研究課題
基盤研究(C)
本邦で年間8万人に起こる心臓突然死の原因として遺伝性不整脈が大きな割合を占めるが、病因病態の究明により予防法を確立することが出来る。本研究では未だ解決されていない心臓突然死家系の心筋トランスポータ遺伝子の変異に着目する。遺伝子解析によりトランスポータの重要度を推し量ることで遺伝子解析によるリスク予測に反映させるとともに、不整脈発生機序を明らかにして致死的な不整脈を抑制することに役立てる。
QT短縮症候群や早期再分極症候群は、比較的歴史の浅い遺伝性致死性不整脈で、原因遺伝子が数個報告されているものの分子病態は十分に解明されていない。我々は心筋のCa動態やpH恒常性に必須の膜タンパク遺伝子に注目し、これまでQT短縮や早期再分極所見を有する複数の致死性不整脈発症例に変異を見出してきた。現在ある膜タンパクの変異についてはvitro研究のみならず、致死性不整脈発症をvivoで観察するため、CRISPR/Cas9で作成したノックインマウスモデルを使って致死性不整脈誘発性に違いを見出すことができた。今後変異キャリア患者の情報と、vitro研究により解明した膜タンパク変異体の機能異常、vivoでの致死性不整脈誘発性を統合して論文として発信する。一方で別の膜タンパクについても複数症例に変異を見出し、かなり高い浸透率を示すことから強い機能異常をもたらすと推測しているが、現時点では適した機能解析系を構築できておらず、新たな手法の導入が急務である。これら研究を通じて、現在着目している膜タンパクが心臓突然死に関わる新たな機能分子であることを立証する。
2: おおむね順調に進展している
QT短縮症候群や早期再分極症候群は、比較的歴史の浅い遺伝性致死性不整脈で、原因遺伝子が数個報告されているものの分子病態は十分に解明されていない。我々は心筋のCa動態やpH恒常性に必須の膜タンパク遺伝子に注目し、これまでQT短縮や早期再分極所見を有する複数の致死性不整脈発症例に変異を見出してきた。ある膜タンパクの変異はvitro研究を中心に電流低下とCa取込み能の低下を見出し機能喪失型変異であると結論付けているが、これまで致死性不整脈発症を十分に説明できていなかった。今年度は樹立した変異ノックインマウスの心電図記録とペーシングによる致死性不整脈誘発性を検討した。その結果①ホモ変異個体は出生しないこと、②ヘテロ変異個体は多型性心室頻拍が誘発されるが同腹野生型個体では誘発されないことを見出した。しかし安静時心電図では違いが見られず、QT短縮や早期再分極所見は見られなかったため、上記の多型性心室頻拍との関連についてさらに検討を重ねる必要がある。また別の膜タンパク遺伝子については、既報の一過性発現を用いた機能解析系は奏功せず未だ結果を再現できていない。これは着目している膜タンパクの機能を代償する機構が細胞内で働くためだと考えられる。今後は代償する膜タンパクの阻害薬を用いたうえで機能解析系を再構築し、患者で見つけた変異のvitro解析を進める予定である。
vitroとvivoで機能異常を解明した膜タンパクの変異については、患者で見つかった変異体の機能異常と分子機構について整理できつつある。一方で別の膜タンパクの変異については既報の解析系を再現することができておらず、代償的に働く別のタンパクの阻害薬を用いるなどして、膜タンパクの変異機構を明らかにする必要があるかも知れないと考えている。またこれら膜タンパクの変異を患者に見出すために、今後も遺伝子解析を継続して行い、新たに患者・変異の同定を行っていく。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 9件) 備考 (1件)
Circulation Journal
巻: 84 号: 7 ページ: 1193
10.1253/circj.CJ-20-0187
130007864268
Genetics in Medicine
巻: 23 号: 1 ページ: 47-58
10.1038/s41436-020-00946-5
Circulation: Genomic and Precision Medicine
巻: 13 号: 6
10.1161/circgen.120.002911
Circulation
巻: 142 号: 4 ページ: 324-338
10.1161/circulationaha.120.045956
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology
巻: 13 号: 10 ページ: 1165-1174
10.1161/circep.120.008712
Pacing Clin Electrophysiol
巻: 43 号: 8 ページ: 838-846
10.1111/pace.13996
Stem Cells International
巻: 2020 ページ: 1-2
10.1155/2020/8765895
http://www.ncvc.go.jp/omics/research/project02.html