研究課題/領域番号 |
20K09354
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
峯 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (10306730)
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研究分担者 |
武藤 淳 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (30383839)
金村 米博 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 機関長・部門長クラス (80344175)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ヒトiPS-NESCs / ヒトiPS-NSPCs / MCAOモデルマウス / MCAOモデルラット / パーキンソン病モデルマウス / 脳内移植 / トランスジェニックマウス / 神経回路網再構築 / combination cell therapy / iPSC transplantation / endogenous NSPCs / brain stroke / regenerative medicine |
研究開始時の研究の概要 |
脳血管障害は神経回路網損傷する中枢神経疾患である。薬物療法や血管内治療の進歩により死亡率は減少し治療成績は向上した。しかし、現在の治療は発症後の進行予防・脳保護にすぎず、既に損傷した神経回路網の回復は困難である。更には実際の臨床現場で多い亜急性期・慢性期の脳血管障害患者に対し機能改善し得る治療はない。障害患者は増加傾向にあり、損傷神経回路網再建を促す新しい治療法の開発が急務である。回復困難な亜急性期・慢性期脳血管障害の神経回路網再構築を目指し、iPS細胞由来神経幹細胞移植と内在性幹細胞を用いた「幹細胞コンビネーション治療法」を確立する。
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研究実績の概要 |
1)臨床グレードのヒトiPS細胞由来NESCsまたは神経幹細胞・前駆細胞(NSPCs)を既報(Oki et al.:Stem Cells 30: 1120-1133, 2011)や共同研究者 金村博士らの方法(Fukusumi et al.: Stem Cell Int 2016:7235757, 2016)に準じ培養増殖し移植に必要な細胞数を確保した。また、ホスト脳内での移植細胞追跡のためeGFP/mCherry遺伝子導入ヒトiPS-NESCs/NSPCsを開発した。上述の方法で細胞増殖が可能で研究に必要な細胞数を確保出来た。 2)既報(Mine et al.:Neurobiol Dis 52:191-203,2013; Neurosurgery 65:741-753, 2009)に準じて成体雄性ラット(SD、Wistar)・マウスにヒトiPS-NESCs/NSPCsを移植した。移植16週間後に脳内にmCherry陽性細胞を認め生着と生存を確認した。 3)宿主線条体と移植ヒトiPS細胞の相互作用と神経回路網修復・修飾を観察するため、パーキンソン病モデルマウスを既報(Thompson et al.: Eur J Neurosci 30: 625-638, 2009; Masini et al.: Biomedicines 9:598, 2021)に準じて作成し、eGFP/mCherry-iPS-NESCs/NSPCsを同側線条体に移植し、10~12週間後に症状改善とmCherry陽性細胞の生着を認めた。 4)成体雄性ラットとトランスジェニックマウスを用いた片側中大脳動脈閉塞モデル作成と評価系(neurological score、stepping test、cylinder test、stair case test)は術中麻酔濃度などの改良により安定化しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も2021年度に引き続いてCOVID-19流行が続き、私自身の2022年4月から本務先院内規定が厳しく、外部での行動が上半期は特に大きく制限された。このため、訪問研究員として大学構内立入や実験等に制限があり、研究の遂行にかなりの支障を来し、実質的な移植実験を進めることが困難で遅れにつながった。一方、移植ドナー細胞の追跡(トレース)のため、新たに導入した蛍光タンパク遺伝子導入ヒトiPS細胞由来細胞の培養システムは安定し移植細胞確保の問題は解消され、正常脳移植は進み詳細な解析を開始している。また電気生理学および免疫組織化学的精査を進めるため新たに導入したトランスジェニックマウスを用いた実験モデル動物(パーキンソン病モデル/脳梗塞モデル)作成と評価システムも安定しつつある。特に、パーキンソン病モデルを用いたヒトiPS細胞移植並びに線条体組織との相互作用に関しては行動学的評価を行い、電気生理学的・免疫組織化学的評価を開始しており、プロジェクト全体を進める事が出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
本来2022年度は脳梗塞亜急性期移植の継続と慢性期への移植研究を行う予定だったが、上述の様に進捗が遅れているため、研究期間を1年延長している。正常動物へのヒトiPS細胞脳内移植による長期生存・分化・腫瘍形成の有無、新生神経細胞の有無や増殖度等を観察、また線条体における神経回路網再構築の電気生理学的精査のため導入したトランスジェニックマウスを用いた移植実験(パーキンソン病モデル)は順調に進んでおり、解析を進める予定である。 一方、モデル作成が安定してきた脳梗塞モデルに関しては、脳梗塞亜急性期移植実験(対照群:培養液のみ、繊維芽細胞)を予定する。損傷脳に対する移植iPS由来細胞の生着・分化・成熟や内在性NSCによる神経新生への影響(特に脳室下層)、抗炎症作用を評価する。そして行動学的検査結果との関連を解明する予定である。
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