研究開始時の研究の概要 |
DSAでは血管像を高精細に得るために2つの課題がある. ①被験者や臓器,撮像系の動きによりアーチファクトが生じやすいため,適用部位が限定される. ②造影剤注入後画像(ライブ像)を連続的に撮影するため,被験者の被曝線量が増加する. 本研究では深層学習の敵対的生成モデルを用いて上記の課題を解決する新しいDSA法の開発を行うことを目的とする.本研究により動きによるアーチファクトがないDSA像が得られ,動きによりDSAが適用できなかった冠動脈造影やマスク画像を撮像していなかったためDSA像が作成できなかった部位への拡張が期待できる.さらに深層学習によるフレーム間補間によって,被験者の被曝低減を実現する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は深層学習を用いて,被験者の自由呼吸下で撮影が可能で,かつ被曝線量を大幅に低減できるDSA法の開発を行う.本研究によって,造影後画像であるライブ画像撮影時の呼吸停止は必要なくなる.また,これまで臓器の動きがあるため適用できなかった心臓領域および撮影系が移動する下肢領域などにもDSAが適用できるようになる.さらに,微小な動きによるアーチファクトも低減されるため,通常のDSA画像では観察困難な微小血管や血管の形態なども観察可能となり,診断等で有用となる.これにより任意の部位でのDSAが可能となり,結果として血管造影に比べて造影剤の使用量を減らすことができるDSAの適用範囲が広がり,造影剤による副作用低減が期待できる.本研究では,これまでのDSAのようにライブ像からマスク像を減算すると動きによるアーチファクトが生じるため,ライブ像から直接DSA像を得よ うとする手法を考案している. 今年度は,昨年度の実績に基づいて,血管造影像の画像データベースを構築と深層学習モデルの比較・検討を行った.具体的には,造影後画像および病院で作成されたDSA画像のそれぞれについて,ニューラルネットワークの効率的な学習を行うため画像パッチを作成した.ここで造影後の画像パッチは「入力データ」に,病院で作成されたDSAの画像パッチは「教師データ」に対応する.そして,敵対的生成モデルであるpix2pix,CycleGANと, FCNのU-netの3つのタイプのモデルを作成し,画像データベースのデータを用いて学習を行い,結果として出力される画像の画質を元にモデルの層数やハイパーパラメータを変更し,モデルの最適化を行った.しかし,ハイパーパラメーターの設定や最適化に時間を要している.
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