研究課題/領域番号 |
20K09137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
古荘 文 久留米大学, 医学部, 助教 (80597427)
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研究分担者 |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 大動脈解離 / 免疫グロブリン / B細胞 / 炎症細胞 / 炎症応答 / Fc受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
大動脈解離は前触れなく突然発症し、強い痛みとともに大動脈が裂ける原因不明の病気である。大動脈が急速に破壊されるため、心臓周囲への出血や心臓や脳への血流不足が起こり致死的となることが多い。申請者は正常時から存在する免疫グロブリン(自然IgG)が大動脈解離による組織破壊を促進することを発見した。本研究では自然IgGが大動脈破壊を促進する仕組みを明らかにする。
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研究実績の概要 |
大動脈解離の病態を解明するためにマウス大動脈解離モデルを開発し、種々の分子介入を加えてトランスクリプトームデータセットを取得した。各実験セットで解離刺激により発現が変化する遺伝子群を抽出し重複のない遺伝子群セットを解離関連遺伝子群と定義した。解離関連遺伝子群相互の制御関係を明らかにするためにベイズ推計により解離関連遺伝子群の発現制御ネットワークを推定した。強い制御関係にある遺伝子群がサブネットワークの機能を遺伝子アノテーション解析により推定したところ、細胞増殖、炎症応答、T細胞、B細胞、細胞運動、形態形成、感覚器官などのアノテーションが抽出された。B細胞、T細胞は広く炎症応答を制御する遺伝子群とはべつのサブネットワークを形成していた。 ヒト大動脈解離組織で、B細胞、各種ヘルパーT細胞サブセット、マクロファージ、好中球の局在を検討した。B細胞とヘルパーT細胞サブセット(クラスター1)、マクロファージと好中球(クラスター2)がそれぞれ密接な空間分布を示した。クラスター1のB細胞および濾胞性ヘルパーT細胞とクラスター2のM2マクロファージは比較的強い空間的関連を示しており、これらの細胞がクラスター1とクラスター2を結ぶ役割を果たすことが推察された。 マウス大動脈解離モデルで免疫グロブリンが解離病態を増悪させることが示された。免疫グロブリンの作用をトランスクリプトーム解析で検討したところ、脂肪関連遺伝子群が大きく変動するとの知見を得た。同じ解離モデルで傍大動脈脂肪組織のトランスクリプトーム解析を行ったところ、解離刺激により脂肪代謝関連遺伝子群が抑制され、細胞増殖および炎症応答に関与する遺伝子群が誘導されていた。これらの知見から、大動脈解離病態では大動脈組織と傍大動脈脂肪組織の相互作用が病態に関わる可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B細胞および免疫グロブリンの大動脈解離病態における意義を検討するためにマウスモデルで解析を行い、解離病態に傍大動脈脂肪組織が関与する可能性という予想外の知見を得た。ヒト解離組織において炎症細胞解析を行い、ヘルパーT細胞とB細胞が密接に関連する細胞クラスター、および好中球とマクロファージが密接に関連する細胞クラスターの存在を見出した。B細胞はこれら2つの細胞クラスターを結びつける位置に存在すると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
大動脈解離病態における免疫グロブリン、B細胞、脂肪組織の関係を明らかにするために、空間トランスクリプトーム解析を実施する予定である。これまでにマウス大動脈組織から十分な品質と量のRNAを検出可能であることを確認し空間トランスクリプトームに用いる適切なプラットホームの選択を進めている。
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