男性間性交渉による流行が疑われるPVL産生市中感染型MRSAの分子疫学解析

• 研究課題/領域番号: 20K08837
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分54030:感染症内科学関連
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 安達 英輔 東京大学, 医科学研究所, 講師 (80725804)
• 研究分担者: 城戸 康年 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90511395)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• 研究課題ステータス: 交付 (2022年度)
• 配分額: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円); 2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円); 2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円); 2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
• キーワード: 市中感染型MRSA / 性感染症 / 分子疫学解析 / ゲノム解析 / MRSA / 分子疫学研究 / MSM / 皮膚感染症

研究開始時の研究の概要

市中感染型のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)による皮膚感染症はグローバル感染症となったが、本邦では強毒性のPVL産生CA-MRSAについては稀であり、リスク集団も特定されていない。申請者らの施設に通うHIV感染者でこれまで報告が稀であったPVL産生CA-MRSAの症例が増加傾向にあり、本研究はわが国のPVL産生CA-MRSAの遺伝的由来を明らかにすることを目的として、感染集団が形成された要因を探り、効果的な感染防止対策法を提案していく。

研究実績の概要

USA300株はPanton-Valentin leucocidin (PVL)毒素を産生する強毒なmethicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA)で、市中感染型MRSAとして米国を中 心として流行している。HIV感染や男性と性交渉のある男性 (Men who have sex with men: MSM)はUSA300株の保菌リスクとされる。 本邦におけるUSA300株は極め て稀であったが、近年HIV患者において報告数が増加しており、保菌率の調査とリスク因子の解析を目的とした。2019年12月から 2020年3月の間に当院を受診した HIV感染者に対して、PVL遺伝子がPCRにより、鼻腔のMRSA保菌調査を行い、分子疫学的に背景因子を解析した。PVL遺伝子が検出 されたものを分離し、全ゲノム解析を行い報告した。これらの成果は J Infect Dis. 24;223(4):610-620. (2021)に責任著者として発表している。 さらに昨年度は血液培養ボトル内の細菌の16sリボゾームのアンプリコンを解析を行った。HIV感染者における、血液培養ボトルや、血液検体を用いて直接メタ 16sのアンプリコン解析を行い、細菌のトランスロケーション等を評価することを目的とするものである。これまで、血液疾患による免疫不全者の血液培養ボト ルで陰性であったものを用いて、予備的な実験を行ったが、多くの場合、菌血症を反映しているのかどうか判別できなかった。しかしながら、これまでの研究でPVL-MRSAは日本のMSMで広く流行していることがわかり、今後は残りの研究期間で、他の性感染症との相互作用について解析していく予定である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目的であった、これまで国内ではまれであるとされてきたUSA300株の成人での流行が行っていることを示すという目標についてはほぼ達成されており、成果を報告した文献も海外の専門誌からすでに出版されている。現在は関連した細菌の解析を行なっている。

今後の研究の推進方策

今回、ゲノム解析による分子疫学解析の手法が確立され、今後もメタゲノム解析を用いた菌種の同定を行うことを考えている。また、臨床現場においては、現 在もUSA300株だと思われるPVL産生の市中感染型MRSAを認めており、現在も流行が続いている。新規に網羅的な培養検査を行い、分離株の分子疫学解析を行うことにより新たな知見が得られることも期待できる。また、PVL-MRSAは性感染症の一種であり、他の性感染症との合併が見られることがわかった。今後は梅毒やエムポックス等との関連についても調べていく。

研究成果

• [雑誌論文] Mpox associated with Panton-Valentin leucocidin-producing methicillin-resistant Staphylococcus aureus among people with HIV (2023)
  • 著者名/発表者名: Adachi Eisuke、Ikeuchi Kazuhiko、Otani Amato、Saito Makoto、Koga Michiko、Yotsuyanagi Hiroshi
  • 雑誌名: Journal of Infection and Chemotherapy 巻: in press 号: 7 ページ: 710-712
  • DOI: 10.1016/j.jiac.2023.03.020
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Efficacy of antivirals and bivalent mRNA vaccines against SARS-CoV-2 isolate CH.1.1 (2023)
  • 著者名/発表者名: Uraki Ryuta、Ito Mutsumi、Kiso Maki、Yamayoshi Seiya、Iwatsuki-Horimoto Kiyoko、Sakai-Tagawa Yuko、Furusawa Yuri、Imai Masaki、Koga Michiko、Yamamoto Shinya、Adachi Eisuke、Saito Makoto、Tsutsumi Takeya、Otani Amato、Kashima Yukie、Kikuchi Tetsuhiro、Yotsuyanagi Hiroshi、Suzuki Yutaka、Kawaoka Yoshihiro
  • 雑誌名: The Lancet Infectious Diseases 巻: 23 号: 5 ページ: 525-526
  • DOI: 10.1016/s1473-3099(23)00132-9
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Factors Associated with Health Care Providers' Preference for Forgoing an Oral Lead-In Phase When Initiating Long-Acting Injectable Cabotegravir and Rilpivirine in the SOLAR Clinical Trial (2023)
  • 著者名/発表者名: Karver Tahilin Sanchez、Pascual-Bernaldez Miguel、Berni Alessandro、Hnoosh Ahmed、Castagna Antonella、Messiaen Peter、Puerto Maria Jose Galindo、Bloch Mark、Adachi Eisuke、Sinclair Gary、Felizarta Franco、Angel Jonathan B.、Sutton Kenneth、Sutherland-Phillips Denise、D'Amico Ronald、Kerrigan Deanna
  • 雑誌名: AIDS Patient Care and STDs 巻: 37 号: 1 ページ: 53-59
  • DOI: 10.1089/apc.2022.0168
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Background factors in people living with HIV in Japan who switch to cabotegravir plus rilpivirine: A pilot study (2023)
  • 著者名/発表者名: Adachi Eisuke、Ikeuchi Kazuhiko、Koga Michiko、Yotsuyanagi Hiroshi
  • 雑誌名: Journal of Infection and Chemotherapy 巻: 29 号: 1 ページ: 109-111
  • DOI: 10.1016/j.jiac.2022.09.008
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Favorable Outcome Following Sotrovimab Monoclonal Antibody in a Patient with Prolonged SARS-CoV-2 Omicron Infection with HIV/AIDS (2022)
  • 著者名/発表者名: Adachi Eisuke、Saito Makoto、Koga Michiko、Tsutsumi Takeya、Yotsuyanagi Hiroshi
  • 雑誌名: Internal Medicine 巻: 61 号: 22 ページ: 3459-3462
  • DOI: 10.2169/internalmedicine.0485-22
  • ISSN: 0918-2918, 1349-7235
  • 年月日: 2022-11-15
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Changes in Inflammatory Biomarkers When Switching from Three-Drug Regimens to Dolutegravir Plus Lamivudine in People Living with HIV (2022)
  • 著者名/発表者名: Adachi Eisuke、Ikeuchi Kazuhiko、Koga Michiko、Yotsuyanagi Hiroshi
  • 雑誌名: AIDS Research and Human Retroviruses 巻: 38 号: 12 ページ: 881-883
  • DOI: 10.1089/aid.2022.0115
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Anti-spike protein antibody titer at the time of breakthrough infection of SARS-CoV-2 omicron (2022)
  • 著者名/発表者名: Adachi E, Nagai E, Saito M, Isobe M, Konuma T, Koga M, Tsutsumi T, Nannya Y, Yotsuyanagi H
  • 雑誌名: J Infect Chemother 巻: In press 号: 7 ページ: 1015-1017
  • DOI: 10.1016/j.jiac.2022.03.021
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Transient depletion of T cells during COVID-19 and seasonal influenza in people living with HIV (2022)
  • 著者名/発表者名: Eisuke Adachi , Makoto Saito , Hiroyuki Nagai, Kazuhiko Ikeuchi , Michiko Koga , Takeya Tsutsumi , Hiroshi Yotsuyanagi
  • 雑誌名: J Med Virol 巻: 94 号: 5 ページ: 1789-1791
  • DOI: 10.1002/jmv.27543
  • 査読あり
• [雑誌論文] Efficacy of Antibodies and Antiviral Drugs against Covid-19 Omicron Variant. (2022)
  • 著者名/発表者名: Takashita E, Kinoshita N, Yamayoshi S, Sakai-Tagawa Y, Fujisaki S, Ito M, Iwatsuki-Horimoto K, Chiba S, Halfmann P, Nagai H, Saito M, Adachi E, Sullivan D, Pekosz A, Watanabe S, Maeda K, Imai M, Yotsuyanagi H, Mitsuya H, Ohmagari N, Takeda M, Hasegawa H, Kawaoka Y.
  • 雑誌名: N Engl J Med 巻: 26 号: 10 ページ: 995-998
  • DOI: 10.1056/nejmc2119407
  • 査読あり
• [雑誌論文] An Outbreak of USA300 Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Among People With HIV in Japan (2021)
  • 著者名/発表者名: Kazuhiko Ikeuchi, Eisuke Adachi, Takashi Sasaki, Masato Suzuki, Lay Ahyoung Lim, Makoto Saito, Michiko Koga, Takeya Tsutsumi, Yasutoshi Kido, Yuki Uehara, Hiroshi Yotsuyanagi
  • 雑誌名: J Infect Dis 巻: 223 号: 4 ページ: 610-620
  • DOI: 10.1093/infdis/jiaa651
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] ウイルス学的に抑制された成人HIV感染患者におけるDolutegravir/Lamivudine切り替え後の炎症性バイオマーカーの変化及びベースライン変数との関連 (2022)
  • 著者名/発表者名: 1.Eisuke Adachi, Josep M. Llibre,1 Stefan Scholten, Olayemi Osiyemi, Richard Grove, James Oyee, Ruolan Wang, Brian Wynne, Cynthia Donovan, Bryn Jones, Chinyere Okoli, Michelle Kisare, Mounir Ait-Khaled
  • 学会等名: 第36回日本エイズ学会学術集会
• [学会発表] 新たなステージに向かう抗HIV治療 －長期作用型抗HIV治療薬の現状と未来－LA-ARVの現在と未来、国内の状況 (2022)
  • 著者名/発表者名: 安達英輔
  • 学会等名: 第36回日本エイズ学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 持効性注射薬による新しい治療 第36回日本エイズ学会学術集会 (2022)
  • 著者名/発表者名: 安達英輔
  • 学会等名: 第36回日本エイズ学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 症状の持続した免疫不全患者のCOVID-19の3例 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大谷天人、安達英輔、池内和彦、齋藤真、古賀道子、四柳宏
  • 学会等名: 第71回日本感染症学会東日本地方会学術集会
• [学会発表] 季節性インフルエンザ感染症, 及びCOVID-19罹患に伴うT細胞サブセットの変化 (2022)
  • 著者名/発表者名: 安達英輔
  • 学会等名: 第35回日本エイズ学会学術集会
• [学会発表] 本邦のHIV患者におけるUSA300株MRSAの流行 (2020)
  • 著者名/発表者名: 池内 和彦, 安達 英輔, 佐々木 崇, 鈴木 正人, 林 阿英, 齋藤 真, 古賀 道子, 堤 武也, 城戸 康年, 上原 由紀, 四柳 宏
  • 学会等名: 第34回日本エイズ学会学術集会
• [学会発表] HIV感染者におけるPanton-Valentine leukocidin陽性MRSA感染症についての検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 池内 和彦, 安達 英輔, 鈴木 正人, 林 阿英, 古賀 道子, 堤 武也, 四柳 宏
  • 学会等名: 第94回日本感染症学会学術集会