研究課題/領域番号 |
20K08438
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
星賀 正明 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (90309154)
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研究分担者 |
鈴木 哲 関西大学, システム理工学部, 准教授 (50306502)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 心不全 / 非接触 / 生体信号 / 頸静脈波形 / 心房細動 / 機械学習 / 右心不全 / 右心機能 / うっ血 / 医工連携 / 人工知能 / マイクロ波 / 自動診断 |
研究開始時の研究の概要 |
マイクロ波レーダーは、研究分担者の鈴木が以前から非侵襲で行える生体信号モニタリングの手法として以前から開発に携わってきた。一方、研究代表者は、心不全診療に携わり従来の診断法では右心機能評価が不十分である事を痛感していた。本研究は、これまでの研究と循環器日常臨床から、右心機能の有用な評価法をニーズとして探していたところに、マイクロ波レーダーを用いた非接触による生体信号モニタ技術というシーズに出会い、共同研究を開始したプロジェクトである。本研究は、非接触の状態で頸静脈波形を可視化する、という独創的で、今回さらに単一センサで自動診断化を目指すものである。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で、頸静脈波形の従来法に比較したマイクロ波レーダ法の検証は終えた段階であった。この方法の臨床応用のためには、頸静脈波形記録の意義を臨床的に多く検証することにエフォートをかけてきた。前年度では、心房細動における頸静脈波形の臨床応用について検証を行ってきた。頸静脈波形パターンにおけるy谷優位が心臓拡張不全に繋がる事を示した。本年度では心臓手術後の頸静脈波形パターンの変化を大動脈弁狭窄症(AS)手術患者において、検証した。手術の適応評価で入院したAS患者80名に頸静脈波形記録を行い、そのうち約半数が期間内に手術を受けた。外科的大動脈弁置換術(SAVR)と経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の割合は1:3程度であった。手術後早期に頸静脈波形を再度記録したところ、SAVRは約70%にy谷優位を認めた一方、TAVI後は約6%にとどまり、有意差を認めた。現在学会発表及び英語論文発表準備中である。 一方、これまで主に心不全患者において頸静脈波形記録が700例以上あり、心電図、心臓エコーとのデータセットがある。心不全患者の頸静脈波形記録のタイミングとしては、心不全急性期を治療後の慢性期に記録することが多い。頸静脈波形データを臨床的に活かすには、病態の解明、慢性期治療法の選択、心不全再発の予防・予知などに通じる必要がある。研究期間が長くなり、長期予後のデータが蓄積しており、心不全再発時の臨床的特徴が、y谷優位であると肺うっ血が主体のクリニカルシナリオ1である事が少ないことを見出した。頸静脈波形記録が以後の心不全管理における予測因子になる事は、臨床応用の意義と考える。この研究過程において構築している心不全レジストリを用いて、論文および学会報告を行っており、本年度においても研究成果がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度からの心房細動のカテーテルアブレーション前後における頸静脈波形の変化については、英語論文は完成しており、論文投稿を行っており、採択に向けて注力しているところである。計画に遅延を生じた原因としては、新型コロナ感染症に対して2023年5月からの緩和措置がなされたものの、医療機関周辺では感染対策は継続して、学会活動、研究分担者、研究支援者との連携に制限は存在し、また学会活動においても少なからず制限が生じていた。また、頸静脈波形の機械学習に関しての進行は研究支援者との連携が十分に進まなかった。 上述したように、その間に頸静脈波形記録及び必要な医療情報の蓄積は行なっており、これから成果を学会、英語論文で発表し、また大学のホームページや市民講座等で発信していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、当医療機関において、1) 心房細動患者のカテーテル治療前後約200名、2) 急性心不全で入院し、急性期治療を経過後慢性期安定した患者約600名、3) 大動脈弁狭窄症患者の手術的介入(開心術による人工弁置換術後及びカテーテルによる大動脈弁留置術後)の前後80名の頸静脈波形及び医療情報を集積している。特に上記2) に関しては、これからも同様のデータ蓄積を行い、年間約200名の上乗せが期待できる。 一方、今までのデータに関して、3編の核心的論文を2024年度に発表する予定である。また、蓄積した頸静脈波形パターンと心電図または心エコーのデータセットを機械的学習を行う準備段階である。今年度はこのようなAI(人工知能)による解析を本格的に進めていき、目標として、心電図波形により頸静脈波形パターン(例えばx谷優位かy谷優位か)を予測するモデルを構築したいと考えている。このモデルにより、頸静脈波形記録手法の備えがない環境においても、一般的な12誘導心電図波形から頸静脈波形による得られる情報を予想することが可能になれば、臨床応用に資すると期待される。
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