研究課題
基盤研究(C)
我々は、小児のコホート集団を対象として視空間注意を惹起するタスクについて、アイトラッカー(視線追跡装置)を用いて行動学的指標の収集を継続している。本研究では、その蓄積されたデータを縦断的に解析することで視空間注意の発達の軌跡を描出し、子どもの認知行動のみならず、注意欠如・多動性障害などの発達障害についても、その神経基盤を明らかにする。さらに8歳ではアイトラッカーと近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)の同時計測を実施することにより、子どもの学習法について脳科学的な裏付けを与える。
注意の持続困難は、注意欠如多動症だけでなく自閉スペクトラム症でもしばしば観察され、神経発達症に合併する代表的な症状の一つである。また連続的な形質を持つため定型発達児にも程度の差はあれ認められることが多く、子どもが日常生活を送るうえで重要な問題となっている。しかしこれを司る視空間注意機構のメカニズムは、小児では十分に明らかにされていない。我々は、2015年より200人以上のコホート集団を対象として視空間注意を惹起するタスクを使用して、2・4・6・8歳時と縦断的にアイトラッカー(視線追跡装置)を用いてデータ収集を継続した。本研究の主な目的は、その蓄積されたデータを縦断的に解析することで視空間注意の発達の軌跡を描出し、子どもの認知行動との関連を明らかにすることである。令和3年度から2年間かけて、以前からの課題に加えて8歳のための課題を、および線2分法・利き手の調査など認知面を評価する様々な検査を実施し、2年間で計163人のデータを取得した。令和5年度は参加者が10歳となり、時間的な制約もありアイトラッカー検査については見送ったが、線2分法・利き手の調査を実施することに加えてWISC-IVによる知能検査を、このコホートの参加者92名に対して実施することができた。この知能検査は、言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標と4つの下位項目からなり、これまで集積したアイトラッカー検査の結果との関連を、この下位項目と詳細に検討することで、本研究の目的を達成できると考えられる。
4: 遅れている
アイトラッカー解析の基本的なプラットフォームを作成するのに時間がかかっていることと、知能検査の結果を含めての解析を計画しているため。
令和6年度も引き続き、残りの参加者の10歳のデータ収集を継続し、知能検査も含めた詳細な認知プロフィールのデータの取得を完了したい。そして、これまで収集したデータとの関連を検証していく予定である。
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