研究課題
基盤研究(C)
全世界の糖尿病罹患者は2019年で4億6300万人と推計されている。膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞は、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌により、糖代謝を制御している。糖尿病における血糖値上昇の直接の原因は、膵β細胞の障害によるインスリンの不足である。よって、膵β細胞障害のメカニズムを明らかにする事は重要である。本研究では、我々がこれまでに明らかにしてきた、成熟β細胞の特徴的な遺伝子発現パターンの制御メカニズムを解明し、その破綻が膵β細胞機能に与える影響を明らかにして、糖尿病の先制医療の基盤を形成する。
全世界の糖尿病罹患者は2021年で5億3700万人と推計されている。インスリンを分泌する膵β細胞の障害は、糖尿病の原因となる。我々はこれまでに、膵β細胞の発生・分化・機能における転写因子の機能を、個体レベルで解析してきた。その結果、それら特定の転写因子の発現低下により膵β細胞が脱分化すること、その脱分化が膵β細胞障害と耐糖能異常の原因となることを、細胞系譜追跡実験などにより明らかにした。脱分化膵β細胞では、通常の膵β細胞で発現が抑制されている分子の発現増強が認められる。そこで本研究では、成熟膵β細胞に特異的な遺伝子発現抑制メカニズムを解析し、それら遺伝子群が、糖尿病における膵β細胞障害にどのように関与するのかを明らかにすることを目的として、研究を進めている。本年度は、昨年度までに同定された、成熟膵β細胞で発現が抑制され、糖尿病の膵島で発現が増強する遺伝子(以下、標的遺伝子)と、その発現を制御する転写因子群の機能について、引き続き解析した。具体的には、糖尿病モデルマウスや高脂肪食給餌マウスと、それらの対照マウスの膵島における、標的遺伝子や転写因子群の発現を解析した。また、in vitroあるいはin situにおける転写因子群の過剰発現が、標的遺伝子の発現に与える影響を解析した。これら解析の結果、糖尿病状態の膵β細胞においては、これら遺伝子の発現増強が誘因となって、膵β細胞障害が引き起こされる分子メカニズムが明らかになりつつある。
2: おおむね順調に進展している
過去にCOVID-19の影響で研究活動が制限されたが、現在は順調に進展している。
これまでの研究の結果、糖尿病状態において、同定された遺伝子の発現増強が膵β細胞障害を引き起こす新たな分子メカニズムが明らかになりつつあり、臨床応用に向けての発展が期待される。そこで、この膵β細胞の障害過程をin vitroで再構築し、そのメカニズムの詳細を分子レベルで明らかにしていく予定であった。しかしながら、その実験系の確立と妥当性の確認に想定以上の時間を要したため、科学研究費助成事業の補助事業期間を延長して頂き、引き続き研究を推進する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (10件) 備考 (3件)
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