研究課題/領域番号 |
20K08547
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
石井 晴之 杏林大学, 医学部, 教授 (30406970)
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研究分担者 |
田澤 立之 東京医科歯科大学, 学生支援・保健管理機構, 教授 (70301041)
竹内 志穂 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (70422277)
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (80207802)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肺胞蛋白症 / 骨髄異形成症候群 / トリソミー / ドライバー遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
肺胞蛋白症の90%以上は抗GM-CSF自己抗体陽性の自己免疫性PAPだが、抗GM-CSF自己抗体陰性の続発性PAPは8%程度とかなり稀な疾患である。続発性PAPの6割は骨髄異形成症候群に合併した続発性PAPで著しく予後不良である。この疾患では1番染色体転座と,8番染色体トリソミーに骨髄染色体異常が集中しており、これらの染色体にはMYCやTETなどの癌化に重要な遺伝子があり、発症との関連が示唆される。 本研究では10例のMDS-SPAPにおいて全エクソーム解析を行い、変異のあるドライバー遺伝子を絞り込み、ターゲットシークエンスによりさらに30例以上についてターゲット遺伝子変異を確定する。
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研究実績の概要 |
我々は、1番染色体転座と8番染色体トリソミーに骨髄染色体異常が集中していることを見出し、これらの染色体にはMYCやTETなどの癌化に重要な遺伝子をみとめていた。そこで、MDS-SPAP症例のExome sequenceの解析を開始し、新たに解析できた1例にてNKcellのCSF3R, 白血病化に関連しているTET2: frameshift deletion, ASXL1: frameshift insertion, そして転写に関わる調整因子(クロマチン合成蛋白)のBCOR: stop gain, frameshift insertionが検出された。これまでにTarget sequencingを行った2例においては、14番アレル不均衡、20番長腕部分欠失、1番染色体異常などが検出されており、ミスリード0.05から有意な部位の可能性が示唆された。 そのため2, 3年次には、新たなMDS-SPAP症例の臨床検体を追加し、合計13例のMDS-SPAPにおいてPBMCのエクソーム解析、およびtargeted sequencing解析したデータを分析した。スプライシング因子U2AF1においては13例中4例すべてにnonsynonymous SNV異常がみられていた。またエピジェネティック制御因子ASXL1も4例, 転写制御RUNX1は3例, コヒーシン複合体STAG2も3例に異常をみとめていたが、frameshift insertion, frameshift deletion, stop gain, non-frameshift insertion,など遺伝子変異は様々であった。他、TET2やZRSR2なども遺伝子変異をみとめていた。今後はMDS-SPAPに関連する候補遺伝子の同定に向けた分析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床情報および臨床検体の収集に時間を費やしてしまったが、3年間でこの超稀少肺疾患を13例データ解析する準備が整った。我々の診療研究ネットワークの構築により情報収集が促進できたことが大きい。 63例のMDS-SPAPでの予後解析では、診断後の生存期間中央値は17か月と著しく予後不良であり、造血幹細胞移植施行例においてもMDS-SPAP診断後の生存期間中央値が20か月と厳しい状況であった。造血幹細胞移植施行の13例では移植時の呼吸状態やMDS自体も様々であったが、移植後GVHDや感染症合併にて予後不良になっており造血幹細胞移植への導入タイミングなども大きな課題と思われる。またMDS-SPAP 63例における染色体異常は、高率に8番染色体と1番染色体にみとめられ、8番染色体異常の9割以上はtrisomyである一方、1番染色体は6例のトリソミー以外にも転座や欠失など多彩な異常をみとめていた。 その63例のうち、臨床検体として末梢血単核細胞でのエクソーム解析は13例で分析できた。スプライシング因子U2AF1においては13例中4例すべてにnonsynonymous SNV異常がみられていた。またエピジェネティック制御因子ASXL1も4例, 転写制御RUNX1は3例, コヒーシン複合体STAG2も3例に異常をみとめていたが、frameshift insertion, frameshift deletion, stop gain, non-frameshift insertion,など遺伝子変異は様々であった。これらのデータをMDS自体の遺伝子異常と比較することでドライバー遺伝子の同定を検討できる準備はできたが、少しでも多くの臨床検体を収集してデータを増やしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
この3年間での研究活動を通じて、本研究の目標であるMDS-SPAP発症に関連するドライバー遺伝子同定のための情報収集を進めることはできた。これらの解析データから発症関連の候補遺伝子になりえるものを統計解析していく方針である。検出されたMDS-SPAPからの遺伝子異常と、臨床項目から予後予測因子になりえるものを主成分分析にも解析していくが、解析データ数が少ないため、候補遺伝子や予後に関連する傾向を見出せるかどうかかもしれない。そのため、可能なかぎり新たな症例をリクルートすることで、情報および臨床検体を収集できるような活動は続けていく。
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