研究開始時の研究の概要 |
急性巨核芽球性白血病(Acute megakaryoblastic leukemia, AMKL, FAB分類 M7)は全AMLの1%とされるが、小児AMLでは約15%を占め、非ダウン症のAMKLはこれまで一般的に予後不良とされていたが、最近の研究ではキメラ遺伝子によって予後が異なることが明らかとなってきた。今回我々は初発と再発AMKLの遺伝子変化を次世代シーケンサーで解析し、再発に伴うクローン進化を明らかとする。また新規薬剤を含む各種薬剤感受性について検討することで、予後不良なAMKLに対する臨床応用にむけた新規分子標的薬探索を行う予定である。
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研究実績の概要 |
CBFA2T3-GLIS2キメラ遺伝子陽性4例、NUP98-KDM5Aキメラ遺伝子陽性1例、RBM15-MKL1キメラ遺伝子陽性2例、キメラ遺伝子検出せず2例を含む10例のAMKL臨床検体について次世代シーケンサーを用いて検討を行った。10例中6例で再発がみられ、5例が死亡例であった。白血病関連163遺伝子を搭載したターゲット遺伝子解析を行ったところ、KIT, SPI1, GATA1, NCOR2, SETBP1, CSF3R, EZH2, TET2, PIK3CG, SMARCA2, SH2B3, GATA1, KRAS, IKZF1などの遺伝子変異がみつかったが、共通性はみられなかったため、AMKLと言ってもheterogenousな疾患と考えられた。 AMKL細胞株で複数の新規薬剤の効果を調べたところ、JAK阻害剤が有望そうであったので、6つのAMKL細胞株(CMK, CMY, UT7, Mo7e, MOLM16, MKPL1)で、cytarabineとJAK阻害剤のシナジー効果について検討した。これまでの検討から、JAK阻害剤はRuxoltinibが最適と考えこれを使用した。通常の液体培養系ではほぼすべての細胞株でシナジー効果がみられたが、我々の開発した骨髄微小環境を模した間葉系細胞(MSC)との3D共培養系では、MOLM16とMKPL1の2種類の細胞株しかシナジー効果を見いだせなかった。細胞周期の解析でもMSCとの3D共培養系はG0/G1細胞比率を増加させていた。現在この2株についてマウスの移植実験で検証中である。現在学会発表と論文作成中である。 また新生児期に肝不全を来し、生体肝移植を行ったが、最終的にRBMK15-AMKL1キメラ遺伝子が検出されたAMKL症例を経験した。PubMedなどでAMKLで肝不全を来した症例について文献検索を行ったところ、同様の症例がこの他5例みつかり、そのすべてにRBMK15-AMKL1キメラ遺伝子が検出された。他のAMKLとは異なりRBMK15-AMKL1キメラ遺伝子陽性のAMKLは母胎内発症しており、その病態が肝不全を来すDown症の重症TAMに類似していると想定された。こちらも学会発表と論文作成中である。
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