研究課題/領域番号 |
20K08151
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
草野 陽介 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (40619665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 膵臓がん / coverage / 消化管ガス / 腫瘍の位置変化 / 患者位置決めソフトウェア / robust planning / 患者位置決め / 粒子線治療 / 線量分布 / In-Room CT / 医学物理 |
研究開始時の研究の概要 |
粒子線は腫瘍へ線量を集中的に付与できる。その反面、飛程がずれると腫瘍線量が低下し、正常臓器にダメージを与える可能性がある。一般的に患者位置決めは骨照合で実施され、腫瘍や正常臓器の位置は考慮されていない。つまり、骨では合っていても腫瘍や正常臓器の位置がずれている可能性があり、腫瘍線量の低下や想定を超える線量が正常臓器へ付与される可能性がある。本研究では治療時のCT画像を使い、①腫瘍と正常臓器の位置変化を解析する。(基礎データ取得)最終的に、②線量分布を指標とした患者位置決めシステムを構築する。これにより、治療時の状態に最も適した照射位置が決定でき、治療成績の向上、正常臓器の障害低減が期待できる。
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研究実績の概要 |
粒子線は鋭いピーク状の線量分布を形成する放射線であり、正常臓器への線量を低く抑え、腫瘍へ線量を集中的に付与できる。その反面、体格変化や消化管ガスの有無などによる飛程変化、腫瘍や正常臓器の位置変化などにより腫瘍線量が低下し、周辺の正常臓器にダメージを与える可能性がある。本研究ではこれらの課題を解決し、治療成績の向上を目指している。 2021年度はこれまでに蓄積した基礎データをもとに論文を投稿し、2022年8月に受理・公開された。消化管ガスの位置や量は、治療当日(照射中)や治療期間中に変化する。そのため、腫瘍へ正確に線量を付与するためには、消化管ガスに対して堅牢な治療計画を立案する必要がある。本論文では、炭素線治療における線量分布の変化要因(体格変化、消化管ガス、腫瘍位置変化)を明らかにするとともに、消化管ガスに対して堅牢な治療計画の立案手法を提案・実証した。本手法は特別なソフトウェアや機器を必要とせず、即座に臨床利用が可能である。本件は学術研究助成基金助成金を使用した成果の1つであり、膵臓がん炭素線治療の治療成績の向上に貢献できると考えている。 2022年度は前述の論文投稿に加え、基礎データの解析、患者位置決めソフトウェアの不具合と機能の改修(本改修のため研究期間を1年延長)を行った。基礎データの解析(本研究の評価基準)では、「骨合わせ(Bone matching)」と「腫瘍合わせ(Target matching)」でのTarget coverage評価を行った。この結果と2021年度に実施した「腫瘍位置変化に関する評価」の結果を、第35回日本放射線腫瘍学会(2022年11月)で報告した。その後、2023年2月より改修後のソフトウェアを使用して、「線量分布をベースとしたアダプティブ患者位置決め」の評価を再開した。本研究成果を2023年度中に論文として報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、研究期間を1年延長し実施している(~2024年3月)。論文投稿時に統計データ数の不足を指摘されたため、追加のデータ処理により基礎データを追加した。さらに、患者位置決めソフトウェアの不具合改修が必要となった。そのため、研究期間の延長が必要となった。 2020年度は、1)基礎データの取得、2)患者位置決めソフトウェアの基本設計を行った。基礎データの取得では対象を膵臓がん(患者10名)とし、腫瘍の位置変化、腫瘍の線量評価(coverage評価)、正常臓器の線量評価を行った。その結果、膵臓がんの炭素線治療では消化管ガスの影響が無視できないことが処理過程で判明した。この問題を解決するため、消化管ガスの位置と量の変化に堅牢な治療計画立案法を考案・実証し、論文を投稿した。そして、患者位置決めソフトウェア基本設計書をまとめた。 2021年度は、基礎データの取得および患者位置決めソフトウェアの製作を行った。2020年度に投稿した論文で統計データ数の不足を指摘されたため、膵臓の基礎データを追加し論文を再投稿した。さらに、患者位置決めソフトウェアの実証実験で使用するデータとして、前立腺(患者10名)の基礎データを処理した。並行して、2020年度に作成した「患者位置決めソフトウェア基本設計書」をもとに、患者位置決めソフトウェアを製作した。2022年4月に計算環境の整備が完了した。 2022年度は、投稿中の論文に対する対応、基礎データの解析、患者位置決めソフトウェアの不具合と機能の改修を行った。投稿中の論文は2022年8月に受理・公開された。これまでに得られた基礎データの解析結果(腫瘍位置変化、骨・腫瘍合わせ)を、第35回日本放射線腫瘍学会(2022年11月)で報告した。現在は「線量分布をベースとしたアダプティブ患者位置決め」の評価を再開し、その成果を論文として報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに膵臓がん(患者10名)および前立腺がん(患者10名)の基礎データを取得した。そして、患者位置決めソフトウェアの実証実験を行うための計算環境を整えた。基礎データの取得時に確立した「膵臓がんの炭素線治療における消化管ガスの影響と治療計画立案法」に関する論文は、2022年8月に受理・公開された。本論文は学術研究助成基金助成金を使用した成果の1つであり、膵臓がん炭素線治療の治療成績の向上に貢献できると考えている。そして、これまでに得られた基礎データの解析結果(腫瘍位置変化、骨・腫瘍合わせ)を、第35回日本放射線腫瘍学会(2022年11月)で報告した。 現在は改修後の患者位置決めソフトウェアを使って「線量分布をベースとしたアダプティブ患者位置決め」の評価を実施している。得られた結果は、他の手法(3D-2D骨照合およびtarget matching)と比較検証の予定である。論文投稿時の指摘対応(データの追加)とソフトウェアの改修により研究は1年遅れている。しかし、研究内容は当初の研究計画に沿って進められている。得られた結果をもとに、2024年3月までに患者位置決めソフトウェアについての論文が受理・公開されることを目標とする。 最終的に、治療システムとは切り離した状態となるが臨床現場に設置し、ルーチン作業での運用が可能か評価する。
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