研究課題/領域番号 |
20K08622
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
三浦 惠二 藤田医科大学, 保健衛生学部, 講師 (20199946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 自己抗体 / 血管炎 / AECA / 自己抗原 / 全身性エリテマトーデス / 自己免疫性腎炎 / 腎炎 / 抗血管内皮細胞抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性腎臓病につながる自己免疫性腎炎を対象にした研究です。自己免疫性腎炎の患者血清中には血管内皮細胞の表面に結合する抗体(AECA)が存在することが知られていますが、何に結合しているかは不明です。 私たちは、AECAの抗体価を測定のための新たな方法としてCSP-ELISA法を独自に開発(2018年特許成立)し、その後、ループス腎炎の活動性との関連を検討してきました。しかし、AECAが結合する自己抗原複合体の全体像は不明のままです。本研究では、この複合体の全容を解明し、病態の把握、慢性腎臓病の早期発見や治療効果の判定を可能にする新たな検査法の確立を目的としています。
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研究実績の概要 |
研究課題1および2年度の目標としては、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者で腎炎症状(ループス腎炎)を呈する患者を対象に、我々が開発したCSP-ELISAを用いた抗血管内皮細胞抗体(AECA)の測定で強陽性となる患者を特定し、その患者血清を用いて細胞表面上の標的自己抗原の同定を行うことであった。 ループス腎炎患者14例の血清を用いてCSP-ELISAでAECAを測定したところ、3例の強陽性となる患者を特定し、その血清を用いて免疫沈降実験を行った。まず、血清からMelon Gel IgG Purification Kitを使用してIgGを精製した。その後、Dynabeads epoxyビーズにIgGを固相化し、そこに臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)由来の膜タンパク可溶化画分を反応させ、洗浄後、IgGに結合しているタンパク質を回収した。その試料をSDS-PAGEで分離し、銀染色およびNeutrAvidin-HRPを用いてビオチン化されているタンパクを検出した。HUVECから調製した膜タンパク画分は、予め細胞表面タンパクをビオチン化しているため、ビオチン化が確認されると、それは細胞表面に存在していたことが確認できるためである。 免疫沈降実験の結果では、還元条件で、60kDaおよび110kDa, 120kDa付近に患者特異的なビオチン化されているバンドが確認できた。しかし、銀染色では微かなバンドが確認された程度であった。質量分析で確実なシグナルを得るためには、銀染色ではっきりとしたバンドが確認できることが必須であるため、免疫沈降の条件検討を行っている。またこれまでの膜タンパク調製法では細胞の破砕と膜タンパクの回収率に振れが大きく、調製法に問題があることが判明したため、超音波処理も含めて調製法の確認を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者血清を用いたCSP-ELISAでは、抗血管内皮細胞抗体の検出は再現性が取れているため、問題ないと判断できる。しかし、免疫沈降では患者血清特異的な標的自己抗原の回収が十分にできていない。CSP-ELISAと免疫沈降における抗原抗体反応には大きな違いはないと考えられる。しかし、違う点としては、ELISAカップに固相化されている自己抗原に自己抗体IgGが反応するのに対して、IgGが固相化されているビーズに対して自己抗原を反応させている点である。しかも後者の場合、自己抗体は極一部であり、関係ないIgGがたくさん存在している状態である。さらに、自己抗原が大きな複合体分子であった場合、IgGの固相化の密度も大きく影響することも考えられる。そのため、免疫沈降の方法自体、さらに条件検討が必要である。また、反応させる膜画分の中の自己抗原あるいはその複合体についての情報、すなわち分子量などについて確認することも必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
患者血清中にある自己抗体が標的とする自己抗原を同定するためには、質量分析で検出することが必須である。そのためには、免疫沈降法により銀染色で検出できる量まで回収する必要がある。CSP-ELISAの系で自己抗体が検出できることは確実であるため、免疫沈降法での回収率を高めるために、いろいろな条件検討あるいは、方法を変更・改良する必要がある。1つは現状の調製法による膜画分の成分の振れが起こっている可能性が考えられるため、細胞の超音波による破砕条件、可溶化のステップなどの検討を予定している。 これまでは自己抗原あるいはその複合体についての情報が得られていなかった。そこで、可溶化抗原は分子量がどのくらいのタンパクに抗体が結合しているかを確認すること、またHUVEC以外の細胞でタンパクの発現データがわかっている細胞を用いてCSP-ELSIAを行うことなどで、標的自己抗原の候補となるタンパク質を絞り込むことを予定している。
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