研究課題/領域番号 |
20K09154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
川人 宏次 自治医科大学, 医学部, 教授 (90281740)
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研究分担者 |
坂元 尚哉 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (20361115)
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 教授 (20382898)
中村 匡徳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20448046)
相澤 啓 自治医科大学, 医学部, 教授 (50398517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 大動脈二尖弁 / 壁せん断応力 / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / MMP / 衝突噴流 / 内皮細動-平滑筋細胞共培養モデル / 先天性大動脈二尖弁 / 大動脈瘤 / 数値流体力学 |
研究開始時の研究の概要 |
大動脈二尖弁において上行大動脈が高率に瘤化する背景には、血管平滑筋細胞減少と弾性線維変性があるが、これらの変化には血管内皮細胞への高剪断応力の関与が示唆されている。しかしながら、直接ストレスを受ける血管内皮細胞と病変の首座である血管平滑筋細胞との関連性は十分に解明されていない。本研究では、疾患環境を模倣した高剪断応力下での共培養実験(血管内皮細胞/血管平滑筋細胞)を用いて、血管内皮細胞/平滑筋細胞の形態・機能変化を引き起こす遺伝子を解析し、瘤化への関連を検討する。
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研究実績の概要 |
昨年度は、遠心力で圧縮する独自の技術でコラーゲンゲルの剛性を高めた血管内皮細胞―平滑筋細胞共培養モデルを開発し、病的高壁剪断応力条件下での血管病態に関連する平滑筋細胞の形質および機能を解析した。その結果、20Paの病的壁剪断応力下においても血管内皮細胞/平滑筋細胞の相互作用が保たれていることが証明できた。本年度は、この実験モデルを用いて、高壁せん断応力が平滑筋細胞の表現型転換に及ぼす影響を調べた。高壁せん断応力負荷用に開発された平滑筋細胞/圧縮コラーゲン組織を表現型制御培地で培養し,平滑筋細胞の収縮型分化を促した。組織上に内皮細胞を播種、培養した後,2Pa、20Paの壁せん断応力を負荷した結果、静置培養および2Paに比べて20Paの壁せん断応力負荷で、収縮型平滑筋細胞マーカータンパクであるαSMAおよびCalponin1発現の低下を認めた。これは高壁せん断応力が血管平滑筋細胞の表現型転換を引き起こす可能性を示唆しており、この成果を第61回日本生体医工学会大会で発表した。また、上記モデルを用いて、衝突噴流環境下における血管内皮細胞のNO産生に関する実験を行った。衝突噴流負荷後,内皮細胞に取り込ませたNO蛍光指示薬DAF-FM DAの蛍光輝度によって内皮細胞のNO産生を評価した結果、衝突噴流負荷後の内皮細胞では静置培養と比較してDAF-FM DA蛍光輝度が高く,剥離部周辺で剥離せずに残った細胞においては特に高いDAF-FM DA蛍光輝度が認められ、血管内皮細胞に対して衝突噴流を負荷した結果、壁せん断応力と法線方向動圧が高まる領域でNO産生量の増加が認められた。このことから衝突噴流特有の力学環境が血管内皮細胞の過剰なNO産生を引き起こし,内皮細胞の剥離に関与する可能性が示唆された。この成果は、日本機会学会第35回バイオエンジニアリング講演会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自治医科大学臨床研究倫理委員会の承認の下、東京都立大学坂元尚哉准教授の研究室および名古屋工業大学中村教授の研究室と共同で、大動脈二尖弁症例の異 常血流が大動脈組織の変性や恒常性変化に及ぼす影響を、臨床データとin vitro実験モデルを使用して多角的に検証している。 2022年度は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、本研究に関する検体採取及び関連実験も影響を受けた。具体的には、当該研究施設だけでな く、共同研究施設である東京都立大学と名古屋工業大学でも、学生教育業務や実験活動に制限が生じ、研究実験の実施が難しい時期もあったが、全体的な進捗状 況としては概ね順調に進展している。 2022年度は、血管内皮細動-血管平滑筋細胞を使用した共培養実験において、1.高壁せん断応力が内皮細胞と共培養した血管平滑筋細胞の表現型へ及ぼす影響、2.衝突噴流環境下における血管内皮細胞のNO産生、を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も共同研究機関である東京都立大学と名古屋工業大学と共同で、大動脈二尖弁症例の臨床データと血管内皮細動-血管平滑筋細胞を使用した共培養実験モデ ルを使用した研究を継続する。2021年度は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、本研究プロジェクトも影響も受けたが、定期的なオンライン会 議を継続し、各分担分野の進捗状況の確認を緊密に行う予定である。 今後は、血行力学ストレスに対する生体反応として、様々な剪断応力負荷下で、血管内皮細胞および血管平滑筋細胞からのMMP産生や血管平滑筋細胞のphenotype変化を中心とした解析を行う方針である。また、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞のsignal transductionやTNFやTGFなど既報告の大動脈中膜組織の恒常性維持に影響を及ぼすサイトカインの影響も併せて解析を継続する予定である。また、MMP/TIMP関連分子の他、血管平滑筋細胞の収縮/合成型phenotypeのmarker(α-SMA・calponin・SM-1・SMemb・tropomyosin4)やapoptosis関連marker(caspase enzymes・Bax・Bcl-2・annexin V) などの発現も、qRT-PCRやwestern blotting法を用いて計測する予定である。
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