研究課題/領域番号 |
20K09006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 (2022) 京都大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
田浦 康二朗 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 腫瘍研究部, 研究主幹 (80378629)
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研究分担者 |
鶴山 竜昭 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第1研究部, 研究員 (00303842)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
田畑 泰彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
祝迫 惠子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70625300)
瀬尾 智 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70646546)
福光 剣 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70700516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 人工胆管 / 胆管再生 / 生体材料 / ゼラチン不織布 / 胆管 / 再生 / 胆道再建 / 胆管切除 / 胆管損傷 |
研究開始時の研究の概要 |
胆道悪性疾患(胆管癌や胆嚢癌)の手術治療において、胆管を切除した後、再び肝臓から腸に胆汁を流すために胆道再建が必要である。胆管の断端を腸(空腸)に吻合する「胆管空腸吻合」が広く行われているが、腸内細菌が直接肝臓に逆流して胆管炎を起こすなど問題は多々ある。我々は、切除した胆管を人工物を用いて間置ことで、切除する前に近い胆汁の流れを再建することで、「胆管空腸吻合」の多くの問題点を克服できると考える。我々はこの人工物を「人工胆管」とし、生体分解性の素材を用いて、管腔構造の医療材料を開発し、細胞や動物を用いた実験にてその効果を検証する。
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研究実績の概要 |
ゼラチンは体内で酵素分解され、最終分解物はアミノ酸となる生体分解性の素材である。ゼラチンを利用した様々な製品が実臨床で使用されている。我々は日本毛織株式会社と協力して人工胆管の作製に着手し、不織布構造のゼラチンハイドロゲル(以下、ゼラチン不織布)を足場として採用し、これによる人工胆管を作製した。 生体材料の適正として、足場に細胞が浸潤し、組織構造を形成することが重要である。足場によって誘導されたさまざま細胞が、足場内でタンパク質や成長因子を分泌し、それらによってできた細胞外マトリックスに胆管上皮細胞や血管内皮細胞など特徴的な細胞が生着すると考えている。 我々は細胞外マトリックスの主成分として組織再生に重要なコラーゲンを分泌する線維芽細胞を用いて足場としての適正の評価を行った。ゼラチン不織布内に線維芽細胞が入り込み、足場内で増殖し、さらにコラーゲンタンパクが分泌されることを確認した。 小動物を用いた人工胆管の移植実験では、移植部位の経時的な評価を行い、ゼラチン不織布が、足場として、細胞浸潤、組織構造の構築を促した。ゼラチン不織布はやがて完全に分解され、胆管構造が再生されることを確認した。 これらの知見から大動物への移植実験のための人工胆管の試作を開始した。克服する課題は多く、大動物の胆管に吻合するための強度を得るためにはゼラチン不織布のみでは不十分であったので、強度を補完する目的で、ポリグリコール酸で作製したチューブを内層とし、その外層にゼラチン不織布のシートを巻き付ける形で人工胆管を作製した。その構造により強度の向上とともに胆管上皮の再生も確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工胆管の作製は日本毛織株式会社と共同で開発しているが、2020年度はコロナ禍の状況で試作等に遅れが生じ、実験の規制もあり大動物実験はほとんど進められなかった。2021年度は細胞実験、小動物実験の結果をまとめ、論文作製を行い、学術雑誌(Tissue Engineering Part A)に投稿し、3月22日に採用された(Published Onlineは4月6日)。コロナ禍の影響で大動物実験に用いる麻酔薬等の入荷に制限が生じていたが、2021年9月以降は試作を再開し、現在までに7症例の大動物実験を行った。改良を重ね6症例目では人工胆管部分に胆管上皮の置換を認めたが、安定して再現はできておらずさらなる症例の積み重ねが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
大動物に対して移植実験を7症例行っている。6症例目で人工胆管部分に胆管上皮の置換・再生が認められたため、その素材・構造を軸にさらに症例を積み重ねる方針である。それと同時に臨床応用に向けたさらなる素材の改良(強度の向上や手術手技の煩雑さの解消)を進めるために日本毛織株式会社と適宜面談を行っている。
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