研究課題/領域番号 |
20K08458
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
牧野 伸司 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 准教授 (20306707)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 小型魚類 / 先天性心疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
メダカなどの小型魚類では拡散により初期胚の栄養供給を行うため、胎生致死となる心臓血管系の異常も哺乳類に比べると長い期間生存可能である。卵が透明であるために生体外から心臓・血管形態の観察が可能である。すなわち本来は産まれてくることのない心臓・血管形態異常をもつ生物が、どのような3次元構造をもって発生段階を経ていくのか、生きたまま顕微鏡下に観察する。心臓・血管腔形成不全のメダカを出発点に4次元的イメージを確立してADAMTS切断抵抗性バーシカンノックインマウスと同時に解析を行う。 先天性心血管疾患は、バーシカンの異常により前駆細胞の移動が障害されて表現型の多様性が生まれることを証明する。
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研究実績の概要 |
動脈管は胎生期に胎盤を経由した血液を、肺循環を介さずに直接、体循環へ送り込むために肺動脈と大動脈とを連結しているバイパス血管である。胎生期より血管組織構築の変化が生じることで、出生後に動脈管が閉塞する。動脈管閉塞の制御機構の一つとして血管内皮細胞下への細胞外基質貯留と中膜平滑筋細胞の遊走が重要である。 我々は心・血管腔の形成に異常をもつメダカ突然変異体を用いて、血管腔の形成機序を解明したいと考え、化学変異剤のENUを用いた心臓前駆細胞移動に異常を呈するメダカスクリーニングに世界に先駆けて成功した。 Linear Heart Tube:lht ホモ変異体は、心臓・血管腔が形成されず、心臓が一本の管の状態で発生が停止する表現型から命名を行った。この表現型の原因は、心臓・血管系の前駆細胞が移動できないことによる奇形であることを発見した。このような表現型を呈する突然変異体動物は、これまでに報告がなく原因遺伝子は、バーシカンというプロテオグリカンである。この突然変異体の原因遺伝子のバーシカンと表現型を結ぶ分子機序解明を行うことで、「心臓前駆細胞の移動」に伴う先天性心疾患の表現型多様性を生じる成因を紐解くことができると考えて研究を進めている。プロテオグリカンは循環器系前駆細胞の細胞外マトリックスの主要成分であり、多様な分子群を結集し組織構築に寄与することを発見した。バーシカンは細胞外マトリックスで生物活性など持たない物理的な支えと考えられてきたが、我々の実験成果から細胞移動を能動的に制御して心臓血管系の正常な形成に寄与していることを解明した。ADAMTS(バーシカン分解酵素)切断抵抗性バーシカンノックインマウスによって、大動脈縮窄症と同時に発症してくる先天性心疾患に共通する心臓前駆細胞移動の異常に伴う先天性心疾患の多様性が生じる機序を統合的に理解することを考えて研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
3年間に及ぶ新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、保健管理センターの本務である感染防止対策や新型コロナウイルス患者対応、ワクチン接種などの業務が多忙となり、研究の時間が大幅に減少してしまったことによる。緊急事態宣言の影響で研究を実施できない期間があったことなどによる。
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今後の研究の推進方策 |
動脈管閉鎖の制御機構、特に内膜肥厚にかかわる細胞外基質を明らかにする。内膜肥厚形成の初期変化は細胞外基質貯留と中膜の平滑筋細胞が血管内腔面に向かって遊走するタイミングの分子機序について究明する。中膜平滑筋細胞が血管内腔面に向かって遊走する距離の違いは、同一遺伝子の変異による大動脈縮窄症の重症度の多様性に結びつくと考えられる。メダカで可視化された4次元的イメージを確立してADAMTS切断抵抗性バーシカンノックインマウスと同時に解析を行い普遍的な現象であることを証明していく。先天性心疾患の重症度の多様性に至る機能解析を生体内で行うことができる状況である。ADAMTS切断抵抗性バーシカンノックインマウスの動脈管の解析を進めている状況である。この解析を通して大動脈縮窄症に合併する心室中隔欠損、大動脈二尖弁、心房中隔欠損などの病 態形成過程の知られていなかった共通するメカニズムを解明していく。動脈管の内膜肥厚形成を含め、解剖学的閉鎖の分子機序を明らかにすることによって、新たな治療法の開発を目指す。
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