研究課題/領域番号 |
20K08575
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 匡 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10596993)
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研究分担者 |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 教授 (10226681)
田島 健 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50384102)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 加熱式タバコ / 慢性閉塞性肺疾患 / 喫煙 / 肺気腫 / プロピレングリコール / ヒト小気道上皮細胞 / 新型タバコ / グリセロール / アポトーシス / 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / DNA傷害 / マイクロアレイ解析 / 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) |
研究開始時の研究の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる呼吸器疾患である。一方、近年本邦において急速に普及している加熱式タバコの毒性に関する評価は定まっておらず科学的実証の社会的ニーズが高まっている。本研究では、従来のタバコ煙に対する肺傷害の解析システムを用いて、加熱式タバコと従来のタバコ煙曝露との比較検討を行い、長期的な加熱式タバコ使用の呼吸器系に与える影響についての新しいエビデンスを創生することを目的とする。
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研究実績の概要 |
加熱式タバコから生じるエアロゾルは従来の燃焼式タバコ煙よりも既知の有害物質の含有が少なく安全な製品と考えられ、若者を中心に急速に普及しているが、主成分は電子タバコと同様にプロピレングリコールとグリセオールであり、電子タバコにおける既知の知見から安全性には疑問が残る。また、長期間曝露による呼吸器系をはじめとする生体への影響は不明である。そこでわれわれは、従来使用していた慢性タバコ煙曝露に関する肺傷害の解析システムを加熱式タバコに応用し、加熱式タバコの長期曝露が生体に与える影響について検討を行った。具体的には、マウスにIQOSエアロゾルを6カ月間曝露させた結果、燃焼式タバコと同等の肺気腫を生じ、その機序としてアポトーシスが深く関与していることを見出した。さらに、IQOSエアロゾルの主要成分であるプロピレングリコール(PG)やグリセロール(Gly)をヒト小気道上皮細胞(SAECs)に曝露したところ、とりわけPG曝露において、SAECsに対するDNA障害や細胞増殖の抑制、さらにアポトーシス誘導性が明らかとなり、それらはCOPD患者由来のSAECsにおいてより強調されることを見出した。 またわれわれは、マウスへの加熱式タバコエアロゾル曝露実験において、マウス肺のマイクロCTによる時系列変化を観察しているが、加熱式タバコと燃焼式タバコの肺気腫形成のタイムコースに相違がみられており、これらを詳細に解析することで、近い将来臨床的に問題となることが懸念される加熱式タバコの長期使用による肺気腫の発症予想と対策に寄与する結果が得られるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題のうち、マウスに対する慢性タバコ煙および加熱式タバコエアロゾル曝露実験に関しては、加熱式タバコによる肺気腫形成機序の詳細な解明を行い、すでにAmerican Journal of Physiology Lung Cellular and Molecular Physiology誌に論文が掲載となっている。さらに、ヒト小気道上皮細胞を用いたin vitro研究についても、プロピレングリコールによるヒト小気道上皮細胞に対する傷害性という新規知見が得られ、Respiratory Research誌に論文発表をすることができた。一連の実験を支えているタバコ煙曝露装置SG-300については、製造元である柴田科学との連携が継続され、定期的なメンテナンスを実施することができており、実験を計画的に進捗することができた。以上の理由から本研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で得られたこれまでの結果から、IQOSをはじめとする加熱式タバコの長期使用にともない、従来のタバコと同様の肺気腫病態が生じることが示唆されるが、肺気腫に至るメカニズムやタイムコースは従来のタバコと加熱式タバコでは異なる可能性が考えられる。今後、マウスを用いた曝露実験を追加施行し、マウス肺組織の詳細な時系列解析を行うことで、加熱式タバコによる肺気腫の発症様式が燃焼式タバコとどのように異なるのかを明らかにし、さらに、これまでのin vitro研究に基づき、気道上皮細胞に焦点を当てた詳細な解析により、肺気腫発症メカニズムの違いの解明を目指す。
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