研究課題
基盤研究(C)
令和2年~4年の3年間で、カイコ遺伝子組み換え技術により開発されたFGF2誘引フィブロインスポンジ上でのヒト滑膜細胞シート作製とその性状の解析を行う。特に細胞増殖能、軟骨分化能について通常の(Wild-type)フィブロインと比較検討し、移植用細胞シートとしての有用性を評価する。 動物細胞と比較して、ヒト(成人)の滑膜細胞は細胞増殖能が低いため、滑膜細胞をフィブロイン被覆法として臨床応用するためには、十分な厚さの細胞層を得られるかどうかが重要となる。また、軟骨分化誘導により確実に軟骨細胞に分化することを確認する必要がある。この2点についてin vitroの系を用いて明らかにする。
本研究では、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)誘引フィブロインを利用し、より層の厚い移植用ヒト間葉系幹細胞シートを作製することを目的とした。FGF2 誘引フィブロイン上では胞増殖の促進が認められ、対照群と比較して厚い細胞層が形成された。軟骨分化誘導後には、Alcian blue免疫染色で対照群とほぼ同等の染色性を示した。軟骨分化の指標として行ったS100蛋白およびSox9の免疫染色では、陽性細胞数はFGF2 融合フィブロインでやや低下する傾向にあった。FGF2 誘引フィブロインは細胞増殖を促進し、厚い細胞シートを作製することには有効であったが、細胞シート軟骨分化はやや抑制する可能性が示唆された。
広範囲の軟骨欠損に対する再生治療は非常に困難である。今回研究に用いた絹フィブロインスポンジ上に自家細胞シートを作製し、欠損部を被覆する治療法が確立できれば、従来適応のなかった中高年者の広範囲欠損に対する軟骨再生医療も可能となる。本研究では、FGF2誘引フィブロインをヒト骨髄由来間葉系幹細胞シート形成に応用した。FGF2の持つ細胞増殖効果により厚い細胞シートを作製することで、十分な移植細胞数が確保でき、フィブロイン被覆法を広範囲の軟骨欠損に応用できるようになると考えられる。
すべて 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
Sci Rep
巻: 18 号: 1 ページ: 979-979
10.1038/s41598-023-28182-2
Cartilage
巻: 13 号: 3 ページ: 194760352211092-194760352211092
10.1177/19476035221109227
Cureus
巻: 19;13(11)
10.7759/cureus.19759
巻: 13(1)
10.7759/cureus.12570
Oxid Med Cell Longev
巻: 24 ページ: 5649767-5649767
10.1155/2020/5649767