研究課題/領域番号 |
20K08712
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
三木 浩和 徳島大学, 病院, 講師 (50511333)
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研究分担者 |
南川 丈夫 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 准教授 (10637193)
高成 広起 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 准教授 (70723253)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アミロイドーシス / ラマン分光法 / 心臓アミロイドーシス / AL / ATTR / ALアミロイドーシス |
研究開始時の研究の概要 |
全身性ALアミロイドーシスは、疾患頻度が少なくかつ非特異的な臨床症状を主訴とするため、早期での鑑別が困難な造血器疾患である。またALアミロイドーシスは、本邦で最多の病型であるが診断のためには、生検検体の特殊な免疫染色や質量解析などを要するため、確定診断までに多大な手間と時間を要する。従って治療開始の遅れとともに生命予後の増悪をもたらしており、特に心アミロイドーシスは予後不良である。本研究では、ラマン分光法を用いた無染色組織イメージングを基軸とし、患者検体を用いてALアミロイドーシスの早期診断法の新規開発を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究では、難治性かつ診断に時間を要する造血器疾患の代表としてALアミロイドーシスを挙げ、ラマン分光法を用いた迅速な新規診断法の開発を目的とし、特に心臓アミロイドーシス(AL, TTR)の早期診断法の確立を試みる。AL,AA,TTRアミロイドーシスと診断されている患者の病理標本から薄層標本を作製し、ラマン分光法を用いて解析した。対象患者は11例で、男性8例、女性3例、年齢49-82歳(中央値70歳)、AL8例、TTR2例、AA1例、アミロイド浸潤臓器は、心臓5例(AL3例、TTR2例)、腎臓2例、胃2例、直腸2例、皮膚3例、まずCongo red染色陽性かつ偏光顕微鏡で緑色屈折をきたす部位を同定し、同部位を未染色サンプルで確認して、ラマンスペクトル解析を行った。複数の症例、複数の臓器、複数のアミロイド前駆蛋白で、Congo red 染色陽性部位に1680 cm-1付近にラマンピークを認めたが、Congo red陰性部位には、ピークを認めなかった。このピークに関しては、過去の検討からβシート構造に由来している可能性がある。 令和4年度の研究成果としては、心アミロイドーシスにおけるALとATTRの判別が可能かどうかについて、主成分分析(principal component: PC)を用いて検討した。主成分分析および解析に要する時間は5-6時間であった。心ALアミロイドーシス標本のCongo red陽性部位、心ATTRアミロイドーシス標本のCongo red染色陽性部位はPC1×PC8で鑑別が可能であり、ROC曲線でも有意差を認めた(AUC 0.863, sensitivity 0.75, FPF 0.1154)。以上からラマン分光法を用いたアミロイドーシスの迅速病型診断は有用であり、特に心臓アミロイドーシス(AL, ATTR)の鑑別に関して新たな診断法として応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心臓のAL、ATTRの鑑別に関する検討は順調に進んでいるが、ラマンタグ抗体を用いて微弱なラマン散乱光を増強する実験や真核生物における細胞内構造、具体的には細胞内器官(ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体など)の形状や歪みなどの可視化を試みる実験に関しては、やや遅れていると評価した。進捗が乏しく2023年度に遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
Congo red染色以外のアミロイド染色用色素であるダイレクトファーストスカーレットやチオフラビンTなどを用いて、前述の薄層標本を染色し、異なる試薬で染色した同一アミロイドーシス検体間の比較によりALアミロイド線維に特異的な変化をラマンスペクトル解析にて検討する。今回主成分分析で得られた相違(心臓AL、心臓ATTR)に関しては、まだ症例数が少ないこともあり、症例数を蓄積し、再現性を確認する必要がある。また今回得られた主成分分析結果からPC8が意味するものが何なのか蛋白構造解析なども検討する。そしてCongo red染色による偏光とラマン分光を合体させたALアミロイドーシスの迅速病型確定診断の樹立を試み、将来的には生標本を用いた無染色組織イメージングを目指す。
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