研究課題/領域番号 |
20K08851
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
白土 東子 (堀越東子) 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60356243)
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研究分担者 |
守口 匡子 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (60298528)
河本 聡志 大分大学, グローカル感染症研究センター, 教授 (60367711)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ノロウイルス / ロタウイルス / 血液型抗原 |
研究開始時の研究の概要 |
ノロウイルス、ロタウイルスは、小腸上皮に発現する血液型抗原を識別して感染する個体を決めている。本研究課題では、「ノロウイルスとロタウイルスの感染力の強さは、ヒト小腸上皮に発現する血液型抗原への結合力の強さと相関しているのではないか?」という問いを検証する。組織学的解析によって、ウイルス吸着部位と血液型抗原発現部位との相関性を評価し、表面プラズモン共鳴解析(Surface Plasmon Resonance解析)によって、ウイルスと血液型抗原との結合力の強さを数値化する。
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研究実績の概要 |
ノロウイルスとロタウイルスは、共にNon-envelopedのRNAウイルスであるものの、ゲノムの形状、粒子の大きさは大きく異なる。しかし、ヒト小腸特異的に吸着し感染を開始するという共通点、感染力が強く成人になるまでにほぼ100%のヒトが感染を経験するという共通点がある。そして、これらの共通点に加え、小腸上皮へのウイルス吸着の際に認識する糖鎖が同じ糖鎖であること、血液型抗原であることが、2012年に明らかになっている。 本研究課題では、ノロウイルスとロタウイルスの解析を平行して行うことによって、「小腸に吸着し下痢を引き起こすウイルスの組織特異性、細胞特異性の規定因子が糖鎖ではないか?」「糖鎖への結合力の強さと感染力の強さは相関しているのではないか?」という問いを検証する。具体的には次の1)-3)を行う。 1) 免疫組織学的解析によるウイルス吸着部位と糖鎖発現部位との相関性の解析、2) ELISA、Surface Plasmon Resonance(SPR)解析機器を用いたロタウイルスの血液型抗原結合能の解析、3)リバースジェネティクスを用いた血液型抗原結合部位改変ロタウイルスの作出 今年度は、昨年度に引き続き、2)に取り組んだ。ノロウイルスVLPをコントロールに設定し、ロタウイルスの血液型抗原結合能の評価のためのELISA、SPRの条件検討を行った。また、1)の結果をまとめた論文作成を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題では、下記の1)、2)、3)の解析を行う。今年度は、昨年度に引き続き、1)の解析結果の論文化を進めるとともに、2)の13遺伝子型16株のノロウイルスVLPのSPR解析の追試を行なった。陽性コントロールとなるノロウイルスVLP、陰性コントロールとなるノロウイルスVLP、どちらの追試も終えており、これにより、ロタウイルスの血液型抗原結合パターンのSPRにおける評価が可能となった。しかし、ロタウイルスの糖鎖結合の結果を得るに至っていない。このため、「遅れている」とした。 1) ノロウイルス、ロタウイルスの組織特異性に血液型抗原が関与するかどうかの検討を行うため、ヒト小腸切片を用いた免疫組織化学染色によって血液型抗原の発現分布を解析する。さらに連続切片上でノロウイルス、ロタウイルスのBinding assayも行い、その分布を比較する。 2) ELISAでヒト生体内で発現している血液型抗原およびその前駆体約20種類に対するロタウイルスの結合パターンを網羅的に解析する。次に、ELISAでロタウイ ルスとの結合活性が観測された血液型抗原構造に着目した詳細な相互作用解析をSPR解析機器を用いて行う。 3) 上記2)で明らかになる血液型抗原認識パターンと、ロタウイルスカプシドのアミノ配列比較から、血液型抗原認識と連動しているアミノ酸の割り出しを行 う。特定された鍵となるアミノ酸を置換させたロタウイルス変異株をリバースジェネティクスを用いて作製する。その上で、この変異株の血液型抗原結合活性が消失するのか、または結合可能な血液型抗原の種類が減少するかを評価する。評価にはELISA、Biacore x100を用い、コントロールとしてこれまでに血液型抗原結合パターンの解析を終えているノロウイルスVLPと上記2)で血液型抗原結合パターンの解析を行う感染性ロタウイルスを設定する。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトに感染するヒトノロウイルスはヒトを唯一の感受性動物とし、感染モデル動物も培養細胞での増殖系も確立していない。ウイルス粒子の便への排出量は決して多くなく、in vitroでの解析に充分なウイルス粒子の調製は困難である。そこで、VLPの調製が有用であるが、VLP発現は容易ではなく、現在までに海外で発現の成功が報告されているのは約15株に留まっている。一方、代表者が所属する研究室では18遺伝子型25株のVLP発現に成功しており、研究代表者・白土はこのうち13遺伝子型16株の血液型抗原19種類に対する結合パターンの解析を終えている。 令和4年度までに13遺伝子型16株のノロウイルスVLPのSPR解析の追試を終えた。令和6年度は、令和5年度に引き続き、ノロウイルスVLPをコントロールに設定したロタウイルスの血液型抗原結合パターンの評価を進める。
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