研究課題/領域番号 |
20K09309
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
伊関 憲 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70332921)
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研究分担者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 炎症応答 / 脂質代謝 / LPS / NF-kB / iNOS / 脂質代謝酵素 / 転写因子 / エンドトキシンショック / 脳損傷 / 肝障害 |
研究開始時の研究の概要 |
中枢神経系損傷では神経再生を阻害する物質が産生され、回復が妨げられる。この中でグリア細胞が増殖する“グリオーシス”とよばれる修復反応が起こる。 また、薬物による肝障害では一過性に傷害され次第に回復していくことと、肝組織が繊維化していき不可逆性になることがある。 これらの修復過程を細胞内シグナル伝達に関わる酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ファミリーを指標にして組織・細胞レベルで解析することとした。中枢神経損傷モデルとして凍結脳損傷、肝障害モデルとして四塩化炭素腹腔内投与をおこない検討を行う。そしてこれらの修復過程の違いから生体侵襲に対する応答メカニズムを解析していく。
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研究実績の概要 |
救急診療における中毒症例は、様々な医薬品の他に、一酸化炭素や有機リンなどの農薬、炭化水素などの工業品による死亡事例が多い。これら中毒に続く炎症応答は、生体防御機構のみならず、組織再生機構の起点になるもので、この炎症応答をコントロールすることが、救急症例の対応に重要である。申請者等はこれまで、細胞内シグナル伝達に関わる酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ファミリーの生理機能の解析に従事し、様々な疾患モデルを用いて病態との関連性を追求してきた。DGKアイソザイムのうちDGKεは、炎症応答においてエンドトキシン刺激に反応して一過性に転写亢進を起こすことが明らかにされているが、自然免疫におけるDGKεの機能的役割は未だ不明である。これまでの研究により、リポポリサッカライド(LPS)投与によるエンドトキシンショック動物実験炎症応答モデルにおいて、LPS投与による24時間後の生存率は、野生型マウスで60%であったが、イプシロン型DGK欠損マウス(DGKε-KO)は100%が生存することを見出した。本研究では、DGKε欠損がLPS受容体として働くTLR4シグナルとその後の全身性炎症応答にどのように影響を及ぼすのか、細胞培養と動物モデルを用いて解析した。DGKε欠損MEFでは、LPS刺激後15分におけるAktとNF-kB p65サブユニットのリン酸化レベルが減少した。腹腔内LPS投与によるエンドトキシンショックの動物モデル実験において、DGKε-KOマウスでは肝臓におけるiNOS発現誘導が低下した。以上のことから、DGKε欠損によって、NF-kB転写制御によるiNOS発現誘導が低下し、その結果NO産生が減少し、肝障害が起こりにくくなるのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験により、LPS投与によるエンドトキシンショック動物実験炎症応答モデルにおいて、LPS投与による24時間後の生存率は、野生型マウスで60%であったが、イプシロン型DGK欠損マウス(DGKε-KO)は100%が生存するという、不思議な現象を発見してきた。この点について、炎症応答のマスター転写因子として働くNF-kBの応答を解析したところ、細胞モデル実験においてDGKε欠損細胞では、LPS刺激後15分におけるAktとNF-kB p65サブユニットのリン酸化レベルが減少したことから、NF-kB転写活性が低下すると考えられた。また、腹腔内LPS投与によるエンドトキシンショックの動物モデル実験において、DGKε-KOマウスでは肝臓におけるiNOS発現誘導が低下することを明らかにした。このように、エンドトキシンショック動物実験炎症の抑制メカニズムの一端を明らかにし、さらに、DGKε欠損によって、NF-kB転写制御によるiNOS発現誘導が低下し、その結果NO産生が減少することも見出し、これが肝障害の低下につながる可能性を考えるに至っている。以上より、研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、「DGKε欠損によって、NF-kB転写制御によるiNOS発現誘導が低下し、その結果NO産生が減少することにより、肝障害が抑制される」という仮説を詳細に検討する。具体的には、NO産生の減少以外に、肝障害を抑制するメカニズムを検討する。また、他のDGKアイソザイムKOマウスでは、どのような応答を示すか検討したい。
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