研究課題/領域番号 |
20K09461
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤本 徹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (00433003)
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研究分担者 |
宮本 健史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70383768)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 破骨細胞 / 整形外科 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎手術・人工関節手術・骨折手術・靭帯再建手術など、整形外科にはインプラントが不可欠な手術が多い。インプラントは、生体の立場からは異物であり、排除を受けず免疫寛容を促す必要がある。スクリュー等の骨内インプラントでは、ゆるみはインプラントの機能不全に直結する。ゆるみをきたさないためには、局所の骨吸収を抑制する必要がある。 ITAMとStat1の関連に関しては、破骨細胞分化並びに骨吸収制御においてはこれまでに知見がなく、新たな切り口に基づく骨吸収制御法の提案が可能になると期待できると考えている。
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研究実績の概要 |
医療の現場においては、人工関節や骨接合プレートなど、様々なインプラントが治療目的に使用される。こうした生体内に留置したインプラントのゆるみの原因として、特に骨インプラントでは、その周囲に起こる骨吸収や骨破壊が問題となる。インプラント周囲の局所的な骨吸収に対し、骨粗鬆症に対する治療薬の効果は限定的であり、インプラント周囲の骨吸収のメカニズムも明らかになっていない。破骨細胞の分化を促進する因子として、macrophage colony stimulating factor (M-CSF)とreceptor activator of nuclear factor kappa B ligand (RANKL)に加え、Immuno-tyrosine based activation motif (ITAM)受容体を介した共刺激が重要であることが知られている。ITAM受容体のうち、Fc受容体 common gamma subunit(FcRγ)とDNAX-activating protein 12(DAP12)は破骨細胞分化に必須の役割を担うこと、カルシウム濃度の振動(以下, カルシウムオシレーション)を介して破骨細胞分化のマスター転写因子であるnuclear factor of activated T cells 1 (NFATc1)の発現と活性化を上昇により破骨細胞分化を促進させること、これらのダブルノックアウトマウスでは、破骨細胞分化が著しく抑制されることが知られている。我々はcytotoxic T-lymphocyte antigen 4 (CTLA4)に対して共受容体であるCD80/86と結合することで競合阻害するCTLA4-FcがM-CSFとRANKLによる破骨細胞分化を直接抑制すること、この際、FcRγを介していることを見出した(J Bone Miner Res 2019)。さらに異物巨細胞分化においてもITAMシグナルが必須であることを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜結合型受容体であるCTLA4が破骨細胞分化においてFcRγを介して分化を直接抑制すること、この際、CTLA4がM-CSF+RANKLによる破骨細胞のカルシウムオシレーション制御を介して分化をコントロールすることを明らかにし、すでに英文論文として報告を完了した(J Bone Miner Res 2019)。CTLA4がFcRγと協調的な作用機構を有していることは過去に報告がなく、新たな知見である。さらに、破骨細胞分化を負に制御するシグナル分子であり転写因子でもあるsignal transducer and activator of transcription factor 1 (STAT1)も、DAP12とFcRγによるカルシウムオシレーション制御を介した破骨細胞分化制御の経路にある知見を得ている。また、DAP12とFcRγによるITAMシグナルも、破骨細胞と同じ起源を有する異物巨細胞の分化にも必須の役割を担うことを明らかにしている。これらの進捗状況から、研究が概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めているDAP12とFcRγのダブルノックアウトマウスに、STAT1ノックアウトを加えたDAP12・FcRγ・STAT1トリプルノックアウトマウスを樹立し、破骨細胞分化及びカルシウムオシレーションを解析する。DAP12・FcRγ・STAT1トリプルノックアウトマウスについてはすでに樹立済みであり、解析を進めている。DAP12とFcRγはM-CSFとRANKLによるカルシウムオシレーション制御からのNFATc1の活性化を介した破骨細胞分化に必須であり、これらのダブルノックアウトマウスでは破骨細胞分化が強力に抑制され、骨量が増加することが知られており、本研究においてもこのことを再現した。一方で、STAT1は破骨細胞分化を負に制御しており、そのノックアウトでは破骨細胞分化が亢進することが知られているが、STAT1のカルシウムオシレーションへの関与は知られていない。今後、樹立したトリプルノックアウトマウスにおける破骨細胞や骨の表現型、カルシウムオシレーションへの影響について検証を進めていく予定である。また細胞融合による破骨細胞や異物巨細胞の分化や細胞融合に表現型を認めており、これらの細胞の細胞融合に必須の分子であるDC-STAMPやOC-STAMPの発現等についても解析を進め、学会や論文発表を進めていきたいと考えている。
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