研究課題/領域番号 |
20K08242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
栃谷 史郎 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (90418591)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 母体腸内細菌 / 垂直伝搬 / 環境因子 / 母乳 / 行動 / 神経発達 / 発達障害 / 撹乱 / 養育行動 / 攪乱 / 母体腸内細菌叢 / 腸内細菌叢垂直伝搬 / 脳発達 |
研究開始時の研究の概要 |
母体腸内細菌叢は子にとって重要な周産期環境の1つであるが、子の精神神経発達において母体腸内細菌叢が果たす役割の詳細は未だ明らかではない。研究代表者は周産期マウス母体腸内細菌叢の撹乱が、子の出生後の脳発達に影響を与え、子の行動変化(低活動、空間嗜好性)を引き起こすことを明らかにした(Tochitani, 2016:母体腸内細菌叢撹乱モデル)。本研究においては、周産期母体腸内細菌叢が子の精神神経発達の基盤形成において果たす役割の全容を明らかにする。
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研究実績の概要 |
腸内細菌叢は宿主の生理・病理に関与することが様々な研究から明らかになっている。子の発達にとって、母体腸内細菌叢は重要な周産期母体環境の1つということができる。ただし、子の精神神経発達において母体腸内細菌叢が果たす役割の詳細な全容は未だ明らかではない。研究代表者は妊娠期マウス母体腸内細菌叢の撹乱が、子の出生後の脳発達に影響を与え、子の行動変化(低活動、空間嗜好性)を引き起こすことを明らかにした(Tochitani, 2016:母体腸内細菌叢撹乱モデル)。本研究計画においては、母体腸内細菌叢攪乱が子の脳発達に与える影響やその機構を網羅的に検討し、母体腸内細菌叢が子の精神神経発達において果たす役割を様々な点から明らかにすることを目的に研究を進めている。本年度までに本研究計画において取り組んできた母体腸内細菌攪乱モデルにおける母子の腸内細菌叢解析を行い、両者の腸内細菌叢の時系列的変化に関する詳細な検討を行った。解析について試行錯誤を行いながら進め、一通りの解析を完了した。その後、論文化の過程で、共同研究者から別のデータベースで解析しなおした方が良いという助言を受け、一から解析をし直した。改めてのデータ解析後得た結果、結論には変更はないが、グラフなどの変更が必要であり、研究期間の延長を決断し、論文化のための時間的猶予を得ることにした。現在も早期の論文化のための作業を進めている。 母体腸内細菌叢攪乱が母乳の質の変化、血中メタボローム、脳組織メタボローム解析などの結果、多様な生理的な変化を引き起こす結果を得ている。その生物学的メカニズムを明らかにしようと解析を進めてきた。また、母体腸内細菌攪乱モデルの母親の行動実験の結果、行動変容が起こることが明らかである。こちらも生理的変化と関連付けたメカニズムの推定をおこなっている。これらの結果も論文化すべく、最終的なデータ解析とまとめを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き母子の糞便サンプルにおける細菌叢の時系列的解析により、母体腸内細菌攪乱モデルにおける母子の腸内細菌叢の変遷を明らかにする作業を進めた。腸内細菌叢の時系列的なデータであり、解析方法的に試行錯誤する必要があり、想定以上に時間がかかってしまったが、母体腸内細菌叢が仔の腸内容物に観察される細菌、腸上皮付着細菌の定着や時系列変化に特徴的な影響を与える結果を一通り得ることができた。ただし、論文化のため解析とグラフ作成などによるまとめ作業を行った後に共同研究者から最新の遺伝子データベースで解析した方が良いとの助言を受け、一からもう一度解析やグラフ作成を行った。この点で当初より、大きく予定がずれ込んでしまった。論文は既に第一稿は完成し、2023年度中の発行を目指し、作業を進めている。さらに、これまでの研究で母体腸内細菌叢攪乱モデルにおける母乳の質の変化の検討を行い、腸内細菌叢の撹乱が母乳の質の変化を誘導することを示唆する結果を得ているが、その母乳中に由来する因子を利用した介入により仔の腸内細菌叢の定着がどの程度正常化するかに関する実験結果についても論文化に向けて作業を進めている。 これまでの研究において、腸内細菌叢撹乱により母体生理変化が引き起こされるという結果を得ている。そして、撹乱された腸内細菌叢に起因する脳腸相関により引き起こされる母体内分泌的変化が、観察された母体生理変化の基盤となるという仮説のもと研究を進めている。当面、これまでに得た母体生理変化に関する記述的なデータのまとめと、論文の作成を進めながら、メカニズムを明らかにする解析を進めていきたいと考えている。 これらの過程で、学会発表2件を行い、子の発達における母体腸内細菌叢の働きに関する日本語総説1件、書籍1件を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
母体腸内細菌撹乱モデルの母子間の腸内細菌叢の時系列的解析の論文化への遅れから、研究期間を1年延長させていただいた。早急に論文として、投稿し、成果を発表したいと考えている。母体腸内細菌叢撹乱により引き起こされる母体生理変化の解析についても論文化を進める。まず、論文化のための作業を継続しながら、学会発表などの研究成果発表、追加として必要となる実験を行なっていきたいと考えている。そして、母体生理変化のメカニズムを探索する研究も進めていき、今後の研究につなげていきたいと考えている。
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