研究課題/領域番号 |
20K09217
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐々木 利佳 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10345572)
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研究分担者 |
廣田 弘毅 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (30218854)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | てんかん / 嗅内皮質 / カルバコール / ビククリン / GABA受容体 / 相互相関関係 / ラット / シータ波 / 扁桃体 / 全身麻酔薬 / デスフルラン / 海馬スライス / 麻酔メカニズム / シナプス伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
脳内神経伝達機構が障害されているてんかん脳において,全身麻酔作用の変化は明らかでなく,麻酔作用の不安定性から術中の浅麻酔による覚醒時興奮・不穏や深麻酔による覚醒遅延,周術期の痙攣発作誘発等が危惧される. 当該研究では,てんかん脳における全身麻酔の不安定性を抑制または促進する麻酔薬を同定するために,てんかんモデルラットから作製した脳スライス標本を用いて,シナプス伝達に及ぼす全身麻酔薬の影響について解析し,てんかん脳における全身麻酔薬作用修飾のメカニズムについてin vitroで探索することにより,てんかん患者における,より安全な麻酔薬・麻酔法開発の基礎を確立する.
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研究実績の概要 |
嗅内皮質は,大脳に対する入出力ゲートとしての役割を担うことから全身麻酔薬の作用部位の1つと考えられる. 2021-2022年度は,ラット嗅内皮質スライスにカルバコールを灌流適用してθ波を誘発し,正常脳の機能的神経ネットワークモデルの作製に成功した.さらにカルバコール+選択的GABA(A)受容体拮抗薬ビククリンを灌流投与することにより,てんかん脳モデルを作製した. 2023年度は,この正常脳およびてんかん脳における全身麻酔薬の作用を検討した. 方法:麻酔した雄性ウィスターラットから脳を摘出し,嗅内皮質スライスを作製した.嗅内野外側および内背側に2本の細胞外電極をそれぞれ刺入した後,θ波を誘発した.2つの神経ネットワークにおけるθ波を相互相関解析したヒストグラムおよび相互相関係数(CCF)を算出し検討に用いた.CCFは,2つのネットワークの相互相関が高いと1.0に近い値をとり,ネットワークが断片化すると0に近づく.得られたデータはPowerlab(AD Instruments)を用いてA/D変換 し,Labchartソフトウェア(AD Instruments)で解析した. 結果:CCF解析結果から,正常脳では2つの神経ネットワークの神経結合の多様性と統合のバランスが釣り合っており(Stage 0)CCFが高いことが示された. てんかん脳ではシナプス伝達の促進のために神経結合の多様性が失われ(Stage +1)CCFが低下した.一方,揮発性麻酔薬デスフルランを適用するとネットワークの断片化が起こり(Stage -1)CCFは低下した. 結論:今回の検討から,てんかん発作は神経ネットワークのStageを上げる方向にはたらき,デスフルランはStageを下げると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ渦ならびに「医師の働きかた改革」に対応するための他病院における症例調整により,大学病院の臨床業務は増加したため,研究時間を捻出することが困難となり,十分な研究を行うことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,臨床業務を再調整し研究時間を捻出する予定である. 正常脳の機能的神経ネットワークモデルの作製ならびに,カルバコール+選択的GABA(A)受容体拮抗薬ビククリンを灌流投与することにより,てんかん脳モデルを作製可能となったため,両モデルを用いて,揮発性麻酔薬,静脈麻酔薬,麻薬など,作用機序の異なる麻酔薬を用いて麻酔薬作用を検討し,てんかん患者における安全な麻酔方法について解明する.
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