研究課題/領域番号 |
20K09376
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
|
研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
望月 靖子 (田中 靖子) 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (20386452)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | AQP11 / コンディショナルノックアウトマウス / 血液脳関門 / 脳 / アクアポリン / AQP / 血管内皮細胞 / 病態モデル |
研究開始時の研究の概要 |
AQP11は胎児期から成体まで全身で発現しているが、従来のAQP11KOマウスは多発性嚢胞腎となり生後1ヶ月以内に死亡する。これは研究上の障害となり、AQP11KOマウスの表現型を詳細に調べることが不可能であった。そこで本研究では、脳におけるAQP11の役割を明らかにする目的で、脳で特異的に制御可能なAQP11コンディショナルKOマウスを作成する。「多発性嚢胞腎に影響されない」かつ、「AQP11の欠損が脳で直接的に影響をうける」オリジナリティのあるモデルマウスを作成する。これにより、新たな手法でAQP11の役割を解明する。
|
研究実績の概要 |
水チャネルであるアクアポリン11(AQP11)についての役割を明らかにするために研究を進めている。他のAQPファミリーと同様に、AQP11には水を通過させること以外の役割も考えられるが、その関与を明確に示すことができていない。さらに、これまでのcre-loxPシステムを用いたAQP11欠損マウスでは、AQP11を欠損すること自体が原因で嚢胞腎となったのか、他の理由で嚢胞腎となったのかは不明のままである。本研究では、これを明らかにし、嚢胞腎を回避したAQP11ノックアウトマウスを作成するために、AQP11が発現する脳毛細血管細胞特異的な遺伝子を選び、その遺伝子に対するコンディショナルノックアウトマウスを作成することを継続している。 コンディショナルノックアウトマウス作成に向けて予定していた遺伝子の候補の幾つかは、AQP11の発現部位と同じ細胞で発現していても、他の部位にも同等に発現する遺伝子が多い。あるいは他のAQPおよびAQP11と同様に腎臓で発現が高いと思われる遺伝子が多いことがわかり、現在も難航している。組織の検討のみならず、条件的不死化脳毛細血管細胞株TM-BBBを用いて、細胞内でのAQP11の動向を検討することにより、AQP11の未知の役割の傾向を少しでも掴むことができれば、新たに視点を広げることもできると考え、取り組んでいる。 本研究のモデルマウスを作成することができれば、これまでのAQP11欠損マウスの表現型である多発性嚢胞腎に影響されずに脳でのAQP11の役割も明らかにすることができる。さらには、このマウスを用いて脳梗塞モデル作成し、これまでにも申請者が研究している脳浮腫の制御とAQP11の関与をより明らかにすることが可能となる。最終的には、これまでと異なる視点から脳浮腫を制御させる応用へと繋げる基礎的な知見を得るところまで繋げる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスAQP11を脳の特定の部位で欠損させるコンディショナルノックアウトマウスを作成することを目的としている。まずは腎臓でのAQP11の発現部位と重なる部位を避けた遺伝子を選ぶことが最初のステップであるが、予定していた遺伝子の候補の幾つかは、AQP11が発現する脳毛細血管内皮細胞で発現していても、その他、全身の組織で発現していたり、あるいは腎臓で発現している遺伝子が多く、現在も検討中である。コンディショナルノックアウトマウスの対象遺伝子の選択は、報告されている遺伝子でも市販の抗体がない場合もあり、検討時間を予想以上に要してしまった。 これまでに本研究以外にも脳におけるAQP11が脳血管内皮細胞の細胞膜に発現していることを示し、注目してきた。並行して、脳血管内皮細胞のモデル細胞である条件的不死化脳毛細血管細胞株TM-BBBにおいて、AQP11は細胞質、細胞膜、核の高低順で発現していることも示した。これは、さらに検討が必要であると考えているので、現在も検討中である。また、これまでTM-BBB細胞の培養方法に関しては、条件を変えずに発現の有無、発現部位を検討していたが、2023年度は浸透圧を変化させた培養条件により、AQP11の発現の変化も検討した。マンニトール添加による浸透圧の上昇によりAQP11の発現量も変化することを明らかにした。こちらについても学会等で発表できるよう準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
あらためてAQP11同時に脳血管内皮細胞で発現するあらたな他の遺伝子の検討を続ける。また、脳で発現するAQP11は毛細血管だけでなく、脈絡叢、グリア細胞でも発現することをこれまでに示しており、脈絡叢を中心に進めることも新たに検討する(グリア細胞は広範囲すぎるかとも考えているが、遺伝子候補が全くない場合にはあらためて検討する)。該当遺伝子のタンパク発現に対して、脳全体での免疫染色、脳の各部位(血管、グリア細胞、神経細胞)を分割した後にウエスタンブロットを行う。mRNAの発現についてはRT-PCR、RT-qPCRを行い、同じ部位で発現することを慎重に検討の後、サブクローニングして、コンディショナルノックアウトマウス作成へ繋げる。コンディショナルノックアウトマウス作成後はAQP11欠損による表現型について、脳を中心に全身を調べ、その影響を明らかにする。主に各組織の組織切片を作成して解析する。これまでのAQP11欠損マウスの各部位とも比較検討する。さらに、AQP11の役割を多方面から明らかにするために、条件不死化細胞TM-BBBを用いた浸透圧変化とAQP11の関係を明らかにするためにも、引き続き同時進行させる。方法は、これまで使用していた条件不死化細胞TM-BBBを用いて浸透圧を変化させた培養条件を用いる。マンニトール以外にも浸透圧を変化させる薬品を検討する。浸透圧を変化させた培養条件によりAQP11の発現量の変化および発現部位の変化を解析する。それにより、特異の条件下で機能するAQP11の役割が明らかになると考えられる。
|