研究課題/領域番号 |
20K09444
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
麸谷 博之 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30248140)
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研究分担者 |
山根木 康嗣 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00434944)
西浦 弘志 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90284760)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 骨肉腫 / 転移 / 血管新生 / 血行性転移抑制 / エピジェネティック試薬 / 血管新生抑制 / 肺転移 / バルプロン酸 / mTOR阻害剤 / 免疫療法 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,骨肉腫の治療において抗癌剤の多剤併用療法が導入され,治療開始時に転移のない症例の5年生存率は70%程度へ飛躍的に向上した.しかし,その後の治療法に画期的な進歩はなく,30%程度の患者は肺転移によって悲惨な経過をたどる.これらの患者の予後を改善するには,肺転移を抑制するための新たな治療戦略が必須である.本研究は(1)ヒストン蛋白アセチル化阻害剤(バルプロン酸;VPA)およびラパマイシン標的蛋白質(mTOR)阻害剤を用い,肺転移の機序に必須である腫瘍新生血管を抑制する.(2)既存の抗癌剤との併用による骨肉腫の肺転移抑制の新たな治療戦略の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
骨肉腫の最大の予後不良因子である肺転移を抑制するには、腫瘍新生血管形成を抑制することが重要である。本研究は、エピジェネティック試薬であるヒストン脱アセチル化阻害剤(バルプロン酸)とラパマイシン標的蛋白質阻害剤(ラパマイシン)を用いて、Semaphorin/Neuropilin/Plexinを介する血管新生抑制機構を亢進することで、骨肉腫の増殖と肺転移の抑制を目的としている。ヒト骨肉腫細胞株(OS)およびヒト毛細血管内皮細胞(HMVE)にバルプロ酸(VPA)とラパマイシン(Rapa)を作用させることで、以下のことが証明できた。1)VPAはOSおよびHMVEにおけるSemaphorin 3A (SEMA3A)とそのレセプターであるNeuropilin 1 (NRP1) およびPlexin A1(PLXNA1)の遺伝子および蛋白の発現の増加を確認できたが、Rapa作用群ではそれらの発現の変化は確認できなかった。2)SEMA3AのヒストンH3のアセチル化が有意に増加していたことからSEMA3A発現亢進はVPAの効果である事を証明した。またNRP1およびPLXNA1に関しても同様の結果であった。3)VPA作用OSおよびHMVE培養液中の可溶性SEMA3Aの増加を確認した。4)SEMA3A強発現ベクター(pSEMA3A)を作成し、SEMA3A強発現OS(OvEX3A OS)を作成した。5)VPA作用およびOvEX3A OS培養液でHMVEを培養すると有意に管腔形成を阻害した。6)OvEX3A OSの増殖能はOSに比較して有意に抑制されていた。この抑制機構はSEMA3AによるG1/S期の細胞周期拘束による事を証明した。これらの結果から、VPAはHDAC阻害剤として血管新生抑制効果を有する事が知られているが、SEMA3Aとそのレセプターの発現亢進を介する事による間接的腫瘍血管新生抑制および直接的な骨肉腫細胞増殖抑制効果を有する事を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響による実験資材の生産および物流の停滞・遅延が問題となってin vitroの研究成果のみに留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
1)DNAメチル化阻害剤(ヒドララジンや5-アザ-2'-デオキシシチジン(5’Aza))および既存の骨肉腫の治療に使用されている抗癌剤との併用効果を確認する。 2)これらを踏まえin vitroの結果がin vivoにおいても同様の結果を得られるかを検証し、かつ肺転移におよぼす効果を検討する。
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