研究課題/領域番号 |
20K08270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
黒澤 健司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 臨床研究所長 (20277031)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | エピゲノム / ヒストン / Acetyltransferase / KAT6B / 知的障害 / てんかん / 自閉スペクトラム症 / SET / CREBBP / マイクロアレイ / トランスクリプトーム / エクソーム / 先天異常 / クロマチン / 次世代シーケンサー |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトのエピゲノム修飾の先天的傷害は、さまざまな先天異常疾患および自閉症スペクトラムをもたらす。特にヒストン修飾、クロマチンリモデリング異常は、多臓器にわたる特徴的な症状を呈する。しかし、この疾患群の多様性と共通性の原因は明らかにされていない。一方で、ヒト先天異常疾患との関連が明らかにされていないヒストン修飾因子やクロマチンリモデリング複合体構成因子もある。本研究では、多臓器障害をもつ先天異常疾患症例を対象に、詳細な臨床情報を集積しつつ、網羅的ゲノム解析およびトランスクリプトーム解析を用いて、新規の先天性エピゲノム修飾異常症の同定を試み、その治療戦略の基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
エピゲノムは初期発生とそれに関連した細胞分化を支える仕組みの一つで、メカニズムとして、DNAのメチル化、ヒストンの修飾、クロマチンリモデリングの3つのプロセスをもつ。本研究では、エピゲノムの先天的な変化と疾患発症との関連解明を目指している。研究2年目までに先天的なエピゲノムの変化が希少疾患の発症にかかわることを明らかにしてきた(Murakami et al., 2020; Shono et al., 2022; Enomoto et al., 2022)。 今年度はhistone acetyltransferaseであるKAT6Bの未報告新規のバリアントをもち、自閉スペクトラム症とてんかんを伴う重度知的障害の症例を報告することができた(Nishimura et al., 2022)。KAT6Bは上述のヒストン修飾因子であるが、バリアントの位置と種類によりさまざまな臨床像を呈する(黒澤 2022)。今回の症例は本来のホットスポット(exon 16-18)より上流で、ミスセンス変異としては最も上流に位置するexon 7の変異であった。KAT6Bはバリアントの位置と種類によって臨床像が大きく変化する。今回のKAT6Bの5’側上流エクソンのミスセンス変異は、優性阻害としての効果が予想され、KAT6Bの機能を検討する上で極めて重要と考えられた。 ヒストン修飾因子のさまざまな発症メカニズムを考えるうえで、重要なエビデンスとなった。今後、さらに症例を手掛かりとして、複雑で多様な表現型とヒストン修飾の変化の関連性を検討し、治療への手掛かりを模索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
てんかんと自閉スペクトラム症を特徴とする重度知的障害の症例に、ヒストンアセチル化に関わるKAT6Bの新規バリアントを検出し、ヒストン修飾因子の複雑な機能の側面を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
さまざまな表現型を特徴とする先天異常症例に潜在するヒストン修飾因子の先天的な変化をゲノムないしはトランスクリプトームレベル、あるいは症例によっては全ゲノムシーケンスを併用して、発症メカニズムの全体像を明らかにしてゆく。バリアントの多様性が臨床症状の多様性を規定することがあり、その由来がヒストン修飾因子そのものの機能的な多様性に由来する可能性があるからである。これらを念頭に解析を発展させる予定である。
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