消化器癌における症例特異的変異を用いたctDNAモニタリングの臨床的意義の検討

• 研究課題/領域番号: 20K09064
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分55020:消化器外科学関連
• 研究機関: 岩手医科大学
• 研究代表者: 岩谷 岳 岩手医科大学, 医学部, 特任教授 (70405801)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2022年度)
• 配分額: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円); 2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円); 2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円); 2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
• キーワード: 消化器癌 / circulating tumor DNA / 遺伝子変異 / 消化管癌 / 術後サーベイランス / 化学療法効果判定 / デジタルPCR

研究開始時の研究の概要

がんゲノム医療が行われるようなったが、実際の治療到達率は10%程であり、また奏功が得られた症例はさらに低い。癌細胞由来の血中遊離DNA(ctDNA)検査が注目されているが、解析は主に次世代シークエンサー(NGS)が用いられる、コストや検査時間から頻回な検査は困難であり日常癌診療で確立したツールとはなっていない。われわれはNGSで検出された個々の少数の症例特異的変異をdigital PCRを用いて低コストで血中追跡するシステムを構築したが、これは既存の治療ゲノム医療にかかわらず治療効果を正確に追跡できる可能性がある。本手法が消化管癌の日常診療におけるルーチン検査となりうるか検証する。

研究成果の概要

血中循環腫瘍DNA (circulating tumor DNA: ctDNA)モニタリングのがん診療における臨床的意義を検討した。食道癌、胃癌、大腸癌の原発巣の遺伝子パネル検査で検出された症例特異的変異のうち症例ごとに少数を選定し、digital PCR (dPCR)でctDNAモニタリングを行った。食道癌の91%、大腸癌の85%、胃癌の33%の症例で、早期再発予測、無再発確証、正確な治療効果判定におけるctDNA検査の臨床的妥当性を示した。本検査システムは、治療効果判定、効果予測、治療後のサーベイランスなど癌患者の日常診療における方針決定の診断ツールとして役立つことを明らかにした。

研究成果の学術的意義や社会的意義

がん遺伝子パネル検査が保険適応となり広く施行されるようになったが、検査結果からの治療到達率は低い。また高度進行癌症例が対象であり、遺伝子異常に対応する推奨治療が見つかってもわずかな期間の延命にしかつながっていない場合が多い。多くのがんで術後補助療法の有効性が示されているように、癌細胞量が微量であれば治療により治癒する可能性が上昇する。ctDNAは体内の腫瘍細胞量を反映するが、再発画像診断に約６か月先行して陽性化する。われわれが開発したctDNA検査システムは安価にくり返し検査が可能あり、個別化高感度腫瘍マーカーとして早期治療介入を可能とし、患者予後を改善すると期待される。

研究成果

• [雑誌論文] Individualized circulating tumor <scp>DNA</scp> monitoring in head and neck squamous cell carcinoma (2022)
  • 著者名/発表者名: Kogo Ryunosuke、Manako Tomomi、Iwaya Takeshi、Nishizuka Satoshi、Hiraki Hayato、Sasaki Yasushi、Idogawa Masashi、Tokino Takashi、Koide Ayaka、Komune Noritaka、Yasumatsu Ryuji、Nakagawa Takashi
  • 雑誌名: Cancer Medicine 巻: - 号: 21 ページ: 3960-3968
  • DOI: 10.1002/cam4.4726
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Frequent Tumor Burden Monitoring of Esophageal Squamous Cell Carcinoma With Circulating Tumor DNA Using Individually Designed Digital Polymerase Chain Reaction (2021)
  • 著者名/発表者名: Iwaya Takeshi、Endo Fumitaka、Takahashi Fumiaki、Tokino Takashi、Sasaki Yasushi、Nishizuka Satoshi S.
  • 雑誌名: Gastroenterology 巻: 160 号: 1 ページ: 463-465
  • DOI: 10.1053/j.gastro.2020.09.035
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Frequent post-operative monitoring of colorectal cancer using individualised ctDNA validated by multiregional molecular profiling (2021)
  • 著者名/発表者名: Yaegashi Mizunori、Iwaya Takeshi、Sasaki Noriyuki、Fujita Masashi、Ju Zhenlin、Siwak Doris、Hachiya Tsuyoshi、Sato Kei、Endo Fumitaka、Kimura Toshimoto、Otsuka Koki、Sugimoto Ryo、Sugai Tamotsu、Liotta Lance、Lu Yiling、Mills Gordon B.、Nakagawa Hidewaki、Nishizuka Satoshi S.
  • 雑誌名: British Journal of Cancer 巻: 124 号: 9 ページ: 1556-1565
  • DOI: 10.1038/s41416-021-01266-4
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Reply (2021)
  • 著者名/発表者名: Iwaya Takeshi、Nishizuka Satoshi S.
  • 雑誌名: Gastroenterology 巻: 161 号: 1 ページ: 367-368
  • DOI: 10.1053/j.gastro.2021.03.033
  • 査読あり
• [雑誌論文] Early dynamics of circulating tumor DNA predict chemotherapy responses for patients with esophageal cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Ryosuke Fujisawa , Takeshi Iwaya, Fumitaka Endo, Masashi Idogawa, Noriyuki Sasaki, Hayato Hiraki, Shoichiro Tange, Tomomi Hirano, Yuka Koizumi , Masakazu Abe, Tomoko Takahashi, Mizunori Yaegashi , Yuji Akiyama, Mari Masuda, Akira Sasaki, Fumiaki Takahashi, Yasushi Sasaki, Takashi Tokino, Satoshi S Nishizuka
  • 雑誌名: Carcinogenesis 巻: 42(10) 号: 10 ページ: 1239-1249
  • DOI: 10.1093/carcin/bgab088
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Analysis of mutational and proteomic heterogeneity of gastric cancer suggests an effective pipeline to monitor post-treatment tumor burden using circulating tumor DNA (2020)
  • 著者名/発表者名: Sasaki Noriyuki、Iwaya Takeshi、Chiba Takehiro、Fujita Masashi、Ju Zhenlin、Endo Fumitaka、Yaegashi Mizunori、Hachiya Tsuyoshi、Sugimoto Ryo、Sugai Tamotsu、Siwak Doris R.、Liotta Lance A.、Lu Yiling、Mills Gordon B.、Nakagawa Hidewaki、Nishizuka Satoshi S.
  • 雑誌名: PLOS ONE 巻: 15 号: 10 ページ: e0239966-e0239966
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0239966
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] A postoperative surveillance system using a sensitive circulating tumor DNA assay for colorectal cancer (2022)
  • 著者名/発表者名: Takeshi Iwaya, Tomoko Sasaki, Mizunori Yaegashi, Satoshi S Nishizuka
  • 学会等名: 第81回日本癌学会
• [学会発表] Personalized circulating tumor DNA test in daily practice for cancer patients (2022)
  • 著者名/発表者名: Takeshi Iwaya, Satoshi Nishizuka
  • 学会等名: 第60回日本癌治療学会
  • 招待講演
• [学会発表] 食道癌患者における Nonactionable変異を用いた ctDNAモニタリング (2022)
  • 著者名/発表者名: 岩谷 岳、遠藤 史隆、藤澤 良介、西塚 哲
  • 学会等名: 第76回日本食道学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 腫瘍由来血中循環DNAによる 腫瘍再発モニタリング検査 (2022)
  • 著者名/発表者名: 岩谷 岳
  • 学会等名: 第76回日本食道学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] Circulating Tumor DNAを用いた大腸癌術後サーベイランスにおけるCT検査削減の可能性に関する研究 (2022)
  • 著者名/発表者名: 髙橋 智子、岩谷 岳、八重樫 瑞典、開 勇人、小泉 優香、 阿部 正和、阿保 亜紀子、遠藤 史隆、大塚 幸喜、佐々木 章、西塚 哲
  • 学会等名: 第122回日本外科学会定期学術集会
• [学会発表] 消化器癌のLiquid biopsyの進歩 「デジタルPCRを用いた消化器癌のctDNAモニタリング」 (2022)
  • 著者名/発表者名: 岩谷 岳
  • 学会等名: 第６回リキッドバイオプシー研究会
• [学会発表] Circulating Tumor DNAを用いた大腸癌術後サーベイランスにおけるCT検査削減の可能性に関する研究 (2022)
  • 著者名/発表者名: 高橋智子、岩谷岳、八重樫瑞典、木村聡元、高清水清治、有吉 佑、藤澤良介、小泉優香、遠藤史隆、大塚幸喜、佐々木章
  • 学会等名: 第122回日本外科学会
• [学会発表] Intensive disease monitoring with circulating tumor DNA using digital PCR in patients with esophageal cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Takeshi Iwaya, Satoshi S. Nishizuka
  • 学会等名: 第80回日本癌学会
• [学会発表] 原発巣変異およびctDNA治療後早期変動による 食道癌化学療法効果予測 (2020)
  • 著者名/発表者名: 岩谷 岳、遠藤 史隆、藤澤 良介、佐々木 教之、二階 春香、馬場 誠朗、秋山 有史、佐々木 章、西塚 哲
  • 学会等名: 第74回日本食道学会
• [学会発表] がんゲノム情報を用いた食道癌治療の最適化 (2020)
  • 著者名/発表者名: 岩谷 岳、遠藤 史隆、八重樫 瑞典 、佐々木 教之、藤澤 良介 、二階 春香 、馬場 誠朗 、秋山 有史 、佐々木 章 、西塚 哲
  • 学会等名: 第120回日本外科学会