研究課題/領域番号 |
20K09398
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中島 円 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50317450)
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研究分担者 |
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 教授 (60200177)
新井 一 順天堂大学, 医学部, 教授 (70167229)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 脈絡叢 / βアミロイド / プロテインチロシンホスファターゼ / 水頭症 / アルツハイマー病 / 認知機能障害 / 脳脊髄液 / 遺伝子組み換え / 共輸送体 / グリンパティックシステム / 認知症 / 動物モデル / 家族性水頭症 / 脈絡叢上衣細胞 / バイオマーカー / H-Txラット / 正常圧水頭症 |
研究開始時の研究の概要 |
疾患動物モデルと患者を対象にしたトランスレーショナルリサーチを行う.加齢にともない脳室拡大を呈する成人慢性水頭症動物モデルであるPTPN20KOマウス作製し,多次元イメージング,透明化脳標本を用いたコネクトーム解析を行い,形態学的特徴と高分子蛋白のクリアランスを検証し,遺伝子欠損と水頭症の発現,髄液・老廃物の排泄機序を解明する.臨床研究では髄液検体,剖検脳標本から,髄液バイオマーカー,MRIによる髄液ダイナミクス解析,免疫染色,mRNA抽出により,動物モデルで得られた知見を,実臨床で実証する.
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研究実績の概要 |
【研究目的】脳室上衣の機能障害に着目し、遺伝子組み換えにより作成したアルツハイマー病モデルであるAPP ノックイン(KI)マウスと慢性水頭症モデルPTPN20ノックアウト(NO)マウスを交配し、「加齢と共にβアミロイド(Aβ)が脳内に蓄積される脳脊髄液代謝の停滞した慢性水頭症動物モデル:H-ADモデル」を構築し、高分子蛋白の排泄経路を探ることを目的とした。 【成果】Wtマウス、APP(KI)マウス、PTPN20(KO)マウス、H-ADモデルにおける8、16週齢時点の脳室サイズを脳切片作成しHE染色標本での計測した。8週齢時点でH-ADモデルの有意な脳室拡大を認めた。脳実質、脈絡叢でのAβ沈着を蛍光免疫染色で評価し、海馬、大脳皮質への早期のAβ沈着を確認した。 16週齢のPTPN20(KO)マウス、APP(KI)マウス、H-ADモデルの認知行動実験(Y-迷路試験、モリス水迷路試験)を施行し、APP(KI)マウス、APP(KI)xPTPN20(KO)マウスでの認知機能低下を確認した。 H-ADモデルの脈絡叢、海馬を抽出し、走査電子顕微鏡にて脈絡叢の上皮細胞、微絨毛の変性を認め、透過電子顕微鏡で微絨毛の不規則な配列と細胞密度の減少があり、脈絡叢上皮細胞の正常構造の破綻が確認された。脈絡叢に特異的に発現するPTPN20をKOすることで、脳内にAβ早期沈着を認めたことから、脈絡叢はAβクリアランスに関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
APP-KI/とPtpn20 KOを交配した新品種のAPP-KI/ Ptpn20 KOを作成。遺伝子組み換えによるH-ADモデル(APP(KI)xPTPN20(KO)マウス)の作成に成功し、モデルマウスの評価を実行し得た。 Aβプラーク定量化:マウス脳切片を経時的(8,16,24週齢)に作成し、アミロイドプラーク蛍光染色と各抗体(GFAP, PTPN20, Aβ)の2重染色を実施し、Aβプラーク形成時期/数を確認し得た。 認知行動評価:適齢時のPtpn20 KO /APP-KI, APP-KI, および野生型マウスに対し,認知行動実験(オープンフィールド, 高架十字,Y-迷路,モリス水迷路試験)を実施し,解析し得た。
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今後の研究の推進方策 |
ELISA法を用いて局在アミロイド(溶解,凝集)を定量評価する。 遺伝子発現解析:Transcriptome ArrayとIngenuity Pathway Analysis Softwareを用いて、APP-KI/Ptpn20 KOの脳実質、脈絡叢の発現プロファイル及びNKCC1のリン酸化の活性化に関与するSte20/SPS1- related proline/alanine-rich kinase (SPAK) pathwayを確認する。 H-ADモデルの後頭蓋窩より脳脊髄液を採取し、Aβ含有量を測定する。Aβ凝集体の代替として15nmの金ナノ粒子を用いて取り込みを観察し、老廃物排泄機構を可視化し、及ほされた影響を明らかにする。さらに引き続き認知行動行動実験(オープンフィールド、高架十字テスト、Y-迷路試験、モリス水迷路試験)を評価し、慢性的な脳脊髄液停滞(水頭症)病態がAβの大脳皮質およひ海馬への蓄積に与える影響を検証する。 <神経細胞機能と排泄機能> 電気生理学的評価:認知行動実験後、マウスを犠牲にし、海馬脳スライスに対しマルチチャネルパッチクランプ法(MEA2100システム)による電気生理学的な神経活動評価を行い, 長期増強を確認する。 排泄能解析:Aβ凝集体の代替として15nmの金ナノ粒子を用いて取り込みを観察し、老廃物排泄機構を可視化、また尾状核および大槽(→脳室への逆流)に蛍光物質を微量注入し、蛍光物質の脳からの排泄増加を経時的に蛍光プレートリーダー(FlexStation3)で定量する。 ここまで得られた研究成果により、脈絡叢におけるPPTN20機能障害によるクリアランス障害、認知障害に関する影響をまとめ、国内外の雑誌で報告する。
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