研究課題/領域番号 |
20K07934
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大西 哲生 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (80373281)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 統合失調症 / ノックアウトマウス / 均衡型染色体転座 / 染色体転座 / マウス / ChIP-seq |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では我々が同定した遺伝子発現調節システムであるLDB2-EGR系の精神疾患の分子病態との関わりを探る。 研究の概要は下記のとおりである。 A. EGR とLDB2 が複合体を形成することを証明、両者をつなぐ分子 (missing link)の同定。B. その遺伝子と統合失調症の遺伝統計学的関連を検討。C. どの遺伝子がLDB2-EGR系の直接の標的なのかの探索。D.臨床サンプルを用いてLDB2-EGR系に異常がある一群の存在を証明し、発症前診断が可能かの検討。研究期間前半ではA,Cを中心に据え、後半ではB,Dを中心に検討を行う。
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研究実績の概要 |
LDB2-EGR間のmissing linkの解明についても積極的に解析を進めたが、現在のところその同定には至っていない。具体的にはLDB2を通常の方法て免疫沈降(マウス脳lysateなどを利用)しその共免疫沈降物の中にEGR1,2,3が検出できるかどうかを検討したが今までのとこを成功していない。その原因は恐らくLDB2-EGR複合体の生化学的安定性がそこまで高くない、あるいはLDB2特異抗体による免疫沈降効率が不自由分であるといった複合的な理由があるのではないかと解釈している。並行して、本研究年度は、今まで未発表であった研究成果の取りまとめ作業、リバイス実験を行った。その結果二本の論文(Horiuchi Y et al. 2020; Ohnishi et al. 2021)に採択され、掲載に至った。特に後者に関しては理化学研究所からプレスリリースを行い、多くのメディアで取り上げられた。その内容には、当該患者の均衡型染色体転座の転座点を塩基レベルでの確定、LDB2がシナプス機能の調節を介して精神疾患の発症に関与している可能性、シナプス機能調節因子であるARCがその標的であること、LDB2はゲノム上で10000箇所以上に結合すること、すでに我々が統合失調症との関連を証明していたEGRタンパク質と協調して遺伝子発現を調節うることなど、いずれもそれまで全く不明であった点を明らかにしたものであり、極めて重要な研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究成果の一部を以下の論文にまとめられたため。 1. Horiuchi Y, Ichikawa Ohnishi et al.: LDB2 locus disruption on 4p16.1 as a risk factor for schizophrenia and bipolar disorder, Hum. Genome Var. 7, Article number: 31, 2020 2. Ohnishi T et al.: Cooperation of LIM domain-binding 2 (LDB2) with EGR in the pathogenesis of schizophrenia, EMBO Molecular Medicine, e12574, 2021 またLDB2とEGRタンパク質の相互作用は極めて不安定で通常の免疫沈降法などでは捉えることが相当困難であることが判明するなど、その生化学的性状について理解が進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に関しては近接ビオチンラベル化法、特異的抗体を用いたマウス脳からのLDB2複合体精製、マウスのLdb2遺伝子のま石コドン下流に精製に使えるタグを導入するなどの方法を用いてLDB2-EGR複合体の生化学的性状解析を強力に推進する。この解析によってEGR-LDB2間のmissing linkの同定を目指す。同時にARC遺伝子の発現調節をモデルとして、EGRメンバー、LDB2の機能を詳細に検討する。その目的でLDB2の野生型、双極性障害で見出した点変異体、EGR1-4の発現コンストラクトを作成する。ARC遺伝子の下流にレーポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を導入したコンストラクトも準備し、デュアルルシフェラーゼアッセイにより、EGR発現の効果、LDB2発現の効果、LDB2変異の効果、LDB2-EGR間のmissing linkの実体(何らかの転写調節因子を想定している)の効果を検証する。missing linkが判明した場合には、その遺伝子におけるレアバリアントを統合失調症、双極性障害サンプルから探索し、将来のノックインマウスなどを用いた解析の基盤とする。
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