研究課題
基盤研究(C)
「オプシン」は動物の眼において視覚の光センサーとして機能するタンパク質である。多くの動物において、オプシンの仲間は眼だけでなく脳や皮膚にもあり、視覚以外の光感知機能に関わることがわかってきている。一方、下垂体は脊椎動物の内分泌機能の中心を担う組織であり、数多くの重要なホルモンを産生・放出する。これまでの研究で、メダカの下垂体にはいくつかのオプシンが発現する事がわかっているが、それが光を感知して、どのような仕組みで、どのホルモンに影響するかという事はわかっていない。本研究ではこれを解明し、さらにはその知見を応用して、ホルモンの放出を光で自由に制御する仕組みを作ることを目指す。
脳の下部に位置する下垂体は脊椎動物が持つ重要な内分泌器官である。小型魚類メダカを用いた実験により、下垂体のメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)を産生する細胞には動物が視覚に用いるものと類似した光受容体「Opn5m」が発現していることがわかった。またMSH産生細胞は、Opn5mを用いることで直接紫外光を感じ取り、ホルモンの放出量を調節する機能を持っていることがわかった。さらにOpn5mを他の細胞に遺伝子導入して光を当てると、細胞内のカルシウム濃度を上昇させる事ができ、細胞の振る舞いを光で操作するツールとして利用できる可能性があることがわかった。
レンズを持つ目や脳表にある松果体のように光受容に特化した組織でなく、内分泌機能の中枢と考えられ、実際ホルモン産生細胞の塊といえる下垂体において、直接環境光を感知して機能を調節する機構はこれまでに報告のない、新たな概念である。今後、本研究で得られた知見を基盤として生物の内分泌機能を光操作する手法を発展させることで、疾患の新たな治療や、産業動物の新たな育成法の開発などに繋がる可能性が考えられる。
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