞳孔径変化の抑制を確認し、論文発表した。また、瞳孔径ベースライン値、瞳孔径のサンプルエントロピー、左右瞳孔径の非対称性を示すトランスファーエントロピーの3指標を用いることで、機械学習的なADHD診断の精度が向上することを証明し、これを特許出願および論文発表した。さらに、ADHDにおいて、左瞳孔径のサンプルエントロピーおよび瞳孔径左右差のサンプルエントロピーが定型発達者と異なることを確認、論文発表した。
ADHDの症状に関する教育が進んだ結果、患者数は増加の一途を辿っている。一方、同障害の簡便な診断は未だに困難で、専門的知識と十分な経験を要する。また、その病態はよくわかっていない。本研究では瞳孔径の発火頻度がノルアドレナリン神経核の発火頻度と同期する原理を利用し、pupillometryを用いて、成人ADHDと定型発達者の瞳孔径変動の違いを世界で初めて明らかにした。さらに瞳孔径変動の非線形的性質に着目し、複雑系解析の指標を用いることで、同障害の機械学習的診断の精度が大きく向上することを示し、実用化を目指して特許申請を行った。瞬目活動からも病態生理に迫りつつあり、将来の応用発展が期待される。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (6件) 産業財産権 (1件)
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