研究課題/領域番号 |
20K09329
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
渡邉 孝 宮崎大学, 医学部, 講師 (90573337)
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研究分担者 |
水口 麻子 宮崎大学, 安全衛生保健センター, 講師 (00647472)
横上 聖貴 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40284856)
山下 真治 宮崎大学, 医学部, 助教 (40468046)
竹島 秀雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (70244134)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | glioblastoma / methionine / perivascular niche / 神経膠芽腫 / 腫瘍内不均一性 / 表現型可塑性 / 上皮間葉転換 / 光線力学診断 / 血管新生 / 代謝回路再編成 / エピジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
神経膠芽腫は、中枢神経系腫瘍の中で最も悪性度が高く、極めて予後不良な疾患である。高度な浸潤能による摘出制限や放射線・化学療法に対する治療抵抗性が主要な予後不良因子であり、その原因として、腫瘍内不均一性や表現型可塑性が重要視されている。近年、腫瘍細胞における代謝経路の再編成が、エピジェネティックな変化や、腫瘍増殖に関与するシグナル伝達系の活性化と密接に関連して、細胞増殖、生存、浸潤、幹細胞性維持に関与していることが注目されている。本研究では、特にメチオニン代謝経路の再編成と上皮間葉転換に注目し、神経膠芽腫における代謝経路の再編成が腫瘍増殖や治療抵抗性に与える機序について解明する。
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研究実績の概要 |
悪性脳腫瘍の代表である神経膠芽腫は治癒困難な疾患であり、高度な浸潤能、腫瘍内不均一性や表現型可塑性といった要因が、治療抵抗性や摘出限界に深く関与している。本研究では、メチオニン代謝経路の変化が腫瘍内不均一性や表現型可塑性に与える影響について検討した。当施設で樹立した神経膠芽腫幹細胞株を用いて、培養液からメチオニンを除去した場合に細胞増殖能に変化が認められることが判明し、その機序を解明するために、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。メチオニン代謝は、SREBF2-FOXM1系とACA43系を介したコレステロール生合成を修飾することにより、細胞の自己複製能・多分化能および細胞死に密接に関連していることが示され、論文に報告した。更に、この研究を拡張していく過程で、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)により、proneural-mesenchymal transition(上皮間葉転換)関連の遺伝子に変化が認められることが判明した。遺伝子発現の変化を認めた上位5つの遺伝子の中に、AGGF1、VEGFAが認められ、これらの遺伝子発現の変化をRT-PCRで確認し、更にタンパク発現の変化をウェスタンブロット法で確認した。また、バイサルファイトシーケンスによるメチル化解析を行い、エピジェネティックな変化が生じているか解析した。更に神経膠芽腫患者の摘出標本の免疫染色で、AGGF1は微小血管増殖において、血管内皮細胞、血管周皮細胞、腫瘍細胞にびまん性に発現していることが確認された。今回の解析結果から、メチオニン代謝経路の再編成により、神経膠芽腫細胞の遺伝子発現の変化、DNAメチル化によるエピジェネティックな変化が誘導され、これらの変化が腫瘍内不均一性や表現型可塑性に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験により、1) Clonogenic assay、タイムラプス動画撮影、2) マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析, 3) RRBSを用いたエピジェネティクス解析、4)RT-PCR、flow cytometry、ウェスタンブロット法での検証実験まで終了している。更に、神経膠芽腫患者の摘出標本によるタンパク発現についても解析が終了している、遺伝子導入技術を用いて、AGGF1の発現を阻害した場合の血管新生の変化についても解析を進めている。解析したデータを用いて、論文作成を行える段階にきており、概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、メチオニン除去によって、上皮間葉転換に関連する遺伝子に変化が認められることが判明し、AGGF1、VEGFAの発現が高頻度に認められることが判明し、RT-PCR、ウェスタンブロット法で確認した。更に神経膠芽腫の病理組織標本で、AGGF1は微小血管増殖において、血管内皮細胞、血管周皮細胞、腫瘍細胞にびまん性に発現していることが確認された。メチオニン代謝経路の再編成により、上皮間葉転換が促進されて、AGGF1の発現が活性化し、微小血管増殖に重要な役割を果たしている可能性が示唆されており、現在は、遺伝子導入技術を用いて、AGGF1の発現を阻害することで、微小血管増殖にどのような影響が生じるのか確認している段階にきており、今年度はこれらの解析結果をまとめたいと考えている
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