研究課題/領域番号 |
20K08597
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
清水 芳男 順天堂大学, 医学部, 教授 (50359577)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 血液透析 / リフィリング / リンパ管輸送 / 運動療法 / リンパ管 |
研究開始時の研究の概要 |
血液透析では血漿を濾過することにより、余剰体液が除去(除水)される。この間、間質液が血液循環へ戻るリフィリングにより血圧が維持される。リフィリングは、間質液のリンパ管からの吸収・輸送によって行われる。リンパ管の吸収・輸送能力は、運動や電気刺激などの外的刺激で上昇することが知られている。透析中に運動・下肢マッサージ・低周波電気刺激などの外的刺激を行うことにより、リフィリング速度を意図的に変化させることが可能であるかを検証し、血液透析中に生じる循環血漿量減少性ショックを防止する新しい方策を開発する。
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研究実績の概要 |
透析患者は血中の尿毒症性物質を拡散により同時に過剰の体液を濾過によって除去される。体液は血液から除去できないため、1回の透析における水分の除去(除水)量は、透析後の設定体重の5%未満が望ましいとされる一方、食事や飲水による透析間の体重増加をこの範囲に収められない患者も存在する。過剰な除水は循環血液量を減少させ、ショックを生じさせる。1回の透析での除水可能な量は患者によって異なり、間質液が血管内に戻るリフィリングという現象に規定される。リフィリングは間質から直接血管内に間質液がい移行するのではなく、リンパ管から間質液が吸収され胸管を通じて静脈系に還流されることが明らかになった。我々はリフィリングの効率が透析患者の除水限界を規定するという仮説を構築し、リフィリングの相違は、患者のどのような因子によって生じるかを検討した。リンパ管のリンパ液輸送システムは、血管系のように心臓に対応する能動的なポンプが存在しない。リンパ管は自身の蠕動運動と周囲の筋肉の収縮拡張を利用することによりリンパ液を輸送する。透析患者の生活の質の向上や日常生活の活動性を維持するために、透析中に運動療法を行う施設が増加し、ガイドラインも策定されている。我々は透析中に足漕ぎ式のエルゴメーターにより運動を行うことによって、筋肉の収縮拡張によるリンパ管輸送機能の変化を透析中回路内血液のヘマトクリットをモニターし、循環血液量(BV)を測定する機器を使うことにより、検討した。運動開始直後からBVは著明に減少したが、有意な血圧の低下は見られず、運動終了後からBVが徐々に増加した。これは運動に必要な酸素を供給するため、血液が筋肉へ移行し、その後リフィリングが生じることが示唆された。一方、患者高齢化の進行により、ほとんどの患者が透析中に運動療法を行うことが出来ず、エルゴメーターによる運動に代わる方法を採用する必要が感じられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の透析患者の全体の平均年齢が69.9歳であり、血液透析導入時の平均年齢は71.4歳と腎不全医療は高齢者医療の状態である。研究担当者が勤務する施設は、居住者の平均年齢がさらに高齢になっている地域の3次救急対応の大学病院であり、透析患者のほとんどが、他施設で加療中に発症した重症疾患や外傷患者である。このよう状態の患者さんでは、負荷にのかかったエルゴメーターを15分程度漕ぐということは、無理な状況であった。透析患者は進行した慢性腎臓病患者であり、心血管系のイベント経験者や脳血管障害を併発している方が多かった。通院している患者も数名いるが、運動療法を行うに十分なADLが保たれているとはいえない状況あるいは諸事情により、日常生活を在宅で行うことが難しく大学病院へ通院している方であった。また、終息に向かいつつあるCOVID-19感染症の影響も少なからず残っている。また、院内感染の防止が強化されたため、エルゴメーターの使用に関しても制限がかかっていた。研究の計画段階では、比較的若い患者も存在したが、現在はADL低下のみならず、認知症の進行により研究の意図をご理解いただけない場合や同意書にサインをいただけない経験も多々存在した。 施設的な問題も重なった。足踏み式エルゴメーターを2台導入したが、BV計は1台だけ導入された透析管理システムに対応するものを設置することができたが、他の透析管理システムは別のメーカー製であり、同社製のBV計はカタログ上存在するものの、実用に対する調整が難航しており、当初の予定より導入が遅れていた。スタッフの面は、看護師の腎臓リハビリテーション講習も終了しており、リハビリテーション科の理学療法士とも定期的なカンファレンスを行い、患者さんが研究参加いただければ、スムーズに研究を行える状況にあったが、安全を担保した状態で研究が行える方をリクルートできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、研究を行う人的体制は整っていたが、研究に参加いただける患者さんをリクルートできなかったため、研究の進行が遅れた。この状況を改善するために3つの方策を考案した。 ①ADLが保たれた患者さんの研究参加促進:入院加療の透析患者さんは重症者が多いのが研究者の在籍施設の特徴だが、血液透析に必要な内シャント(動静脈吻合部; AVF)の狭窄や閉塞を他施設での治療中に生じた患者さんに対し、カテーテルによる血管内治療(PTA)を行っている。多くの患者さんは自力で通院可能かつ研究の目的・内容を理解可能と考えられるため、PTA加療を目的とする患者さんに研究参加をお願いする。PTAの施行例は年々増えているため、研究参加数を増やすことが可能になると思われる。 ②BV計の導入機器増加:研究申請前から、病院の施設管理部署に対してBV計の導入を要請していた。BV計の実用化が出来ていなかったメーカーからようやく販売が開始され、研究者の在籍施設に9台導入される。すでに血液浄化療法センターの医師・看護師・臨床工学技士に対する説明も行われており、近日中に新しいBV計の使用が開始可能な状況である。 ③エルゴメーターに代わるリンパ管への刺激法の導入:入院透析患者のほとんどが、エルゴメーターを使えないが、この状況は現在の透析医療の状況を反映ないし先取りしていると思われる。エルゴメーターに代わり筋肉を動かす方法としてEMS(electrical muscle stimulation)が行われている。EMSを患者サービスの一環として行っている透析施設も増えている状況である。また、腎臓リハビリテーションガイドラインにも記載があるため、ADLの低下した患者に対し、禁忌となる状態でなければ、EMSを施行下に透析を行い、除水状況とBVの変化について検討する。EMS機器をは導入済で被験者に使用する前に研究者間でテスト中である。
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