研究課題/領域番号 |
20K08466
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荷見 映理子 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70599547)
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研究分担者 |
藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30422306)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肥満 / S100A8 / AREG / 心臓突然死 / S100a8蛋白 / 心不全 / 心房細動 / サイトカイン / AI |
研究開始時の研究の概要 |
我々は肥満脂肪細胞でS100A8蛋白の発現が増加し、炎症細胞をリクルートさせることを見いだし、S100A8が脂肪組織炎症を惹起する新規アディポカインである可能性を示唆する結果を得ている。S100A8は脂肪以外にも心臓血管・腎臓・肺・肝臓にも発現し、各臓器への炎症を惹起することが我々の行った研究であきらかとなっており、これらの結果を基に、本研究ではS100A8シグナルを介して心血管に生ずる慢性炎症や各臓器での炎症が相互に関連し、心房細動や心室細動などの不整脈に寄与する可能性について検討する。さらに、S100A8シグナルへの介入による不整脈領域における新規治療戦略の基盤的検討を行う。
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研究実績の概要 |
本研究はメタボリックシンドローム及び心血管疾患におけるS100A8の機能を明確にし、さらにはS100A8が組織炎症を惹起する分子機構、S100A8を介するシグナルを明らかにすることで新規治療を開発することを目的としている。我々が作成した脂肪細胞特異的S100A8ノックアウト(KO)マウスを用いて、高脂肪食負荷を行い、野生型マウスと比較してインスリン抵抗性に差が認められた。また、両者の脂肪組織から採取した非成熟脂肪細胞分画のFACAS解析を行ったところ、M2マク ロファージ に有意差が認められた。これらの結果から、脂肪細胞から分泌されるS100A8蛋白が脂肪組織の炎症を制御し、インスリン抵抗性に関与している可能性が示唆された。 さらに、KOマウスと野生型マウスの脂肪組織から 離した脂肪細胞からRNAを抽出し、RNA sequenceを行ったところ、S100A8のシグナル下流に位置すると考えられる因子が同定された。この因子は脂肪細胞の分化に関する因子として報告されており、S100A8が脂肪細胞の分化を制御することでも、インスリン抵抗性に関与する可能性も示された。脂肪細胞特異的S100A8KOマウスの作成 繁殖に成功し、KOマウスの脂肪組織の解析をRNAの発現やファックス解析等行うことで、S100A8の脂肪細胞やマクロファージへのシグナルに関与する因子を同定することができた。 また、KOマウスのインスリン抵抗性が改善することが明らかになった。また、S100A8がマクロファージに作用し、心臓マクロファージからのAREG分泌が亢進することが、我々の研究であきらかとなlっていたが、このAREGがマウスの右室圧負荷モデル下で、完全房室ブロックによる突然死を抑制することを見出し、論文での発表を行った(Nature Com.2021.12:1910)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに、右室負荷モデルを用いた解析で心臓マクロファージのAREGは突然死の発症を抑制していることを発見することができ、これらの結果を報告している(Nature Com.2021.12:1910)。 さらに昨年より継続して、下記の研究を行っている。S100a8 floxedマウスとAdiopnectine-Creマウスを交配し、脂肪細胞特異的S100a8ノックアウトマウスの作製し、これらへの高脂肪食負荷により脂肪組織へのM1マクロファージの抑制、炎症性サイトカインの上昇、インスリン抵抗性悪化を確認した。このことから、S100A8は炎症細胞の遊走を惹起させ、慢性期には炎症細胞を抑制し、炎症性サイトカインの発現を抑制することで、脂肪組織において保護的な作用をする可能性が示唆された。また、肥満マウス(ob/ob)の肝臓・肺においても、S100A8はRNAの高発現であることが確認できており、肥満によりS100A8は脂肪組織だけでなく、遠隔臓器でも炎症を惹起する可能性が示唆される。 さらには、665人を対象としたヒト血清を用いた臨床研究において、肥満患者(BMI>25)、糖尿病合併患者で血清中のS100A8が有意に高値となることが明らかと なり、死亡率や心血管イベント発生との関係についての解析結果をもとに、結果報告として論文作成を行っている。 また、臨床試験も本研究から発展させて行っており、後ろ向き観察で収集した心電図を用いて心疾患を診断するAIを構築済みであり(AUC0.9)、心電図から心疾患(左室収縮能低下、弁膜症、心不全)を前向き観察研究として約100名に実施しており、肥満患者においてもこれらの疾患を比較的高い精度(AUC0.8前後)で診断することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.現在までの実験解析によりS100a8が脂肪組織にマクロファージの遊走を促すものの、炎症反応の改善が見られることが明らかとなり、脂肪細胞特異的S100a8ノクアウトマウスの高脂肪食負荷で脂肪組織でのM1マクロファージが野生型と比較して増加していること、マクロファージの炎症性サイトカイン(IL-1β、TNFα)の抑制されることを確認した。さらには、インスリン抵抗性の改善も認めた。このことからS100A8蛋白は脂肪組織炎症の保護的に作用し、これによりインスリン抵抗性改善させる可能性が示された。 2.脂肪組織炎症において脂肪細胞でS100a8の発現を誘導する刺激の分子の探索を行っており、すでに脂肪細胞とマクロファージの共培養で遊離脂肪酸やサイトカイン刺激が脂肪細胞からのS100a8の発現を上昇させることを予備実で明らかとしている。さらS100a8の発現を制御するシグナル経路の解析をすすめ、特に、マクロファージでのS100a8受容体の同定を行う。 3.また、RNA sequenceの準備を進めており、S100A8のメタボリックシンドロームのみならず、心血管への影響を遺伝子レベルでの解析も行う予定である。 4.これらのデータをもとに論文作成を行い、投稿予定としている。
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