研究課題
基盤研究(C)
同種造血幹細胞移植後の慢性GVHDは移植サバイバーのQOLを著しく阻害する重大な合併症である。いったん重症化すると治療に抵抗することが多いが、確度の高い発症リスク評価と発症前からの先制治療は確立されていない。本研究では、①移植後急性期のB細胞恒常性モニタリングから、その後の慢性GVHD発症を予測するスコアリングシステムを構築し、②さらに、このB細胞恒常性異常を抑制できる先制的治療法を探索する。
古典的な急性GVHDは、皮膚・肝・腸管といったバリア臓器がドナー成熟T細胞による同種免疫反応から受ける損傷が組織寛容の閾値を超えるときに臨床的に発症するが、これまでこの急性期T細胞免疫の慢性GVHD発症への意義は示されていなかった。今回の研究では、移植後臨床検体解析およびマウス移植モデルでの検証実験から、骨髄・胸腺という一次リンパ器官がドナー成熟T細胞による同種免疫反応から受ける損傷が、その後のB細胞およびT細胞の慢性的な異常ホメオスタシスの起点であり、これらを戦略的に保全することで慢性GVHD発症を抑制する治療戦略の理論的妥当性が明らかとなった。
慢性GVHDの病態基盤としてのB細胞恒常性異常が起こるメカニズム、またこれへの治療的介入については十分な検討がなされていなかった。今回の研究成果により、移植後超急性期の同種T細胞免疫による骨髄損傷が長期的なB細胞系列および制御性T細胞の再構築不全をきたし、慢性GVHDの発症に関与していることが明らかとなった。今回の結果を基礎として、現在、B細胞新生不全および慢性GVHD発症を予測するバイオマーカーの同定へ向けて、移植急性期における骨髄微小環境の網羅的な細胞遺伝子学的解析を進めている。一連の基礎・臨床研究は、客観的バイオマーカーに基づく慢性GVHDの評価と治療法の確立への基盤となる。
すべて 2023 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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